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Vol.80 動物看護師を知ってください

医療ガバナンス学会 (2014年3月30日 06:00)


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伊丹市 コタニ動物病院
動物看護師 胡谷晃子
2014年3月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


皆さん、初めまして。私は動物看護師です。こちらの読者の方々の中では、かなり異色の職業かもしれませんね。
少しだけ、私自身の事を説明させていただきます。

院長である獣医師の主人と結婚を機に、20数年前に動物看護師となりました。
と言っても、動物看護師は、国家資格はなく、民間の団体が講習・通信教育などで独自で決めた教育カリキュラムを作り、試験を行いそれに合格した者に対して、各団体が資格を発行しているだけです。

私が取得した資格は、
・日本動物看護学会 認定動物看護師 上級教育修了
・日本小動物獣医師会 動物看護士資格認定
・JAHA(日本動物病院福祉協会) 勤務看護職会員
・一般社団法人日本動物看護職協会 会員

仕事の内容は、当院の場合ですと、対象動物は、犬・ネコを主に対象としウサギ、フェレット、ハムスターなどの簡単な診療も行っています。
(難しいケースは、専門病院をご紹介します)
数は多くありませんが、エキゾチックアニマルと呼ばれる、犬・ネコ以外の外来動物、上記のフェレットや、ハムスター、ウサギの他、ペットとしてのミニブタ、小鳥、亀、カメレオンなどを専門とする病院もあるのです。

もちろん、診察は獣医師が行いますが、その補助的業務をする動物看護師も、当然それぞれの動物の解剖学的特性から、予防・病気・治療・看護・飼育方法、栄 養学、産科学またその動物の保定法(診察・検査しやすいように、その動物の安全を考慮して、持つこと)、治療薬についても、知っておかなければいけませ ん。
犬にはOKでも、ネコには禁忌である薬もあるのです。
いくら、獣医師管理のもとで薬を使用するとしても、ミスを防ぐためには、無知ではいられません。

「犬」という動物ひとつとっても、体重1kgのチワワから50kgを超えるセントバーナドなど、同種とは思えない程大きさも様々。
犬種によって、平均寿命も違いますし、行動特性も全く違います。
犬は愛玩犬・獣猟犬(鼻を使うサイトハウンド・眼を使うサイト・ハウンド)・ヨーロッパで流行したペストの原因とされるネズミ退治のために作られた犬、鳥 猟犬・牧羊犬・牧畜犬・作業犬と人間の使用目的の為、選択的に交配され、家畜化された動物ですので、遺伝的疾患も大変多いです。

一般的な犬種の遺伝的疾患は知っておかなければいけません。
また、診療の補助をする際も、どうやってアプローチすれば、犬を怖がらせることなく、獣医師にも安心して診察・検査に集中してもらえるか、犬種別の行動特性も考えなければいけません。

例えば、陽気なレトリバー種なら、明るくテンションの高い声をかけられることを好み、おやつを与えながら、「○○ちゃん、かわいい~。おりこう~。よし、 よし」なんて、声をかけて、楽しい気分にさせて、軽く保定していれば、予防注射なんて、犬が気がつかないうちに、獣医師にさっと、打ってもらうことができ ます。

それに反して、600~700種ある犬の中でも一番原始的な種類だといわれている柴犬は、警戒心がとても強いので、そう簡単にはいきません。
まず、診察台の上に乗せるために、抱きあげることさえできない飼い主さんも多いです。
それを、なるべく自分の気持ちを、できるだけリラックスして、(犬は、人の緊張感に大変敏感なんです)「△△ちゃん、こんにちは~」穏やかな声でアプロー チし、犬の警戒心がピークになる前に、(犬は、怖いと、まず「固まり」、「唸り」、「逃げようとし」と逃げられないないとわかったら最終手段に「咬む」行 動を示します)さっと、首の下とお腹の下に手を滑らせて自分の胸の前で安定させて、抱き上げ診察台の上に乗せるという高度なテクニックが必要です。
採血の時など、動かしてはいけない脚は、獣医師が採血しやすいように、しっかり持ちながらも、他の部分は、犬が必要以上に怖い思いをさせないように、力を ぬいて・・・不安そうに見守る飼い主さんには、笑顔で、「○○さん、大丈夫。△△ちゃん、おりこうさんですよ~。すぐ終わりますからね~」って声をかける のも忘れません。

犬だけでも、そんな違いがあるのに、同じ哺乳類であるネコも全く違いますし、ましてや草食動物のウサギなどはまったく生態が違います。
その上、動物病院は、ふつう専門単科ではなく、内科・外科・皮膚科・泌尿器科・眼科・耳鼻咽喉科・神経系科・産科など色々な疾患の動物が来院されます。
そして、日々、獣医療も向上し、院内で抗がん剤治療を行うことも珍しくありません。

動物看護師が、入院のケアをするのですから、抗がん剤治療中の動物の排泄物の取扱いなども、入院動物はもちろん、自分の安全の為にも、その知識は必要です。

そして、どんなに気を付けていても、犬や猫に咬まれたり、ひっかかれたりなど、怪我の経験をした事のない動物看護師はいません。
当院は、24時間体制ではしていませんが、それでも状態によっては、緊急夜間OPEも珍しくありません。
動物相手なので、お正月も交代勤務です。

長時間にならざるおえない仕事をしていても、日々進歩していく獣医学についていく為に、夜間9:00~11:00に行われる、セミナーにもいつもたくさんの動物看護師が参加し、勉強しています。

高いプロ意識をもち、過酷な環境の中で働いているというのに、社会的認知度は、とても低いです。

そんな中、たくさんの方々の尽力の結果、やっとバラバラだった資格が、平成23年9月に全国統一試験と試験に基づく資格認定の統一実施を担う機関として、「動物看護師統一認定機構」が設立されました。

私も、この機構が認める認定看護師の資格を得たのですが、それでもまだ、国家資格として、いつになったら認められるのか、全く見通しはたっていません。

なぜ私が、今、国家資格にこだわっているのかと申しますと、動物病院内で、子犬とその飼い主さんを対象に、
・人を咬まないなど、将来問題行動を起こさないようにするため。
・社会に迷惑をかけない為の最低限のしつけ。
・健康指導を行うため
こころと、体の予防の知識をお伝えする、パピークラスというものを開催するためには法的に、動物取扱業の「訓練」に該当するので、その申請が必要とわかりました。

必要書類を準備するために、自治体に問い合わせたところ、「動物看護師さんは、国家資格ではないので、「訓練」に関して動物取扱責任者になれません。」と言われました。
「訓練」の責任者を獣医師にすれば、すぐに申請ができるとのことでした。
動物行動学の知識も薄く、パピークラスについて、ドックトレーニングについて技術も知識がなくても、獣医師であれば、申請できるということに、とても憤りを感じました。

私は、JAHA(公益社団法人 日本動物病院福祉協会)のパピーケア養成講座で、2年間学び、パピーケアスキルと、飼い主指導のコミュニケーションスキルを習得したと、終了証をいただいています。
そして、今は3年目のインターン生として、知識・技術のいっそうの向上に努めています。
それとは、別にドックトレーナーにプライベートで一般の飼い主のトレーニングではなく、競技会に出るレベルでの指導も受けています。

今年1年のインターンと、その後1年間の各自の病院でパピークラスを開催した実績があって、初めて、試験を受け、公認インストラクターの資格を取得できるのです。

こんなに努力していても、20年以上の看護師としての経験も、役所の申請となると、無価値の存在になるのか・・・と愕然としました。

と言っても、強情な私はそう簡単に引き下がりません。
持っている認定証すべてと、ブログで私が公開している動物行動学、飼い主教育に関する記事など、あらゆるものを提出して、説得しました。
どうしても、自分の責任で、パピークラスを開催したいのです。
「胡谷さんの気持ちは、良くわかります。とても勉強されていることも理解しました。ただ、手続きに関しては規則がありますので・・・とりあえず、数日ください。」とのことでした。

このことを、研修先の病院の獣医師に相談のメールをしました。
「愛玩動物飼養管理士の資格は持ってないの?それを持ってればすぐ、申請できるはず」と返事をもらいました。

実はこの「社団法人 日本愛玩動物協会 愛玩動物飼養管理士の1級」の資格を19年前に取得していたのです!このことをすっかり忘れていました。
すぐに連絡し、資格証明書をFAXすると、「これなら、大丈夫です」とお返事を頂けました。
必要書類をすぐに揃え、責任者の蘭には、自分の名前を記入し、手続きすることができました。

といっても、看護師として認められたわけではありません。
1日も早く、動物看護師が、国家資格として認められるように願っています。
以上のように、動物看護師という仕事は多岐にわたり、ストレスも多いのですが・・・

あるセミナーで、講師と参加者で、お弁当を食べながらの休憩時間に、「私の癒される時間について、一言」とマイクを回されていったことがあります。

面白い事に、癒される時間が「自分の飼っている動物と一緒にいる時」と答える人が8割を占めました!
動物と関わる仕事によるストレスも、動物によって癒される人が沢山いるのです。
もちろん、動物好きの人がこの仕事に関わっているのですから、普通の人達の平均よりはずっと高い結果だとは思います。
動物を飼ったことのない方には、理解できないかもしれませんが、動物には人の心の状態を察して、それを癒す不思議な才能があるのは確かだと思います。

5年程前に亡くなった私の飼っていたゴールデン・レトリバー犬のモル。
この子は、子犬の頃はかなりやんちゃで、大変でしたが、成犬になると診察中は、遊べないことを理解して、病院の待合室のはしっこに、犬用クッションを置いておくと、診察中はずっと大人しく寝ていました。
(診察時間が終わると、「ねぇ。遊ぼうよ」とおもちゃを持って来ます。仕事中の行動と、休憩になった時の人間の行動の違いをしっかり観察して、把握していました。犬の観察力は素晴らしいです!!)

モルは、病院を怖がる犬には、「ここって、そんなに怖いとこじゃないよ」って、横たわってリラックスして、寝ていることで、そう伝えてくれました。
モルがいると、怖がって震えていた犬が、不思議と落ち着いていく光景を何度も見ました。

ある日。不治の病でもうあと数日で亡くなる可能性が高いと説明されていた入院中の猫の飼い主さんが、待合室で面会の順番を待っていた時のことです。

モルは黙って静かに近づいて、その方の膝に頭を乗せました。そして、その方は待っている間、何も言わずずっとモルの頭をなぜておられました。

それを見た私は、驚きました。

この中年男性の飼い主さんは、猫派で犬が苦手な様子だったので、それまでは、この方が来られた時は、いつも別の部屋にモルを移動していたのです。
そんな方が、自分の膝に乗せたモルの頭を無言でやさしくなぜていました。

そして、面会が終わって帰られるときに、「僕は、初めてあんな大きな犬を触らせてもらったよ。ありがとう・・・」ただそれだけ言って帰られました。

もともととても、無口な方だったので、それだけでも、モルにからの励まし、優しさが伝わったのだと、十分に理解できました。

犬には、こんな不思議な力があるのです。

私は、こんな素晴らしい能力をもった動物達に関われる仕事ができる事を、とても誇りに思っています。

そして、そんな動物達、もちろん飼い主さんが、共に幸せに暮らすことができるお手伝いをしたい。
そう考えています。

私の拙い文章を最期まで読んでくださったことに、感謝いたします。

【略歴】
1968年生まれ
1991年3月大阪音楽大学短期学部声楽科専攻科卒業
1991年結婚を期に動物看護師の勉強を始める。
兵庫県伊丹市コタニ動物病院で23年間、動物看護師チーフとして勤めている

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