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MRIC臨時 vol 184「平成20年10月1日 終わりが始まり」

医療ガバナンス学会 (2008年12月3日 10:52)


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             歯科技工の海外委託問題訴訟原告団
代表 脇本 征男


 歯科技工士の私が、まさか裁判など起こすことは考えもしなかったことですが、初めての経験でした。そして全て棄却、全面敗訴でした。門前払い同然の判決です。
その瞬間、覚悟はしていたものの茫然自失、実に情けなく、悔しかったです。報告集会終了後会食を拒否し、ポスト外交のため夜半の閑散としたビル街を一人急ぎながら、眼の奥から痛みを伴って涌き出る執念、怨念の残骸で、鼻頭がジーンとしびれぼやける視界で歩き続ける自分がいました。
確かに確固たる組織が有りながら、個人で訴訟を起こすことのハードルは、実際にやってきた者でなければ跳び越えることのできない厳しいものがあります。
組織ぜんとしていれば、機構に従い、施策、方法、準備、実行すべて型にはめて誰にでもできます。しかし、目的はひとつ、「国を相手に訴訟を起こす」との志で任意に集まった塊であります。誰が代表になってもおかしくない、みんな優秀な人材だけに、個性的で、何度となく一触即発の危機は乗り越えなければならなかったことは事実です。
それでも一度たりとも苦しいとか、放り投げようとか思ったことはありませんでした。
それは、今あり、将来を考える時、この訴訟を通して「歯科技工士」がいかに資格者として業界で大切な役目を担って仕事を為しているか、知らしめたいからであります。
まさに今、閉塞的な歯科業界にあって、国民の皆さんに歯科技工士の顔が少しずつではありますが見え始めつつあるのではないでしょうか。
自らの職業に自信を持ち、生き甲斐を見い出し、将来設計ができ、老い先までを夢見ることのできる職業だったら、誰も好き好んで若い身空で、他に転職、廃業、最悪な縊死など、悲しい結末は選ばないことでしょう。
今でこそ生活現状での悲惨事象を数えても両手に余るくらい多いなか、国は「歯科技工士」は確かに資格制度で免許はあるものの、「歯科医師の補助を為していればいいことで、地位保全などと訴える主体性はない」ということです。まるで「法」成立以前の昔、誰に歯科の補助をさせても良かった時代に逆行の感があります。
「国内法だから海外の無資格者に歯科技工行為を委託しても良い」??????。
それも、歯科技工士法の「定義」2条の歯科医師が自ら治療している特定人(患者)の補綴を行うと同等に「歯科医師自らの行為として委託しても良い」と言うことです。
法の定義は「歯科医師が自ら治療している患者の補綴物作成は、技工とは言わず、治療行為と見なされる」ということであります。
法律上、少なくても「治療の一環」である重要な「補綴物作成」を、わが国の有資格者である歯科技工士ではなく、海外の無資格者に委託する歯科医師の医療人としての倫理感を疑います。あくまでも、国内の歯科医療現場における経済的なメリットだけを求めた、違法行為であると断ぜざるを得ません。
先の日歯への協力申し入れの時点で、対応して頂いた常務理事の先生が、「歯科医師がやっている訳がない。やっているとしたら技工士か業者にだまされているのだ。」と断言なさいました。現実に、愛知県で開業されており、テレビ東京と読売の記事で実名報道された先生は、一体何者なのでしょうか。こういう所にも現状の歯科医療業界の恥部がはっきりと浮き彫りにされております。
幸いなことは、裁判所の判断で「一般に、業務独占の規制に違反する行為が禁止される結果、歯科技工士法上又は条理上、所轄行政庁においてその違反の有無について調査し、その結果に基づいて違反行為を止めるように指導することが求められる。」との一定の国の責任を認知したことであります。
つまり、今までの口頭弁論で国は、歯科技工士には「業務独占は無い」との一貫した主張でした。同時に国は、「条理上」という解釈を示したことは一度もなかったことを、裁判所は認知してくれたということです。
結果的に肝心な海外委託の問題に踏み込まず、残念ながら門前払いの判決となった訳ではありますが、したがって、海外委託そのものが、合法か、違法かは、上級審の判断如何に持ち越されることになっただけであり、訴えが却下されたからといっても、即、歯科技工の海外委託が「合法」と考えることは早計であり、大きな間違いです。
私たちはこの訴えで、自分たちの権利主張のみを声高に叫んでいるような裁判所の捕らえ方でありますが、自らの仕事が無くなるとか、経済的に大きな損失であるからとかではないのです。
まさに裁判所が主張する「歯科医療を受ける国民の健康を確保するため、一般的公益としての公衆衛生の保持を目的とするものである。」 このために、制定された歯科技工士法に「17年通達」は違反していないのかを問うているのです。
上級審では「事実上の利益」にとどまらず、歯科技工士の法的利益の主張と、「当該行政庁の合理的な裁量」とする舞文弄法との闘いになろうかと思われます。
これまで各方面の、多大なご支援、ご教導、そしてご援助を賜り、身に余る光栄と心からの敬意と感謝を申し上げます。
当初の公約通り、10月2日、東京高等裁判所あて控訴手続きを完了いたしました。
冒頭、訴訟的確から「入り口突破」を図り、今度こそ内容の審理にじっくり戦法を整えて臨まなければならないと決意も新たに覚悟いたしております。一審は不服ながら終わりました。今日から高等裁判所での闘いの準備がはじまります。
より一層のご支援ご協力の程を伏してお願いを申し上げ、ご報告とはじまりの所信の一端とさせて頂きます。
以上

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