医療ガバナンス学会 (2014年3月31日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年3月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
小児であればほぼ誰からも検出しない状況、成人でも検出限界を超える方(セシウム137からの追加被曝が0.01〜0.02 mSv/年、それ以上になる方)は全体の数%程度(場所によってやや異なります)という結果です(参照:第76回)。
その一方で、内部被曝検査を受診される方が徐々に減ってきていることも紹介してきました(参照:第45回)。検査結果が公表され、全体がどういう状況か分 かってきたということ、実際の検査時間が昼間で受診できないという問題など、様々な理由がありました。結果として今後、継続的な検査を行っていくのか?ど の程度行うのか?はっきりした道筋が無かったり、バラバラであったりするのが現状です(参照:第95回)。
検査結果は各市町村のホームページで公開されていますが、検査結果を見直し、どの程度の方が検査にこれまで参加しているかを調べました。
2014年明けまでで、相馬市、南相馬市ともに、一度でも内部被曝検査にいらっしゃっている方は、15歳以上の方で人口全体の約35%程でした。そして2回以上、定期的に検査にいらっしゃっている方は同じく10%弱でした。2市の間に大きな差はありません。
計算は、住民票を相馬市または南相馬市として登録されている方を分母にしていますので、実際に居住人口という話になると、受診率はもう少し高めになるかも しれません。傾向としては、男性より女性の方がどの年代でも10%ぐらい受診率が高い。そして20,40,50代の男性が低く、逆に20代、30代女性が 比較的高め(40〜50%程度)という結果でした。
小児は学校検診として検査が行われており、南相馬であれば小中学生の99%が検査を受けています(参照:第82回)。ですので、小児も含めて人口全体という話をすれば、上記の35%から少し増えるのだろうと思います。
この検査の結果から、こうすべきだという話があるわけではありません。
検査をやっていて受診したい人だけ検査するという形では、継続性は危ぶまれるのだろうと思います。もちろん、リスクがどの程度か分かってきている以上、全員に検査を強いるようなことをすべき状況では全くないことも確かです。
検査をすることのデメリットもあります。もう別にいいんじゃ無いの? 確かにデータを見ているとそんな気もします。ただ、もう誰も今後一切検査をしなくて良いかと言われると、少なくとも僕はそうは思っていないわけです。
市町村ごとに状況は違うのでしょうけれど、自由に検査ができて、来たい人だけ検査するという形では、恐らく人口全体の数%ぐらいの方のみが検査にいらっ しゃる状況になるのではないかと思っています。検査自体が健康を守るわけではないし、検査が全てでは全くありません。反対に検査数を増やせばやりっぱなし になります。
まとまりがありませんが、高校生の授業での反応や不安、地元の方々の放射線についての関心や理解度、報道、僕自身が感じている感覚と、この受診率を比べると、少し乖離というか違和感というか、すっきりしないなと思いながら。今日はこの辺で。
写真: 原町高校での授業です
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014032700003.html