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vol 9 「保険適用を決めるのは役所ではなく国民です。」

医療ガバナンス学会 (2009年5月11日 10:18)


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鈴木寛


 先日、慢性骨髄性白血病の話を、患者の方々から伺いました。原因不明で誰で
もなる可能性があり、全国で8千人ほど患者さんがいらっしゃいます。
 以前は造血幹細胞移植しか助かる道がなかったのですが、2000年に登場し
て日本でも翌年から使われ出した薬「グリベック」で事態は一変。薬が効かなく
ならない限り何年でも健常者と変わらない生活を送れるようになりました。
 ところが、命の不安から解放された患者さんたちを別の悩みが襲っています。
この薬は1錠3200円強。やめると一気に悪くなる可能性があり、悪くなって
から飲んでも効かないため、ほぼ毎日4錠飲み続ける必要があります。健康保険
の高額療養費・多数該当という制度により軽減されますが、それでも薬代は毎月
44400円。年約53万円の支払いが一生続きます。このままでは生活苦、失業、
退職、子供の学費増等の理由で、飲むのをやめる決断をされる方も出そうだとい
います。
 この不況下、患者さんたちは、自己負担額が毎月1万円で済む厚生労働大臣指
定の「長期高額疾病」として認めてもらえないかと強く国に要望されています。
長期高額疾病とは、高額な治療を著しく長期間受けなければならない場合に認め
られるもので、今までにHIV、血友病、人工透析を行う慢性腎不全の3種類が
指定されています。
 しかし、厚生労働省の担当は「保険者の方々からの理解が得られないと思うの
で難しい」と断り続けています。
 グリベックの場合、世界標準の第一選択で、命を長らえるには生涯飲み続ける
必要があるのですから、明らかに指定の要件を満たしています。他の薬も、要件
を満たせば指定追加すればよいと思います。要件合致にもかかわらず、認めない
権限を、誰が厚労省の担当に与えたのでしょうか。
 指定による保険の負担増は総医療費の一万分の一以下です。しかも費用負担す
るのは厚生労働省ではなく、保険者と納税者である国民です。この30億円を払う
べきか払わざるべきか患者も含めた3者に直接問うたらよいのです。
 中医協を、そのような真剣な熟議の場として再編することを考えてもよい時期
ではないでしょうか。
著者紹介
鈴木寛(通称すずかん)
現場からの医療改革推進協議会事務総長、
中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員
1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。
教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。
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