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Vol.43 25年のリーダーたちへ(1) ~国立がんセンタ―病院で麻酔科医不足を解消 

医療ガバナンス学会 (2014年2月21日 06:00)


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この原稿はキャリアブレイン CBnewsマネジメントより転載です。

http://www.cabrain.net/management/

公益財団法人がん研究会理事
土屋 了介
2014年2月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


この連載は、わたし自身の半生を振り返り、これからの社会保障の分野でマネジメントを担う「2025年のリーダーたち」に対して、将来へのヒントを示すと いう企画で始まった。しかし、わたし自身が日ごろ、マネジメントのヒントを欲しいと思っているので、なぜヒントが必要で、どのようにして、どういうヒント を、そのようなところから、どのような機会に得ているかを復習しながら話を進めさせていただく。

●なぜマネジメントのヒントが欲しいか
この記事の最後にある経歴をご覧いただくとお分かりのように、病院の経営に関与したのは2002年に国立がんセンター中央病院の副院長に就任した時から。 この時点まで、部長職に至るまで外科医としての職務がメーンで、手術と術前術後管理、外来、医師会の夜間の勉強会(毎月5医師会)、学会活動、講演会に明 け暮れる毎日だった。

従って、副院長に就任した時に、初めに12部長にヒアリングを行ったが、先輩の業務の見よう見まねだった。当時は1999年に起きた横浜市立大の「患者取 り違え事件」の直後であり、医療機関の医療安全体制の整備が急がれていた。副院長として医療安全管理室を監督し、医療安全管理委員会を主催して、医療事 故、ヒヤリ・ハット、苦情対処、訴訟対応に追われた。

同時に、医療者や医療機関に対する信頼が低下し、マスコミの批判的取材への対応も頻繁だった。院内ではパワーハラスメント、セクシャルハラスメントへの対 処もあり、中には、今でいうアカデミックハラスメントもあった。従って、国立がんセンター中央病院で副院長・病院長を務めた8年間は事件や事故への対応に 追われ、それらの根底にある構造的・組織的な問題の解決にほとんど手をつけることができなかった。

それらの問題の解決に至らなかった大きな要因の1つは経営能力の欠如であり、今では反省している。経営とは何かを教えられたのが、2011年から理事に就 いている公益財団法人がん研究会(がん研)だ。がん研の草刈隆郎理事長、石田忠正常務理事(現JR貨物会長)が率いる経営戦略本部(現経営本部)と、理事 会の特に外部理事の方々から、日々実践の中で「経営とはこのようなものである」と教えていただいている。

●外部の協力を得て体系的な麻酔科を構築
国立がんセンター中央病院で唯一、構造的。組織的な問題の解決を図ることができたのは「麻酔科医問題」だった。報道でご存知の方も多いと思うが、07年か ら08年にかけて麻酔科医離職者の補充ができず、手術を制限しなければならない危機的な状況に陥った。麻酔科医の不足はそれ以前より問題となっていた。

がん専門病院として疼痛管理を得意とする麻酔科には、緩和医療を勉強しに来る若い麻酔科医がいたことから、緩和医療を麻酔科の分野としてとらえて麻酔科医 を確保してきた。しかし、緩和医療の発展は著しく、疼痛緩和は緩和医療の一部となり、従来は終末期医療と混同されることも多かった緩和医療の診療範囲は、 世界保健機関の推奨もあり、「がんと診断された直後から」に広がった。従って、緩和医療の専門を希望する医師は、たとえ麻酔科出身であっても手術麻酔の業 務を離れ、その結果、緩和医療への専念を希望する医師が大半となった。

一方、手術麻酔を担当する麻酔科医は、手術患者に対して術前から十分に病態を把握し、術中のみならず術後早期の管理も自ら行うことを望んでいることが分 かった。しかも、緩和医療も手術麻酔も、医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、臨床心理士などを交えたチーム医療を実践することを望んで いたのである。

従って、従来のように麻酔科医の補充を一大学の麻酔科学教室に依頼するのでは国立がんセンター中央病院の「麻酔科医問題」は解決しないと考えたのである。 帝京大の森田茂穂教授に相談し、日本麻酔科学会理事長に「国立がんセンター中央病院の手術麻酔について、術前・術中・術後を統合的に管理する診療科とする ことにご協力をお願いしたい」と文書で申し入れた。

学会は理事会でこの要望を受け入れてくださり、病院の所在地を考慮し、南関東の大学が主体となって協力してくれることになった。東大の山田正嗣教授、横浜 市立大の後藤隆久教授が中心となって努力していただいた。横浜市立大からは宮下徹也准教授を手術部長として送り出していただいた。改革初期には、後藤教授 と帝京大の大嶽浩司講師(現昭和大教授)が約1か月応援に来てくださった。後藤教授は有給休暇をすべて使ってくださった。宮下部長の管理能力と若手医師へ の教育・指導力のおかげで、体系的な麻酔科業務を構築することができた。

緩和医療については、的場元弘医長が中央区医師会の協力を得て、地域の在宅療養支援診療所や訪問看護ステーション、看護マネージャーと交流できる4週間の 緩和医療科ローテーションのプログラムを、新人レジデント(30名/年)全員に実現した。このプログラムによって、がん診断時から積極的治療時、さらには 再発時、終末期の緩和医療について、病院・診療所・在宅のいずれの場でも、どのように緩和医療を実施すべきかを理解できるがん専門医を育てることができる ようになった。

10年の独立行政法人化に伴ってわたしは病院長職を辞し、宮下部長もその後、横浜市立大に戻られた。現在の状況は外部から見るのみであるが、さらに発展していることを期待している。

●がん研有明病院、がん研究会の経営改革
10年4月に財団法人癌研究会(癌研)で顧問として経営のお手伝いをすることになった。07年に粉飾決算問題が報じられてはいたが、経営内容についてはほ とんど何も知らずに赴任した。当時の癌研は11年4月の公益財団法人化と、同時期の特定機能病院指定を目指している最中だった。

わたしは他の財団の公益法人化に関与していたので多少の知識があったことや、公益法人認定委員会に所属していた公認会計士がロータリークラブの仲間にいた ことから、多少は役に立てると考えた。また、特定機能病院についても、国立がんセンター中央病院がこの制度ができる時点で指定を受けていたので、癌研有明 病院(当時)が指定を受けるのは当然だと考えていた。

ところが癌研の内情を知るにつれ、問題が山積みしていることがわかってきた。まず特定機能病院を申請しようとしているのに、いまだにDPC対象病院ではな かったのだ。また、総務部に規定集の閲覧を頼んだが、まとまった書類はないという回答が返ってきた。さらに、国立がんセンターで経験したのと同じような課 題も抱えていることも明らかとなってきた。

10年11月に公益財団法人の理事長候補、理事候補、評議員候補が決まるとともに、理事長候補が主催して理事候補による勉強会が行われるようになり、問題 点があぶり出された。そして解決に向かって進み始めるのである。次回は公益財団法人がん研究会の経営改革についてお話しする。

土屋了介(つちや・りょうすけ)
神奈川県出身。1970年慶應義塾大学医学部を卒業後、日本鋼管病院外科、国立がんセンター病院レジデント、国立療養所松戸病院、防衛医科大学校第二外科 を経て、79年国立がんセンター中央病院外科に勤務。91年同病院病棟部長、2002年同病院副院長、06年同病院病院長、10年財団法人癌研究会顧問、 11年公益財団法人がん研究会理事に就任。現在は内閣府・規制改革会議専門委員、神奈川県顧問(政策推進担当)、公益財団法人東京財団上席研究員などを務 める。

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