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Vol.44  25年のリーダーたちへ(2) ~「チーム経営」によるチーム医療

医療ガバナンス学会 (2014年2月22日 06:00)


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この原稿はキャリアブレイン CBnewsマネジメントより転載です。

http://www.cabrain.net/management/

公益財団法人がん研究会理事
土屋 了介
2014年2月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


●公益財団法人化と新体制の準備
公益財団法人化に向けて、癌研究会有明病院の当時の役員が理事長候補者として草刈隆郎氏に依頼したが、正式に回答が得られるまで1か月を要した。後に分 かったことだが、この間に理事候補者に就任を要請し、了解が取り付けられていたようだ。理事の多くは東証一部上場会社の現役の経営者で、公益法人後の理事 会において、執行役員の業務を厳格に監察し、評価していただくことになった。

同様に評議員から的確な質問と鋭い指摘が上がり、理事会も評議員も緊張感に満ちた運営がされることになった。自らの行為に対して的確で健全な批判と、評価をしていただける理事や評議員に就任を依頼した理事長の度量には、敬意を表している。

●病院と会社は組織形態が同じ
日本郵船の副社長と日本貨物航空の社長を務めた石田忠正氏が、退職後に悠々自適の生活を送られていたところ、両社で示された経営能力を買われて、常務理事 に就任された。石田氏の経験によれば、船舶会社も航空会社も病院も下の表のように組織形態は同じであり、「内部の職種や仕事の手順も似たところが多く、共 通の経営手法があるのではないか」とのことだった。その後、石田氏の指導の下で経営改革は成功したのだが、これは病院の経営が決して特殊なものではないこ とを証明している。
表:  http://expres.umin.jp/mric/mric.vol44.xlsx

●国公立的な病院運営から民間の経営手法へ
公益財団法人化と共に特定機能病院の指定も目指していたが、DPC対象病院になっていなかった。従って、術前検査の一部が入院後にも行われており、平均在 院日数が15.4日(2009年度)だった。すなわち、他病院の情報を得る努力が不十分で、いわゆるベンチマークを意識していなかった。当時も民間の財団 であり、国公立病院のような定員の制限はなく、また、特定機能病院ではないので医師事務作業補助者を採用することによって保険点数も請求できるのであった が、ほとんど活用されていない状況だった。

石田氏は、がん研究会(がん研)有明病院の経営状況を分析し、戦略を策定された。また、聖隷浜松病院や聖隷三方原病院、、国立病院機構京都医療センター、 飯塚病院などを訪問して改革の参考にされた。さらに、日本郵船(相談役)の仕事で韓国に出張した際には、サムスンソウル病院を訪問し、がんセンター長の案 内で、がん診療体制と経営手法を見学された。その後、関係者と共に、米国のヒューストンやニューヨーク、中国の深〇(〇は土へんに川)、タイのバンコク、 インドネシアのジャカルタなどの各病院を訪問し、がん研有明病院の経営の参考にされた。

すなわち、企業の一流経営者でありながらも、国内外の病院経営を参考にされ、しかも病院経営に関する本を多数お読みになり、経営に生かされたのだ。ご自身 でも客観的な経営分析をされたが、さらにコンサルティング会社に依頼され、健診・手術・外来診療の効率化について客観的な分析を行われた。これらの作業の 結果、理事会で経営幹部に「頑健な体質作り(案)」を説明し、その後の改革へ踏み出された。

●職員の意識改革―プロジェクト01(ボトムアップ改革)
「頑健な体質作り(案)」をたたき台にして、職員が多数参加する合宿で経営改善に向けた議論を重ね、職員が日ごろ考えているありのままの姿を明らかにし た。石田氏の指導でさまざまな経営手法を使って議論を整理した結果、職員から自己分析によって、「がん研有明病院の実績が個々の努力による部分が多く、経 営や組織的行動の面では改善の余地が多い」といった指摘があがった。そして、「負の連鎖が、収支改善と医療の質向上を図る上で制約になっている」と総括さ れた。問題点が明らかになったので、具体的に優先順位をつけ、ロードマップを作成して改善に取り組むことになった。これが、ボトムアップ改革としての「経 営改革タスクフォース(プロジェクト01)」である。

●トップダウン改革と中期計画の作成・実行・評価・改善
がん研有明病院の組織や制度などの刷新をトップダウンの改革として同時に行った。部門別収支算定の導入、他の医療機関との連携促進のマーケティング部や広 報部、セクハラ・パワハラに直面した職員を支援するコンプライアンス部門の新設、年功序列型給与制度の変更、経営会議・理事会の完全ペーパーレス化などが 行われた。

会議のペーパーレス化はタスクフォースからの提案であり、ボトムアップ改革とトップダウン改革がかみ合った結果であるが、さらにトップダウンの改善を図る ために中期計画が作成された。中期計画における実行・評価・改善は3か月ごとに、部門別に進ちょく状況を経営会議で報告することによって確認できている。

●世界に冠たる「がん研有明病院」を目指して
「改革は継続されることが必要である」という理事長の強い指導で、18年のがん研究会創立110年に向けて「step-upがん研(SG18)」が14年 1月に組織された。これは、長期ビジョン会議、中期先進医療推進会議、中期改革戦略会議の3会議から成り、中期改革戦略会議はさらに収益最大化とコスト最 小化の2つのグループで構成される。コスト最小化グループは、プロジェクト01の成果をくみ上げて改革の継続を目指している。

現在は、改革の継続によって世界に冠たるがん研有明病院を目指そうと、職員が一丸となって頑張っている状況だ。がん診療は「神の手外科医」の時代から「チーム医療」の時代に入ったが、がん診療病院の経営も「医師である理事長
の時代から「チーム経営」の時代に入ったと言える。

土屋了介(つちや・りょうすけ)
神奈川県出身。1970年慶應義塾大学医学部を卒業後、日本鋼管病院外科、国立がんセンター病院レジデント、国立療養所松戸病院、防衛医科大学校第二外科 を経て、79年国立がんセンター中央病院外科に勤務。91年同病院病棟部長、2002年同病院副院長、06年同病院病院長、10年財団法人癌研究会顧問、 11年公益財団法人がん研究会理事に就任。現在は内閣府・規制改革会議専門委員、神奈川県顧問(政策推進担当)、公益財団法人東京財団上席研究員などを務 める。

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