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Vol.3 女性医師が仕事の面で自己実現を果たしながら、家庭を充実させる方法(その1/2)

医療ガバナンス学会 (2014年1月8日 06:00)


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滋賀医科大学医学部医学科4年
細尾 真奈美
2014年1月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


女性医師が家庭を持ちながら働き続けるにはどうすれば良いだろうか? 私は滋賀医科大学医学部医学科で学ぶ学生である。私の実家は、元禄時代から京都西陣 で呉服屋を営んでいる。幼い頃から、店の仕事と家事の両方をこなす母の姿を見て育ち、仕事と家庭のバランスの取り方について考えてきた。医学部に進学した 今、女性医師が仕事の面で自己実現を果たしながら子供を持ち、家庭を充実させる方法について考えてみたい。

本稿では、私自身の卒後15年間のシュミレーションを元に、私にとっての「仕事の面で自己実現を果たしながら、家庭を充実させる」方法について前後編に分けて述べたい。

女性医師が子育てをしながら仕事を続ける場合、常勤として働くか、パートタイムで働くか、二つの選択肢がある。常勤医師として働く場合、キャリアへの支障 は少ないが、どうしても子供と過ごす時間は減ってしまう。パートタイムで働く場合、子供と過ごす時間は多くなるが、しばらく第一線から離れると常勤として 復帰しにくくなる。常勤で働いても子供と過ごす時間を保つことができ、非常勤で働いても常勤に復帰しやすいことが理想だが、悩ましいことに現状ではこの理 想からほど遠い。

こうした現状を考えた上で、私にとっての「仕事の面で自己実現を果たしながら、家庭を充実させる」最低条件は次の2つである。
■条件1:将来子供ができたとしても、できるだけ常勤として医師の仕事を続ける
■条件2:子供と一緒に夜7時に夕食を取る時間を確保する
この二つの条件を叶えるには、どうすれば良いのだろうか。さあ、次の物語を例に考えてみよう。

この物語は、私が25歳で大学を卒業し、上京して初期研修を行うところから始まる。東京にて3歳年上の会社員の男性と知り合い、27歳で結婚。夫は神奈川 県川崎市出身、都内の大学を卒業した後、外資系IT企業に勤めている。同年、2年間の初期研修が終了し、診療科を産婦人科に定め、後期研修先として都内の 民間病院に就職した。夫婦ともに職場が東京都港区にあるので、同区に住んでいる。それから3年後、30歳の時に妊娠、31歳で第一子を出産。出産後すぐ元 の職場に復職し、33歳で産婦人科の専門医を取得した。再び妊娠し、34歳で第二子を出産。すぐまた元の職場に復職した。卒後15年経った40歳では、9 歳と6歳の二児を育てながらも、仕事を続けている。

第二子を出産し復職した34歳頃の通常勤務日のスケジュールは次の通りである。
06:00 起床
07:00 家を出発
07:15 保育園に子供達を送る
07:30 仕事開始
18:00 仕事終了
18:15 保育園に子供達を迎えに行く
18:30 帰宅
19:00 子供達と夕食を取る
20:30 子供達を寝かしつける
22:30 夫帰宅
24:00 就寝

このスケジュールの合間に、次のような家事がある。
■06:00起床〜07:30仕事開始
・朝食の準備
・上の子に食事を食べさせる
・下の子に授乳する
・子供達の登園準備
・朝食の片付け
・保育園に子供達を送る
■18:00仕事終了〜24:00就寝
・保育園に子供達を迎えに行く
・夕食の準備
・上の子に食事を食べさせる
・下の子に授乳する
・子供達をお風呂に入れる
・子供達を寝かしつける
・夕食の片付け
・洗濯
・掃除

これらを全て自分でやるとなると大変である。また、当直や急な呼び出し(オンコール)、子供の発熱といったイレギュラーなケースでは、自分一人では対応しきれない。そこで、常勤の医師として働きながら家のこともこなすための条件を考えてみた。
■条件1:夫の助けがある
家事や育児を夫とある程度分担できれば、自分一人の負担はずいぶんと減る。想定したケースでは、夫は仕事が忙しく帰りが遅いために、保育園のお迎え、夕食 の準備、子供の入浴といった家事が難しい。また、土日も仕事の日が多く、あまり子供の面倒をみることができない。普段は朝の保育園の送りを担当してもら い、できる範囲で朝食の準備や洗濯、掃除を手伝ってもらうことができる。
■条件2:自分の実家、夫の実家の助けがある
自分や夫の実家が近くにあり、手を借りることができるなら、ただで安心して子供を預けられる上に、当直や子供の発熱といったイレギュラーなケースにも対応 できる。想定したケースでは、私の実家は京都にあるので助けを借りることが難しい。夫の実家は神奈川県川崎市にあり、東京都港区の家から電車で1時間ほど かかる。毎日手を借りることは難しいが、あらかじめ決まった当直の日だけ子供を預けることができる。
■条件3:ベビーシッター・託児施設・家事代行サービスを利用する
条件1、2が難しい場合、ベビーシッターや託児施設、家事代行サービスを利用するのも手である。仕事の都合で子供を保育園に迎えに行けない時や当直の日に 実家に子供を預けられない時、子供が急に熱を出した時はベビーシッターや託児施設に頼めば良い。また、家事負担が大きい場合は、家事代行サービスを頼むこ ともできる。

女性医師が常勤として仕事を続けながら子育てをする場合、この3条件のいずれかを満たす必要がある。これらの条件のうち条件1と2に頼れるなら、かかる費 用も少ない。しかし、夫の仕事が忙しかったり、実家が遠かったり、身内のサポートが得にくい状況であればあるほど、条件3のベビーシッターや託児施設、家 事代行サービスに頼ることになり、その費用が問題となる。後編では、その場合の費用面を考慮しながら、引き続き「女性医師が仕事の面で自己実現を果たしな がら、家庭を充実させる方法」について述べたい。

【略歴】細尾 真奈美(滋賀医科大学医学部医学科4年)
西陣織の老舗「細尾」の長女として京都市に生まれる。現在、滋賀医科大学医学部医学科4年に在籍中。

(その2/2に続く)

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