医療ガバナンス学会 (2014年1月28日 18:00)
1.講座内容(生徒への紹介文より)
【日時】2013年12月21日(土)9:00~11:00
【講座名】身近な物理学とその不思議
【対象】高校1年生
【内容紹介文】
立っていてふいにバランスをくずし,前方に倒れそうになったとします。足を踏み出せないとしたらどうなりますか。「おっとっと」と反射的に両腕を(クロー ルのように)前向きに振り回しますね。しかし,後方に倒れそうになったときは,腕を振り回す向きは逆です(背泳のように)。
なぜそうなるのでしょう。これは物理学で説明できるのです。
私たちの身の回りには,日常的にあたりまえだけどもよく考えてみると不思議な現象がたくさんあります。今回はそれらを見つけ出し,物理学の視点で解明してみます。おまけとして,武術の不思議な技をいくつか伝授します。
【講師プロフィール】浜口隆之
1956年京都市生まれ。京都大学理学部卒業後,京都府立高校で9年間数学を教え,平成元年から灘中学・高校で物理を教え現在に至る。最近の興味は武術における不思議技を研究すること。
2.前日の報告
仙台空港で松浦先生に迎えていただき,車で相馬高校まで移動。冬休み中の夕刻ににもかかわらず職員室は明かりが煌々としていて,多くの先生方がおられた。 職員室中央の大きなストーブの暖かさが印象的だった。小野田先生,高篠先生,高野先生,田村先生,長坂先生,鴨志田先生,芥川先生と挨拶をさせていただい たが,最も強烈な印象だったのが宇野先生だった(これについては後述)。また,たまたま京都から来られていたフリーライターの枡郷春海さんとも面識ができ た。小野田先生に当日使用する教室を見せていただき,自慢の「博物館」を見せていただいた。土器,石器,人骨など,これが高校かと驚くほどのコレクション であった。相馬高校の生徒は非常に恵まれていると思った。
星槎寮のそばのお店の2階の座敷に席を設けていただき,夕食。ご一緒したのは,相馬高校の小野田先生,高篠先生,宇野先生,および,新池高校の高村先生。高篠先生はわざわざ鈴木酒造の「磐城壽」の一升瓶を買ってきてくださって,酒好きの私は大いに楽しませていただいた。
さて,宇野先生である。宇野先生はなんと,中国拳法をたしなんでおられ,それも健康太極拳のレベルではない本格的なものだった。私も少し経験があるのでう れしくなり,軽く手合わせしてもらったところ,何度も崩され,驚くと同時に非常に楽しかった。宇野先生には翌日の講座の実演のお手伝いを依頼した。食事 後,宿泊所である星槎寮に移動。
3.当日の報告
(午前)
星槎寮を出て相馬高校へ。 予定では参加生徒は24名とのことだったが,野球部の生徒が急遽参加することとなり,先生方も含めて,教室はほぼ一杯。用意してきた教材(コップ,ストロー)は何とか足りたようだった。
1コマ目は,静電気の話。電気には正・負の2種類があり,異種どうしは引力,同種どうしは斥力(反発力)を及ぼしあうといういことを実験で確かめ,電気の 性質をゆっくりと理解してもらった。物理をまだ習っていない生徒もいたので,ゆっくりと,できるだけ考える時間をとりつつ進めていった。合い間の雑談で は,「謎を自分で解決したときの快感」について強調した。
2コマ目は,さまざまの話題。まず,紹介文に予告した不思議技をまず紹介した。「くっつく手」「押しても倒れない体」「持ち上がらない体」の3つ。それぞ れ,静止摩擦力,剛体構造,モーメント(てこの原理)によって説明される。実演を宇野先生と,野球部の天野くんに手伝ってもらって,大変たのしく示せたと 思う。
次は浮力の話。 ビーカーに水を入れ秤(はかり)の上に置く。水に指を入れていくと,秤の読みが増加していく。水はやわらかくて押しても手ごたえがないのに,なぜ力を伝えることができるのか。話は「永久機関」へと移り,磁石を利用した永久機関を紹介した。
最後に,紹介文に触れた,倒れそうになると手を振り回す動作について説明した。この動作は,疾走するチーターの尻尾とも関係がある。いくつかの話については,解決をあえて言わなかった。謎(フシギー)を楽しんでもらいたいからである。
(午後)
地元の方の案内で浪江町を視察。復旧されないままのエリアを抜けて,福島第一原発の排気塔の見えるところまで案内してもらった。線量はたいしたことはなかったが,被害の広範さと,復旧の困難さを実感した。いったん相馬高校へもどり,仙台空港へ。
4.最後に
相馬高校の生徒の姿勢のよさと,人なつっこさに感心しました。講座後,職員室に質問に来た男子生徒は,答を言わないにしていた磁石の永久機関の謎を,さっそく解いてくれました。考えることが好きな生徒,謎を楽しむことのできる生徒は,多そうです。
今回しゃべれなかった話題もたくさんあるので,もしまた機会があれば,よろこんで出向きたいと思います。
この度お世話になった相馬高校の皆様,東京大学上研究室の皆様,学習評価研究所の松浦様に心からお礼申し上げます。