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Vol.216 大阪が生んだ「イトマン」の水泳界における影響力 ~全国に広がる水泳強化の可能性~

医療ガバナンス学会 (2014年9月24日 06:00)


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金沢大学 人間社会学域
地域創造学類 健康スポーツコース3年
松原 亮

2014年9月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私は石川県にある金沢大学でスポーツ栄養を専攻としている学生です。小学校から大学までの水泳生活をすべて石川県で過ごしてきました。私は石川県の代表選手として中高と学生時代を水泳につぎ込み熱中していました。大学も地元の金沢大学の水泳部に入部し、つい最近の8月まで主将として熱い夏を過ごしました。この夏はパンパシフィック水泳選手権が行われ、日本人選手の活躍をテレビでご覧になられた方も多いかと思います。日本人の活躍が著しいということは、日本国内での戦いも激しくなっていると言えるでしょう。

私はこれまで物事の「歴史」や「経緯」について深く考えることがなかったのですが、そういったもののルーツを知るということはたいへん意義があることだと感じ、今回ズバリ「水泳が強い都道府県はどこか」ということを調査し考察することにしました。具体的には、高校生選手が最も力を入れて取り組むインターハイにおいて、各年(1981~2014)の男子100mの全種目(自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ)の優勝者の都道府県、並びに高校を調査し、各都道府県の人口(15~64歳の生産年齢期)から算出された数値をもとに比較をしました。

インターハイ優勝の数を見てみますと、最も多かったのは大阪府(29回)で、その大阪の中でも近畿大学付属高校は圧倒的な優勝回数です。その次に東京都(20回)、神奈川県(17回)と続きます。地域別に見てみると、優勝者の割合は近畿地方が最も多く、次に関東、九州、中部と続きます。水泳競技に関しては割と全国各地に優勝者がいるのですが、北部、四国などは少ないようです。中高の水泳部活動は、他の運動部活動と異なる点があります。水泳に関しては、それぞれの選手が部活動でのトレーニングではなく、それぞれのクラブチームでトレーニングを行っている選手が圧倒的に多いという点です。

つまり、水泳部での活動において、同じ高校の部員と試合でしか会わないということです。僕も中高とそういった環境でやってきました。高校の水泳部の先輩も後輩も違うスイミングクラブでした。高校での練習どころか、私の母校にはそもそもプールがありませんでした。石川県にも高校でトレーニングする学校もありますが、ほとんどの選手はクラブチームでトレーニングを行っています。それならどこの高校に行っても変わらないのではないか、水泳は個人競技なのだから。と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、水泳にはリレーがあり、それも3つもあります(400mフリーリレー、800mフリーリレー、400mメドレーリレー)。これらのリレー種目は各校の総合力と言い換えることもできると思います。このリレーというのは個人で出るレースより興奮しますし盛り上がります。また、高校全体が応援してくれるような環境であることが学生時代をそのスポーツに専念するうえで大変良い環境であると言えます。そういった点で水泳の強い高校に通う選手は多いです。

今回調べた結果、圧倒的に優勝回数の多かった大阪の強さを調べるためにスイミングクラブに着目してみました。関西地方で数々の素晴らしい成績を残しているスイミングクラブと言えば、イトマンスイミングクラブです。1964年に行われた東京オリンピックの水泳競技で日本勢が不振であったことから、翌年1965年に元ロート製薬代表取締役社長の山田輝朗によって山田スイミングクラブを設立。それを引き継ぐ形でイトマンスイミングクラブが誕生しました。イトマン事件によって独立した現在も全国で展開しています。世界大会出場者を多く輩出している名門校です。近畿大学と実質的なつながりがあり、ほとんどの選手が近畿大学の系列校に通っています。

イトマン事件があったのになぜイトマンスイミングクラブは強いのでしょうか。戦後最大の不正経理事件の後にもかかわらず。本来なら人気がなくなってしまうように思いがちです。そこで理念に注目したのですが、イトマンスイミングクラブは選手強化にかなりの重点を置いていることが分かりました。普通のスイミングクラブはお子さんの身体発達や礼儀、マナーなど、そういった所を目的としているところがほとんどではないでしょうか。親御さんもそう思って通わせていることが多いように思います。最初から選手にしようという風に考えている方は少ないのではないでしょうか。また、水泳は生涯スポーツ。老若男女が行うことができるという点で人気なスポーツです。小さいころから始められるので、幼少期は水泳、そして大きくなったら他のスポーツへ、といったケースもよく見られるようです。そういった多様なニーズがある中でも選手強化に重点を置いている点がイトマンスイミングクラブの強さの要因の一つなのではないでしょうか。

しかしここ最近の競技結果を見てみると、大阪の強さが圧倒的であるというわけでもないように思えます。全国各地で優勝する選手も増えてきました。パンパシフィックで個人メドレーで金メダルを獲得した萩野選手は栃木県出身、バタフライで金メダルを獲得した瀬戸大也選手は埼玉県出身です。やはり情報社会なので、日本のどこにいてもコーチングの技術やテクニックを磨けるのだと思います。その一方で、やはり昔からの強豪校は未だに強い印象を覚えます。そういった所をみると、指導者だけでなく、練習環境や雰囲気が重要であるということが言えるかもしれません。

元早稲田大学ラグビー部の監督を務めておられた中竹竜二先生の勉強会に幸運にも参加させて頂いた際、「100m走を速く走るにはどうしたらいい?」というなんとも興味深い質問が飛び出し、中竹先生はこの問いに対して、「120mを走るつもりで駆け抜ける」ことが良いと仰っておられました。人間はゴールだと思うと自然と失速をしてしまうようです。そこで中竹先生のご厚意で、「100m平泳ぎを速く泳ぐにはどうしたらいい?」という質問が出ました。陸上と同じようにというわけにはいかないと思うのですが、今回の勉強会のテーマである~リーダーシップからフォロワーシップへ~を聞かせて頂いて自分なりに導き出した答えは「周りを速くする」です。水泳は意外と隣のレーンも見えますし、なにより高いレベルの選手と切磋琢磨していくことが競技力向上に大きな影響があるのではないでしょうか。だから名門クラブを求めて強い選手が集まるのではないでしょうか。しかし先ほども言いましたが全国各地の選手が強さを発揮しており、全国に名門クラブが広がってきています。

今年行われたパンパシフィック水泳選手権では日本チームは過去最高のメダル数(19)でした。東京オリンピックに向けて水泳競技はこれからますます期待できるスポーツです。それに伴って日本国内でも優勝者の割合も変わってくると思うので、さらに追跡していきたいと思います。また東京オリンピックに向けて、若手スイマーがこれからどんどん力をつけてくると思います。そういった素質のある選手は全国にいるのに、良い環境に行くことができないからトップになれないといった選手を一人でも少なく出来るような工夫を考えていきたいと思います。

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