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Vol.31 診療室の窓から ~そーなんだ、歯科の臨床研修医編~

医療ガバナンス学会 (2014年2月7日 06:00)


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医療法人SGH会すなまち北歯科クリニック
院長 橋村 威慶
2014年2月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私は東京江東区で歯科医院を開業しています。砂町銀座というという東京三大商店街(他に十条銀座商店街、荏原銀座商店街)の中で下町風情に日々触れながら 診療をしております。一日来院患者数25~30人。老若男女の患者さんがまんべんなく来院するアットホームな歯科医院です。

そんな中、後輩歯科医師たちと日々診療していると歯科医師臨床医時代の過ごし方がいかに重要かが痛感させられます。「鉄は熱いうちに打て!」今、歯科臨床研修医はどうなっているのか?研修医義務化以前から義務化まで、歯科医師側からみた現状と問題点をご報告します。

平成23年5月、私の勤める歯科医院に研修を修了した卒直後のI歯科医師がアルバイト希望で面接に来ました。実際に勤めるのは始めてであり、他の医院にも掛け持ちで働くわけではないとのことでした。I先生の希望する勤務日数は隔日ごと。以下私とのやりとりです。
「隔日ですと、週に3日ほどですね。どうして隔日なのですか?」(私)
「一日治療して次の日に治療の復習と次回処置の予習をするためです」(I先生)
「どこで予習と復習をするのですか?」(私)
「図書館です。」(I先生)
私は思わず、間を置いてしまい、その場にはお互い困ったような時間が流れました。
「図書館だとレントゲン(院外に原則持ち出し禁止)も見れませんし、器材(歯科治療用器具)もないですから、診療後に医院で勉強したら良いと思いますが」(私)
「それだと疲れてしまうからです。一日にたくさんの患者をみるのはまだ慣れていませんので、予習、復習は次の日にしたいのです」(I先生)
I先生はまだ20代。履歴書には特に健康上の問題があるとは記載されていません。
「では何人くらいの患者さんを診ていきたいのですか?」(私)
「午前一人、午後一人が理想です」(I先生)

私はI先生のアルバイト採用を見送りました。私の勤める歯科医院では一日25~30人ほどの患者さん(全国平均(平成23年度)では20.3人)が来ま す。一日2~3人というのは一般歯科開業医が診る人数とは実際とはかけ離れているからです。そしてI先生は研修期間後一ヶ月費やして、どのようにアルバイ ト先で勤務するかを考えながら図書館で臨床の勉強も並行していたとのことでした。

ほんの10分程度の面接時間でしたが、I先生から受ける印象はとてもまじめで几帳面な性格が伺えました。
I先生はどうしてこのような勤務体系を希望したのでしょう?一般的な歯科医院でたった二人しか診ないというのはありえません。初めから雇用を希望していな かったのでしょうか?それとも単なる様子見に…?I先生の性格からそんなことなく、また歯科医師なら誰だってそんな都合のいいアルバイトがあるわけないの を知っているはずです。言うならば流行っているラーメン屋に並んでいたら「今日は二人まで」と閉店の看板を出されたようなものです。

I先生の面接後、私はI先生について考えました。
(あんな希望を出したらどこも雇ってくれないのに…。彼(I先生)の個人的な理由なのか、それとも…)
ここで私はI先生と最後に話した言葉を思い出しました。
「僕の同期の勉強仲間が5人いて、同じように図書館で勉強しています」

歯科医師はどれだけ図書館が好きなんだと、思う読者方がいるかも知れません。確かに図書の閲覧は知識を深め、歯科医療(技術)の再確認に有用です。です が、臨床に携わる者がルーチン的に週に何日もこもって図書館に行くなんてことはありません(新たな技術獲得のため一時通う時もあるでしょうが、恒常的では ありません。図書館に行くのは仕事上派生的な内容になるケースが多く、ほとんどの歯科開業医は経済的に無理な面もあります)

実は私はI先生のこの言葉で納得し、これが今どきの歯科研修医の象徴的な面を表しているとの結論に達しました。
歯科臨床研修医の義務化が始まってから5年(平成18年度~義務化)。一体、歯科臨床研修医に何が起こっているのでしょう?なぜ私がI先生の気持ちが理解できるのでしょうか?歯科臨床研修医今昔物語、ご紹介いたします。

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