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臨時 vol 172 すずかん通信「新型インフルエンザ」

医療ガバナンス学会 (2009年7月27日 10:06)


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          国内体制整備のためオープンな情報共有を!
                        鈴木 寛

 新型インフルエンザH1N1が日本でも発生しました。日本では当初、水際で
の検疫体制の強化に偏りすぎ、国内対策が後手に回ったことも否めません。
 国を挙げて取り組むべきは、検疫のほか、迅速な診断、徹底的な情報公開、調
査監視(サーベイランス)、相談窓口の設置、診療体制への支援等が挙げられま
す。その優先順位は流行のステージによって変わり、国内で感染が広がり始めれ
ば当然、診療が第一となりますから、検疫をすり抜ける可能性を想定して、当初
から、診療体制の充実が図られねばなりません。
 ところが実際には、現場は大混乱に陥りました。もともと医療スタッフも設備
・器具も十分でないところへ、予算措置もなく、発熱外来の設置等がせまられた
ためです。「患者が殺到して対応できない」との声も各地で聞かれました。
 省みるべきは、指示系統、ガバナンスのあり方そのものでしょう。中央集権型、
クローズドな情報管理のもと、厚労省のWHOや他国のスタンダードとも食い違っ
た一方的な命令が、現場の混乱を招いたといえるからです。
 まず、国、専門家、市民、いずれもその情報には限界がある以上、各々の情報
を提供・共有しあうオープンな情報システムの構築が必要です。各国の専門家間
でそれぞれの行動について相互レビューを行うのも有効でしょう。そうしてまさ
に国内外の「現場智」「集合智」に基づいたアプローチを探るべきです。新型イ
ンフルエンザ行動計画ガイドラインも不断に見直されていくべきでしょう。
 その上で、国はしっかり予算を計上し、”資源投入を伴う要請”を行うべきです。
臨時の人員配置、現状で全く足りていない迅速診断キット、遺伝子診断体制、陰
圧個室(気圧が低く、ウイルスの漏出を防ぐ)や外来プレハブの普及、ワクチン
製造体制の拡充、感染の可能性の高い医療従事者への対策等を進めねばなりませ
ん。輸血について、ウイルス等の感染力をなくす不活化技術の導入も急がれます。
 より強力なウイルスの出現を想定して今回の教訓を生かし、体制をすみやかに
立て直さなければなりません。
著者紹介
鈴木寛(通称すずかん)
現場からの医療改革推進協議会事務総長、
中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員
1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。
教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。
MRIC Global

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