医療ガバナンス学会 (2014年9月11日 06:00)
大阪教育大学
教育学部教員養成過程教育科学専攻教育学コース
3年 後神勇樹
2014年9月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
ときわ塾は、東日本大震災後における医師・看護師不足を背景に、働く親世代により働きやすい環境を。そして、地元を支える人材を育成していくという理念のもと経営を開始した。ここでは、朝7時から夕方7時頃までの時間、小学生の児童を病院内の教室で預かっている。私が参加させていただいたのは8時30分から18時までの時間である。時間割りは、昼過ぎまでを速算、速読、英会話を中心とした座学の時間とし、座学が終われば先生たちとのレクリエーションやスポーツの時間が18時頃まで続くのが基本のサイクルとなっているが、ときわ塾では大学生を中心に様々な立場に立つ方々が立ち代わり入れ替わり訪れるため、臨機応変に変動していく。今回は、私のほかに早稲田の学生や東京大学の院生、福島県の高校教諭である高村泰広先生などが訪れており、学生の作成した問題や高村先生によるわくわく理科実験、その他に拙いものではあるが私のカンボジアの話が時間割りに組み込まれていた。
このように、ときわ塾の一日は非常にめまぐるしく進んでいくのであるが、児童にとってここでの出来事は、すべて自分の夢の可能性を広げていく体験になっていると私は感じた。例えば、高村先生の理科の実験では、液体窒素を使った実験を行ったのだが、初めて液体窒素を使った児童たちも多かったようで、驚きと感嘆の笑みであふれていた。ときわ塾では1年生~6年生までそろっているためこの実験は1年生にはこの実験の内容は難しい。しかし実験自体の体験は非常に児童たちの記憶に残ったのではないだろうか。このような体験が、子ども達の心をつかみ、将来の進路の扉の数を増やすことができるのではないか、そう考えている私も教員を目指す身である。このような体験に目を輝かせている子ども達を目の前にすると、いくら学習指導要領に縛られているといえども小学校での授業のあり方を考えずにはいられなかった。
また、私たち大学生との出会いも児童にとってはよい体験となるそうだ。ときわ会の事務局長の神原章僚さんによると大学生との出会いが児童たちの夢を大きくしているとのこと。例えば、僕、東大に行きたい。ある児童が自分からそういったようだ。私自身、小学生のとき東大に行こうと考えたことがない。それは、おそらく私の身の回りに東大生というモデルが存在せず、東大生というものにリアリティーを感じることができなかったからである。一口に大学生といっても、様々な人たちがいる。東大に行った人や、東大ほどの大学ではないが自分の今いる場所で懸命に夢を追いかけている人など、その様々なリアルな大学生像を小学生のうちに目にすることができるのは少しばかり羨ましいことのように私自身感じている。
よい影響を与えているのは児童だけではない。私たち学生にとってもかけがえのない経験となっている。私の大学は、教育大学ということもあり、教員志望になる学生が過半数を占めており、様々な価値観を持った学生と交流し難いという面をデメリットとして抱えていると私は考えている。しかし、ときわ塾での活動を通して関わる人たちは教員志望の学生だけでなく、それぞれに違った道を歩んできた個性のある学生ばかりである。そのような方たちとのつながりを持てる場、そして普段の学生生活ではお会いすることができないような方とお話しさせていただける場を提供してくださることで私自身大きく成長することができたのである。
『本当の”学び”は人との出会いによって生まれる。』
ときわ塾の活動を通して私はそう考えるようになった。
ときわ塾での学習は、子ども達に目標を与える。子ども達の夢を広げていく。といった”教育の本質”的なところを的確についているのではないだろうか。それは、私自身この場所で学びたい、過ごしたいとときわ塾ですごした2日間で感じた体験による私の感想である。
大学生にとってこれほどの貴重な体験をさせていただけることは少ない。私は、いままで復興と言えば、がれき撤去などを思い浮かべることが多かったように思える。しかし、ときわ塾が位置するいわきでは、人と人がつながり、教育を作り上げていく私の知らない形の”復興”が存在した。どうか、がんばる子ども達が夢を叶えてほしい。また子ども達に会いたい。そう思いながらいわきを後にしたのだった。
ときわ塾の皆様本当にお世話になりました。一人でも多くの関西の学生に、このかけがえのない経験を還元できますよう努めて参ります。