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臨時 vol 157 「医の中の蛙」11

医療ガバナンス学会 (2009年7月6日 16:03)


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           新型インフルワクチン
                              久住英二

 梅雨入りし、新型インフルエンザの騒動もひところより沈静化しつつあるよう
に見受けられます。いま冬を迎えている南半球のオーストラリアやチリでは新型
インフルエンザ感染者が増加しており、日本が冬を迎える半年後には、日本にも
第2波がやってくる可能性が高いと考えられています。予防接種をどうすべきか、
多くの人が注目しています。私は、ワクチンの製造本数とともに、供給体制につ
いて、しっかり議論したうえで、国民的合意形成が必要だと思います。
 新型インフルエンザ報道の陰に隠れて、ほとんど注目されていませんが、6月4
日に新しい日本脳炎ワクチンが発売されました。日本脳炎は、東南アジアからオ
セアニアに広く分布するウイルスによる脳炎で、蚊が媒介し、現在でも東南アジ
アの米作地帯を中心に年間約4万人の患者が発生しています。日本国内では、
1966年に2,000人の患者が発生し、1967年から積極的に予防接種が行われ出しま
した。これにより1970年には患者数は100人未満に減少、近年は年間10人未満の
発生数です。2005年まで日本脳炎ワクチン接種は積極的勧奨が行われ、年間約
300万回の接種が実施されていました。しかし、ワクチン接種後急性散在性脳脊
髄炎の重症者4人が、日本脳炎ワクチン接種後のみ発生したことを理由に、2005
年から現在まで積極的勧奨は差し控えられています。
 予想通り今回、新しい日本脳炎ワクチンの供給は混乱しました。初年度は480
万本が販売予定ですが、医療機関ごとの割当て本数が決められた上で供給されて
います。割当て本数以上に日本脳炎ワクチンを接種してきた当院では、皮肉なこ
とに新ワクチン発売によりワクチン不足が生じています。割当て本数を消化しき
らない医療機関の分が余ってくれば多めに供給が受けられる可能性がありますが、
当てになりません。
 新型インフルエンザワクチンの供給は、日本脳炎ワクチン供給の比ではない混
乱を生じるでしょう。なぜなら、例年インフルエンザワクチンは約2カ月という
短期間に2,000万本が消費されるからです。日本脳炎ワクチンやヒブワクチン供
給の混乱を教訓とし、前年度実績に基づく医療機関へのワクチン配分を行い、病
院の負担を減らすためにワクチン接種は診療所で行うようにする、等の措置が必
要です。また、製薬会社が安定して安価なワクチンを提供できるように、ワクチ
ンが余った場合の買い取り保障や、ワクチン訴訟を裁判所ではなく専門の副作用
判定機関(VICP)が判断するシステムをつくるなど、民事訴訟を制限する手段を
検討すべきでしょう。同時に、診療により感染を受けた医療関係者への補償制度
なども検討すべきだと思います。
 国民の安心・安全を高めることは、電化製品のエコポイントやエコカー減税よ
りも多くの国民に利益をもたらします。残念ながら、現在の為政者にはそのよう
な見識が全く欠けているようです。
くすみ・えいじ 1973年新潟県長岡市生まれ。新潟大学医学部医学科卒業ととも
に上京、国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修後、同院血液科医員に。
2006年から東京大学医科学研究所客員研究員。2008年に「ナビタスクリニック立
川」開設。
※この記事は、新潟日報に掲載されたものをMRIC向けに修正加筆したものです。
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