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臨時 vol 104 「「骨髄バンクは天下りを拒否せよ」ボランティアら怒りの集会」

医療ガバナンス学会 (2009年5月8日 11:57)


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                ロハス・メディカル発行人 川口恭

 骨髄バンクを支援するボランティア団体が昨年、厚生省出身の元骨髄バンク役
員から名誉毀損で訴えられる前代未聞の出来事が発生した。訴えられた「公的骨
髄バンクを支援する東京の集い」を応援する会合が4月25日午後、東京・銀座で
開かれ、参加者から「過去20年、天下り役員が期待通りに仕事してくれたことは
ない」「これを機に拒否させよう」と次々に声が上がった。
 骨髄バンクは正式名称を『骨髄移植推進財団』といい、91年12月に設立された
特定公益推進法人だ。血液がんの治療で幹細胞移植を希望する患者と、骨髄提供
者(ドナー)との仲介(コーディネート)を中心に、啓発やドナー募集、ドナー
が傷害を負った場合の補償などを行っている。昨年12月には、同財団を通じた移
植が1万例に達した。
 その組織は、理事会の下に、中央と地方と合わせて約70人の職員からなる事務
局が存在する。理事長は代々医師が務めているものの非常勤であり、常勤のトッ
プは常務理事だ。そして、そのポストが一部期間を除いて、厚生省・厚生労働省
からの天下りで占められ続けている。今回、『東京の会』を訴えた元役員(現在
は大学教授)も在籍当時は常務理事兼事務局長だった。
 天下りを受け入れるには当然見返りもあり、09年度予算書によれば、年間総収
入15億5000万円余のうち約4億4000万円を国からの補助金で賄っている。ただし、
そもそもはバンク設立を求める草の根の運動が結集して民間主導で成立した組織
であることと、期待に反して今ひとつピリっとしない財団の活動を多くのボラン
ティアが支えてきた経緯があるため、今回の訴訟で、全国のボランティアたちの
怒りは爆発寸前になっているようだ。この日の会合(主催・全国骨髄バンク推進
連絡協議会)も、豪雨の中に集まった人々の静かな熱気に充ち溢れていた。ここ
では訴訟の意味について講演したうちの2人分とパネルディスカッションの模様
を記す。
野村正満・『東京の会』顧問
「骨髄バンクも今でこそ70人くらい職員がいるけれど、最初は5人位で人もカネ
もなかった。だから支援しないとどうにもならんということでボランティアが支
えてきた。そうやって一生懸命支えてきて、この20年間でバンクが成熟したかと
考えてみたい。
・バンクを介した移植が希望者に遍く届いているかといえば、まだ希望者の5~
6割に提供できているに過ぎない。
・皆保険制度があるのに、バンクを介すると患者負担金がある。
・コーディネート期間が長くて、一時短くなりかけたけど、また最近長くなって
きている。
・ドナーの安全性が確保できているかといったら、つい先日も国立がんセンター
で骨髄を採り過ぎるという事故があったばかりだ。
 こう見てくると、バンクにはもっと責任ある運営をしてほしいという気持にな
る。改善には現状分析が必要で、その中には当然に批判も含まれる。東京の会は
真摯な言動と運動を20年行ってきた。そういう良かれという提言に対してバンク
が対応してきたかと言えば、寂しい現状がある。そんな中で突然訴えてきた。
 要は名誉棄損に名を借りた口封じであり、ボランティア組織に対する明白な敵
対行為だ。この裁判は断じて負けるわけにいかない」
宮戸征美・全国骨髄バンク推進連絡協議会初代委員長
「私が委員長を降りてから、もう15年経った。当時の私は、ボランティア運動だ
という意識と同時に、新しい社会システムをつくる社会運動だという意識も持っ
ていた。今でこそ財団に一本化されているが、当時は東海にバンクがあり、東大
にも東海大にもつくろうという動きがあった。ただ私はたまたま、献血について
提供者に何かあった時には日赤が一生補償することになっているのを知っていた。
だから骨髄バンクも乱立はいかん、もしものことがあった時にきちんと補償でき
るよう国が主導でつくるべきと主張し続けた。私がいなければ、あと2~3年早
くスタートしていたのにと当時は言われたが、しかし補償する仕組みが絶対必要
だ。
 骨髄バンクは善意の人が登録して提供する。それに対して何を返しているか。
実は何も返していない。喜びを与えているんだというような言い方もあるが、し
かし何か起きた時には、1億円を3億円にすべきだと今思った。しかし現状のバ
ンクではとても覚束ない。
 それから20年も経つのだから、この運動を世界にも出したいなと思うのだが、
とてもじゃないが出せない。バンクがなぜこんなに停滞しているのかという問題
意識は持ちたい」
 ここからパネルディスカッション
 野村
「東井さんはバンクができた当時の厚生省の課長補佐だったわけだが、今回の件
について何かあれば」
東井朝仁氏
「特に知っていることはないが、東京の会の会報(過去の主な記事はこちら
http://www.marrow.or.jp/apps/tokyo_news/” )はずっと読んでいたので、なる
ほどなという感じだ」
野村
「東京の会通信は真摯にやってきた分、当事者には耳に痛いことも書いてあった
んじゃないか」
東井
「若林さん(パネルディスカッションの前に自身の特集法人勤務の経験を講演し
た若林亜紀さん)の証言、あれが普通でまかり通っている。財団も特定公益推進
法人として国民の期待を受けて発足したのに、いつも耳に入るのは人事の話ばか
り。Hさん(訴訟の原告)が財団へ行ったと聞いて、財団も大変だなあと感想を
述べた記憶がある。今回の問題は、『東京の会』があえて天下りの問題に対して
声を上げたから露呈した。本当は、財団内部から自浄作用が出てくるべき話で、
山崎さん(元財団総務部長でH氏に関する報告書を理事長に提出したところ解雇
され、現在地位確認を求めて訴訟中)なんかはやったんだろうが逆に解雇されて
しまった。ひとつ言えることは、沈黙は金なんかじゃない、救いなんかではない。
最近、流したような編集後記が書いてあると、日和ってんじゃないの? と言っ
ている」
野村
「宮戸さん、東京の会通信について何か思い出があれば」
宮戸
「思い出は特にない。山崎君と会う機会があって、これこれで辞めさせられちゃっ
た、何それという話をしたぐらいで。ひとつ思うのは、東井さんがそういう立場
じゃなくてよかったな、と」
野村
「宮戸さんは日赤に対して『座り込みかけるぞ』と言ったりと激しく運動を展開
していた。私なんかも随分被害を被ったけれど、そういう目から見ると、最近の
運動は腰が引けているんだろうか。かえって宮戸さんのように激しくやる必要が
あるのかなという気もしている。
宮戸
「私は過激だったから、後に続いた人が地ならしに苦労した。ただ、こういう問
題はイケイケドンドンでやらないとダメ。東京の会が正しい、これは分かってい
ても、正しければ済むかと言ったら足踏みしてちゃダメ。こんなこと言うと何だ
が、東大の法学部を出て厚生省に入ったのに、財団に流れてくる時点でその程度
の人物。財団には医者はいるけれど、きちんと業務を整理できる人がいない。そ
こを含んでやった方がいい」
野村
「こんな風に天下り役員が誰かを名誉棄損で訴えるような似た事例をご存じだろ
うか」
若林
「ない。よくあるのは政治家の場合だが、それは選挙までの2、3年の間『ウソ
なんですよ』と主張するための時間稼ぎとしての訴訟」
野村
「こんなに生々しい発言をしていて、身の危険を感じたことはないか」
若林
「正直こういう場に出てくるのは怖い。ブログで告知すれば人を呼ぶこともでき
ると思うのだけれど、しかし生身の私がどこにいるか知られないよう警戒はして
いる」
野村
「名誉棄損が成立するかしないかの線引きがあるなら教えてほしい」
宮田信夫弁護士(被告代理人)
「それに答える前に若林さんの話は著書にも載っているので、ぜひ読んでほしい。
笑いながら読んでいるうちに段々腹が立ってくるという素晴らしい筆力だ。若い
時の遠藤さん(名誉棄損とされている文章を書いた人物)が同じだった。江川紹
子さんと2人で参加してくれてたのが、バンク運動をやっていた仲間の弁護士の
1人がオウムに一家皆殺しにされたので、江川さんはあちらに全面的に入って行っ
た。残った遠藤さんはババを引いて、江川さんはちゃんとしている。さておき、
若林さんの証言のようなことは、公務員の世界では当たり前。バンクに送り込ま
れたのは彼らからすると悲しいこと。しかしHさんは、1600万円で処遇されたこ
とを不当だと厚生省を訴えるなら分かるが、ボランティア主体で始まってきた財
団に来ておきながら、ボランティアを訴えるとは言語道断だ。恐らくそういう歴
史を知らないのだろう。名誉棄損が成立するか否かの中身は基本的には真実相当
性であり、東京の会通信に書いてあることは紛れもなく事実だ。ただし遠藤さん
の文章は、事実か否かとは別に、シャレというか皮肉というかが効いていて、本
人にとって不快なものがあるのは事実だろう」
野村
「H氏の現在の情報を知っていたら」
山崎
「(略)」
野村
「先ほど東井さんが財団も大変だと思ったというけれど、そんなに有名な人物だっ
たのか」
東井
「環境庁の問題に関しては新聞でご存じの通り。実は私もとある小さな公庫で彼
の部下として一時働いたことがある。(中略)今回の問題が偶発的とは信じられ
ない。起こるべくして起こったと思う。やはり財団やボランティアの側も言うべ
きは言わないとダメだ」
野村
「内部告発の文書というのには何を書いたのか」
山崎
「裁判で公開を制限されているので、一審判決が出ればお示しできるが、(略)」
野村
「その程度のことか」
東井
「今回の問題に関して思うのは、財団の理事長、副理事長がだらしなさすぎる。
厚労省から来ているキャリアの処遇に気を遣いすぎだ。常に自分たちのディフェ
ンスが先に立つというか、自分の立場や厚労省との関係ばかり考えているのでな
いか」
野村
「今の理事長にも、今の常務理事の問題をいろいろ訴えても、聴く耳持たずで常
に擁護に回るそうだ」
若林
「財団は、(天下りを押し込むために無理やりつくったものではなく)ボランティ
アから出来上がってきたものなのだから、天下りは要らないけど補助金はもらう
よ、という交渉を理事長はすべきだし、皆さんもそう要求したらどうか」
野村
「全国協議会の運動方針に1項目入れるか」
東井
「私はそれが基本線だと思う。沈黙していても救われない。それにどうせ人生そ
んなに長くないんだから。やるんだったら気持ちよくスッキリ応援できるように
しないと。ちょこちょこやっても仕方ない。同じように、各省の所管法人へ天下
りが大勢行って、このご時世にどんなに少なくても年収1000万円ぐらいもらって
当たり前で通っている。そういう人は要らないと言えばいい。必要な人間なら押
しつけなくても声がかかる。公務員制度改革なんてやっているけれど、むしろそ
ういう声を上げることが改革の一歩なんでないか。やったら面白いと思う」
野村
「私は天下りそのものを悪いとは言わない。優秀な人だったら」
若林
「ゴチャゴチャ言わず、0か1かでないと世の中動かない」
野村
「たしかに20年間、期待通りに働いてくれた天下りは1人もいなかった」
若林
「国との連絡に必要だと言うなら、その日だけお願いして、日当3万円も払えば
十分」
野村
「時間もなくなったので最後に一言ずつ」
宮田
「公務員改革は上から叩きたかったんだけど猪瀬直樹が都庁に入って推進役がい
なくなった。82年の東大の入学式で筑紫哲也さんが『あなた方には特権が与えら
れている。その意味するところをよく考えておきなさい。イギリスでは戦争が起
これば、特権を与えられた人が真っ先に戦火の最前線に行くんだ。よく自覚して
おきなさい』という話を40分したことがあったけれど、この人は年次も違うし、
そういうノーブレスオブリージュとは無縁で来てしまった人なんだろう」
山崎
「今大事なのは、バンクをちゃんとするために頑張っていかないといけないとい
うこと」
若林
「皆さんがとても大事に思っているバンクにそういう人材をなぜ押しつけたのか、
背景には天下りが狼藉を働いて当たり前の彼らの常識がある。そういう人材は蹴
飛ばして追い出してほしい」
東井
「職場をよくしようと善意で動いた人を訴える。とても傲慢だし許せない。一人
ひとりがピュアな気持ちを継続すれば天が味方してくれる。きっと結果がついて
くる」
宮戸
「献血にしてもバンクにしても、お互いの命のやりとり。純粋なキレイなもの。
その中に今回のようなことが起きて悲しい。でも正しいことは正しいと貫き通す
勇気を持って進みたい」
 この日の集いを主催した全国骨髄バンク推進連絡協議会の大谷貴子理事長は、
先月11日に発足した『医療志民の会』の共同代表でもある。志民の会がどう動く
のか注目したい。
(この文章は、『ロハス・メディカルweb』4月27日付のニュースに一部加筆したものです)
http://lohasmedical.jp/news/2009/04/27002915.php

 

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