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Vol.30 内部被曝通信 福島・浜通りから~今後の検査はどうすべきなのだろうか?

医療ガバナンス学会 (2014年2月6日 06:00)


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この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html

南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年2月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


内部被曝の検査も時間が経つにつれて、検査に来られる方が少なくなっています。興味関心の薄れに加えて、全体の被曝状況やその程度も明らかになってきていることもあるのだと思います。

測りたい人がいつでも来院して計測できることも重要だと思いますが、徐々にインフラ化していく必要があるのではと感じています。

現状の検査は、基本的には市町村が主体で、その地域に住んでいらっしゃる方に通知を出し、検査をしたい方のみが検査を受けるというものです。震災当初は予 約が殺到、フル回転でどんどん計測していくしかないという状況でした。ですが、現状はそうではありません。市町村からの呼びかけを行っても、特に受診率が のびるわけではありません。

このブログでも紹介したようなよっぽどのことでもしない限り、体から数万Bq/bodyといった数字がでる検査結果になることはありません。流通している通常のものを食べていて大きな内部被曝をすることは、まずありません。

販売されている食品の検査数値から判断して、現状のホールボディーカウンター(WBC)検査で、汚染が検出されるレベルであるわけがない。よって、WBC検査は受ける必要が無い。こんなことを言われることがあります。

「食品の検査結果を見て、十分リスクが低いと思う」
ご指摘は、その通りだと思います。つまり、現状の日常生活での食品からの内部汚染の程度が非常に低い(ほとんどの人で1日1Bqのセシウム摂取すらしていない)ことが、食品の検査からも、検算ともいえるWBC検査からも確かめられています。

自分の健康チェックのため、この1年間での食生活の確認を、という意味で検診などの形で定期的な検査を受けて欲しいとは思っていますが、強制的に全員検査 を受けるべきだとは決して思っていません。かといって、今後検査は全員にやる必要はありません、というと言い過ぎだろうと思います。「汚染はない」なんて いうとおかしいわけですから。

では、どうするのが最適なのでしょうか?

・検査はもうやめる(食品検査を徹底すれば良い。)
・ このまま、検査を受けたい人は検査を受けられるが、特に積極的な介入はしない。
・ 検査を受けたいに人には検査ができ、市の検診に混ぜるなど、積極的に市町村から呼びかける。
・例えば子供など決まった集団には、定期的に必ず検査を受けるような体制を組む。他は自由に受けてもらう。
・全員検査を受けるのは必須。

他の選択肢もあると思いますが、皆さんはどう思われますか?

検査を行うとして何のために? それはもちろん住民の方々の健康のためです。そして放射線について振り返る時間を持ってもらい、コミュニケーションの題材としても意味を持ちます。

ただし、どれも住民の方を含む誰かに負担を強いることは間違いありません。それぞれ、メリットデメリットあります。上に行けば行くほど、負担は減ります が、住民全体として現状がどのような状況なのかは言えなくなります。検査をやればやるほど、検査だけやりっ放し、品質管理もできていないという状況にもな りかねません。そしてこれは、内部被曝検査に限ったことでもありません。

場所場所で結論が異なるでしょうし、最終的には住民の方々が決めるべきことなのだろうと思います。

しかし、毎年の世論の状況を見て、予算が通るかどうかで次の年がどうなるか決まるといった、大きな方向性が無い状況が続くのも厳しいことだなあとも思っています。

写真: 南相馬市の中学校にて。WBC検査後、その結果がどうだったか、現状についてなどを説明して回っています。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014012700009.html

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