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Vol.98 内部被曝通信 福島・浜通りから~内部被曝検査を受けられる体制にはなっている

医療ガバナンス学会 (2014年4月18日 06:00)


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この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html

南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年4月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


福島県川内村を訪問しました。福島県の車載型ホールボディーカウンター(WBC)が川内村を訪れ、村民の希望者を検査するので、その際の健康相談のお手伝いをしました。

1人当たり平均10分弱ぐらいでした。放射線に限らず、健康に関することならどんな相談でも対応する、一種の外来のようなものです。ご高齢の女性が多くいらしゃいました。平日の昼間だったからでしょうか。

放射線の話ももちろん聞かれます。県内産の食べ物は大丈夫か?とか、自宅の野菜などの検査結果をどう判断するか?とかいった内容です。しかし、ほとんどの相談は、放射線以外に関することでした。

「あまり眠れないので、眠剤を処方してもらったのだが、どの程度飲んでも大丈夫なのか?」「何となくおなかの調子が悪いのだが、どんな検査をしたらいいの か?」「健康本にこんなこと書いてあったが本当でしょうか?」などです。こうした内容は、一般外来で多くの医療スタッフが行っている普通の診療に近いもの でした。

医療という切り口で見ると、放射線も大事なものですが、健康という観点からは一部のことであり、日常の診療が滞りなく行われることがいかに大事か、改めて思います。

南相馬や相馬では、病院に設置されたWBCによって検査が行われています。しかし、県内では今回のような車載型WBCによる検査も行われています。写真のような大きなトラックにWBCを載せて目的地に向かいます。

写真: http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014041400012.html

一部伝聞になりますが、現在、福島県にはキャンベラ社製WBCのFastscanを搭載したバスが10台弱あります。各市町村から県に要望があれば、出向 いて検査を行います。検査自体は、委託を受けた2つのグループのスタッフが請け負い、それぞれの場所ごとに検出限界を求めて検査を行っています。検査前に 5分くらい、検査の説明と一般的な放射線に関する小さなレクチャーのようなものをしていました。体重を測ったり問診票で現在の食生活について聞き取りした りはしてないようでしたが、2分間立っている際に間違い探しのパズルができる張り紙があったりと、難なく検査が受けられる工夫もあります。

写真: http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014041400012.html

短絡的に「良い悪い」の話ではありませんが、内部被曝検査は色々なタイプの検査が入り交じっています。このような車載型WBCが出向いて行う検査、市町村 が主導しWBCを設置している病院などが請け負って行う検査(南相馬市立病院はこれです)、震災直後に多かったJAEAのような施設にバスで移動して行う 検査、行政とは無関係に私立病院や市民団体が主導で行っている検査などがあります。

川内村を一つの例とすると、震災後の当初はJAEAで検査を受けていました。ひらた中央病院で定期的に検査を受けている方、または今回の車載型WBCで受けている方、それ以外に独自で検査を受けている方と様々です。

個人情報保護の問題もあり、どのように一元的にデータをみて判断できるか?という問題や、精度管理、方法の統一、現場間の情報交換など、これらの問題に十 分な解決があるとはいえませんが、一個人が検査を受けたいと思ったときに、検査を受けるだけであれば、どこかで直ぐに場所を見つけられるようにはなってき ていると思います。

多くの場所で、検査を受けたければ受けられる体制はできてきています。南相馬市では26年度から、19歳以上は年1回無料、18歳以下は年2回無料で検査 できるようになりました。検査とその結果をどのように使用するかは一人ひとり次第です。(受診率の低さは気になりますが)検査はこうあるべきという話では ありません。今後の生活のため、自分自身の考えに合わせて有効に使ってもらえたらと思っています。

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