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Vol.183 医療事故調査制度ガイドライン研究班会議概要を眺めて

医療ガバナンス学会 (2014年8月20日 06:00)


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衆議院議員
橋本 岳

2014年8月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

改正医療法における医療事故調査制度について、現在「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班」(研究代表者 西澤寛俊・全日本病院協会会長)の会議が行われ、現時点で第3回会議まで会議概要が厚生労働省のWebサイトにて公表されている。この研究班は厚生労働省が行うガイドライン策定に資するよう学問として実務的な検討を行う場とされている。医療事故調査制度について自民党内の議論に参加し、衆議院議員として成立に関与した身としては、どう具体化されるか深い関心を寄せている。これまでの会議概要を眺めて、いくつか感想を記したい。

1.届出基準について

今回の医療法改正により、医療事故が発生した場合は病院等の管理者は医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。ではどのような場合に報告しなければならないのか?第2回会議では、「平成16年の通知による分類に、モデル事業での具体的事例をもとにして整理すること」と考えられるとされている。 しかし改正医療法では、医療事故の定義がちゃんと示されている。何をもとに整理しても構わないが、改正医療法の定義に沿った基準が設定される必要があるのは論を俟たない。しかし法律に基づくとはひと言も会議概要に触れられないのは如何なものだろうか(この項目は、MRIC Vol.178『医療事故の法的定義―西澤研究班は改正医療法に造反する医療事故調ガイドラインを作るつもりなのか?」に井上清成弁護士が具体的に記しておられるので、細部はそちらに譲る)。
また事案決定プロセスのあり方について「遺族からの申し出については、(中略)管理者の判断につなげる仕組みを設けること」とまとめられているが、改正医療法における医療事故の定義には遺族の意志は特に含められていない。この点でも、法の定義に沿った具体化が求められるだろう。

2.解剖・Aiについて

第3回会議の会議概要では、解剖およびAiについてそれぞれ「必要な時に実施できるよう、体制整備を行っていく」ことの必要性がまとめに含まれている。しかし逆に言えば「未だ必要な時に実施できるような体制が整っていない」という認識が少なくとも西澤会長にはあるということであろう。まさに「泥棒を見て縄をなう」という表現が当てはまる状況だ。日本医療安全機構の提言によると、全国で年間1,400件~2,000件の診療行為に係る死亡事故発生件数と推計されている。法律が施行される来年10月までに突貫工事で解剖体制が整うとも考え難い。ガイドラインに「体制整備が望まれる」と書いてあっても医療事故発生時の現場の判断には全く無益だ。どうするのだろうか?
また現在行われているモデル事業では、解剖が受付の前提とされている。例えば平成25年度は受付件数24件に対し、相談されたものの受付に至らなかった事例が41件、うち「解剖の承諾が得られなかったため」10件となっている。解剖については遺族の承諾が一つのハードルであることは明らかだ。会議概要でも「遺族は解剖に対して抵抗がある」という出席者の意見が記されており、議論はあったようだ。しかしまとめには特にその点をどうするかは記されていない。そこを議論し方向性を出すことがガイドラインには求められているのだと思うのだが。

3.研究班の位置づけ

そもそも、会議概要の冒頭に示されている研究班会議の位置づけは「厚生労働省が行うことになっているガイドライン等の策定に資するよう、これまでの研究成果やモデル事業の実績などを踏まえつつ、学問として実務的な検討を行う場」となっている。一体ここでいう学問とは医学なのか法律学なのか「失敗学」的なものなのかそれとも霞が関文学(笑)なのか、イマイチ判然としないのだがあまり細かいことは気にしないことにしよう。ポイントは「厚生労働省が行うことになっているガイドライン等の策定」なのであって、研究班はあくまでもそれに資する検討を行う場という扱いだ。したがって、ここで議論されたことがガイドラインに反映されるかされないか、議論されなかったことがガイドラインに突然含まれるかどうか、これは厚生労働省の胸三寸ということである。
そもそも、医療事故調査の制度化は、平成16年に日本医学会基本領域19学会共同声明が出されて以来10年にわたる紆余曲折がある。多様な立場の関係者がそれぞれの関心に基づき議論に参加し続けており、この西澤研究班の構成もそうなっている。これをまとめるのは至難の業であり、その難事に臨む厚生労働省の苦心は如何ばかりかと同情するところもないでもない。しかし内閣提出法案として法律案を国会に提出し成立させたからには、相応の覚悟はあるのだろう。
上記の課題はぱっと眺めただけで思いつくものだ。他にもあるだろう。これらに対し、厚生労働省がどのような結論を出すのか、引き続き見守りたい。少なくとも法律に基づいた結論は出していただきたいものだ。
橋本 岳(はしもとがく):gaku@ga9.jp
衆議院議員/総務委員会理事・法務委員会委員・海賊テロ対策特別委理事
自由民主党 総務部会長代理、岡山県第四選挙区支部長
Web: http:///www.ga9.jp  blog: http://ga9.cocolog-nifty.com/blog/

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