医療ガバナンス学会 (2014年9月1日 06:00)
地域医療の危機、病院勤務医師の不足が叫ばれていますが、磐城共立病院の現状についてお知らせします。
当院の病床数は828床ですが、実際には717床しか使用していません。看護師の人数や医師数などによりすべてを稼働することはできないからです。病床利用率は運用病床数の80%前後ですが、インフルエンザなどの感染症や脳卒中、心筋梗塞などが増える時期にはほぼ100%近くまで病床を使うこともあります。
現在、診療科は25、その他に救命救急センターがあります。残念ながら腎臓内科、神経内科、呼吸器外科、皮膚科、放射線科、リハビリテーション科には常勤医はいません。新臨床研修制度が始まった平成16年は研修医が11名、以後、14名、13名と順調に推移し、総医師数も140名を超えていました。
平成19年に関連大学医局への内科医師引き上げがあり、研修医の応募が少なくなりました。震災の年は久々に研修医が13名きましたが、翌年は震災と原発事故の影響でしょうか、研修医はゼロ、今年ようやく8名の研修医がきて、常勤医、嘱託医をあわせて114名になりました。
震災の年を除いて毎年5000例以上の手術を行っています。
外科では胃がん、大腸がん、胆石症、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなどの手術を年間750から800例行っていますが、そのうち30%が低侵襲手術といわれる腹腔鏡手術です。整形外科では人工関節手術が増加し、また低侵襲手術である関節鏡手術も数多く手がけ、総手術数は毎年1000例を超えています。心臓血管外科はステントグラフト手術を導入、今年は経カテーテル的大動脈弁置換術TAVRという高度先進医療技術の実施施設基準をクリアし、全国32番目の実施施設となりました。福島県ナンバーワンの実績を誇ります。
脳神経外科では脳動脈瘤に対するコイル塞栓術などの血管内治療を年間50例ほど行っています。循環器科では、心筋梗塞、狭心症に対する冠動脈ステント治療、腎臓や下肢の動脈に対する血管内治療(PPI)を数多くこなし、東北地方でも一二を争う施設となってきています。
このように最先端の医療を取り入れ、さらには年間2万人の救急外来、4500台の救急車を受け入れています。救急外来には毎日外科系2名、内科系2名、小児科1名の当直医を配置し、救命救急センターには3名の救急当直医をおいています。また各診療科毎に1~2名待機医が決められていて、専門医の診療が必要な際にはいつでも駆けつける体制になっています。
当直医は皆、通常の勤務後当直体制に入り、翌日も平常通りの勤務を行います。つまり連続32時間以上の勤務を月に数回行わざるを得ない状況です。
赤字経営が問題になってきましたが、高度先進医療を取り入れ、効率の良い診療を行うことにより、ここ2年、経常収支は黒字に転じました。しかし、医師数はここ10年で25名ほど減少、研修医以外では内科医が13名減少しています。医師不足を解消しなければ今後の安定経営は難しいかも知れません。
人口10万人あたりの病院勤務医数は全国平均では147.7人ですが、いわき市は78.1人です。震災を契機に開業医数よりも勤務医数が少なくなり、我々勤務医にかかる負担は大きくなってきました。医師不足に対する有効な手だてはなかなか見つかりませんが、若手医師の確保が重要であると考え、関係大学医局への働きかけ、修学資金貸与制度の創設、学生実習の受け入れ、連携大学院、寄附講座などあらゆる手を使って医師確保を目指しています。
今後共立病院の診療に関しての情報をホームページや広報誌などでどんどん発信します。市民の医療を担う中核病院として全力を尽くしますので、ご理解、ご協力をお願いします。