医療ガバナンス学会 (2014年2月19日 06:00)
2. 消費税法の仕組み
消費税法は,資産の譲渡すなわち消費行為に対して課税し,納税義務者は,事業者であるが,実質的には,最終消費者(医療機関でいえば,患者)になる。他方 で,消費行為の種類によっては,非課税措置や免税措置,仕入れ課税控除制度,還付制度などが認められる。これは,政策的な理由から,最終消費者の税負担を 回避するためである。この場合,最終消費者の手前の者(先の例でいえば,医療機関)には,実質的な消費税額の負担が生ずるが,商品価額(自由診療の価額) を調整することで,消費税相当額を最終消費者から回収できる。
3. 社会保険診療の特徴
社会保険診療等は,公定価額とされているため,医療機関ごとに価額設定ができない。
4. 法律上の問題点
社会保険診療等は,「非課税」とされ,課税対象の消費行為ではないため,課税控除制度や還付制度の対象とはならず,医療機関は同制度による補填を受けな い。また,社会保険診療等の価額は公定価額であるため,価額調整によるコスト回収も不可能であるし,公定価額の改定は,必ずしも消費税相当額の補填として 機能していない。医療機関は,他人の消費行為の税負担を強いられている。この現象は開業医を含む多くの医療機関に認められるが,純利益の少ない大規模医療 機関で,かつ,公費補填のない民間医療機関には極めて大きな経済的損害である。
5. 法的措置
これに対しては,国家賠償請求訴訟や損失補償請求等の措置が考えられる。他の事業者と比べ医療機関不利益が極めて大きいこと,本来他者が負うべき税負担を 強いられていること,消費税法が予定していない損害(価額調整による負担回避ができないことによる損害)を負っていること等は,違憲・違法である。
6. 亀田総合病院の動き
亀田総合病院は,現在約8億円(8%換算では約13億円)の消費税相当額を負担している。純利益の10倍以上の額である。各医療機関も同様で,このままで は倒産必至である。この消費税問題に対しては,消費税を基に基金を創設しそこから補填するとの意見があるが,これではかえって国家による医療統制が強化さ れ医療機関の裁量萎縮に繋がりかねない。当院は,内閣官房に法改正を求め,また,執筆活動等により国民及び医療関係者等の意識を高め,さらには,上記の訴 訟提起を具体的に検討している。
7. いま必要なもの
昨今,一票の選挙権の格差を巡り,最高裁は平等の重要性を強く打ち出した。税は公平でなければならない。医療機関が消費税法上,本来負担すべきでない税負担を強いられている。税の平等を勝ち取るために各医療機関の「声と勇気」が必要である。