医療ガバナンス学会 (2014年11月26日 06:00)
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(参加申込宛先:http://medg.jp/mt/?p=2885 )
2014年11月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
2014年12月13日(土曜日)
【Session 02】10:30-12:00
●都市部の医療
黒岩祐治
神奈川県は今、超高齢社会を乗り切る神奈川モデルを作るべく、ヘルスケア・ニューフロンティアという取組みを進めている。超高齢化の進み方が早いというのは、全国の都市部における共通の課題であろうが、神奈川県はそのスピードがどこよりも早い。今のままの態勢でいれば、早晩、病院は機能を停止し、皆保険制度は崩壊し、医療そのものが成り立たなくなるだろう。そんな危機意識から、ドラスティックな転換作業に取り組んでいるところである。
そのために、我々は最先端の医療・技術を追求するアプローチと、未病を治すというアプローチを融合させながら、健康寿命を伸ばしていこうとしている。つまり、病気を治す医療から、病気にならなくする医療への転換である。「未病を治すかながわ宣言」では、食・運動・社会交流を三本の柱に据えた。
未病を治すとはもともとは中国伝統医学・中医学の言葉であるが、我々はそれを現代風に解釈し、科学的な眼でとらえなおそうとしている。日常の生活の現場から、未病状態をさまざまなセンサーでチェックし、個人個人の未病を治していく。大衆をいかに動かすか、それは壮大な実験でもあるが、インセンティブを設けるなど、あらゆる知恵を総動員しながら、県民運動を展開している。
この試みに取り組む神奈川県全域が国家戦略特区に認定されたことを受け、我々はアジア、アメリカ、ヨーロッパとの国際的ネットワークの構築を進めている。国際的なダイナミズムを導き入れることより、日本の医療そのものの変革にもつなげようとしているのである。また、課題を乗り越えるプロセスそのものが、経済のエンジンを回す成長戦略にもなるはずである。世界の超高齢社会を救う神奈川モデルに注目いただきたい。
●大阪(関西)の医療
岡本雅之
大阪だけではありませんが
次の7つが、医療の現場に暗い影を落としています。
① 超高齢社会
② ①に伴い、生活保護の増加
③ 財政難で 医療費締め付け
④ 医療・介護の連携不足
⑤ 介護施設の乱立と人材難
⑥ 行政の介入による事務量増加
⑦ 患者の要求増加と スタッフの疲弊
①〜⑦の影響をまともに受けたAさんは
生きているのが辛いです。
Aさんは若い頃は 小さいながらもスーパーマーケットを経営して羽振りの良い時もありました。しかし消費税導入後は商売も立ち行かなくなり 年金もあまりない為に生活保護を受けています。70歳の今 高血圧、難聴で物忘れをするようになり また両下肢の軽度麻痺もあるので在宅生活を送る為に介護認定を受けました。
要支援1しか 出ませんでした。生活保護では薬局は一件に限定されジェネリックしか貰えません。医療機関受診も月二回に限定されています。財政難が生活保護者に医療を受けにくくしています。看護師の言動も冷たく感じます。70歳のくせに、といった風にです。超高齢社会では仕方ないと諦めぎみです。介護施設が沢山ありますが引越し費用が無く入れてません。万一上手く有料老人ホームに入れても 医療機関が引き揚げる施設も多くなってきて安住の地とはいえません。職員の出入りが激しく、倒産する所も出る始末です。保護費で入れる特養は要介護3以上です。介護認定が厳しくとても申し込めません。医療・介護の連携もギクシャクしていて福祉担当の方も困っています。
しかし、最近 なぜか?と思っていた疑問が解けました。医療機関に対する 患者の要求の増大で医療機関はその対策に人員を投入しなければなりません。介護との連携に力を入れられないのです。また、行政への必要な書類提出の増加が医療機関を身動き出来なくしているのです。ビックリする位、同意書などを書かされるのもその為なんですね。何とかならないのでしょうか? 悩める老人 A より。
●社会の変化と米国医療の変化
大西睦子
私は、約8年間、米国ボストンに在住し、研究、留学や日常生活を送ってきました。その間、様々な米国社会の変化や、それに伴う医療の変化を経験してきました。特に、中絶、尊厳死、同性結婚やマリファナは、米国人の自己決定権として、急速に変化してきた社会の問題です。これらの問題に対して、各州は、それぞれの法律を制定しています。
例えば、2004年、米国初に、マサチューセッツ州で同性結婚が合法化されました。その後合法化が急速に広がり、現在32州とコロンビア特別区において合法化され、連邦政府も容認しています。この合法化により、配偶者に保険や医療委任状などの権利が与えられます。医療用マリファナは、がんによる痛み、食欲低下や治療の副作用、HIVやエイズの様々な症状、腰痛や慢性疼痛の緩和などに処方されています。1996年にカルフォルニア州で始めて合法化され、現在23 州とコロンビア特別区において合法化されました。連邦政府は違法としていますが、将来合法化する可能性もあると思います。
米国では、終末期医療が大きな問題です。リビングウィルは、患者の人権として、現在ほとんどの州で合法化されています。現在、医師による自殺幇助が問題ですが、5つの州で合法化されています。また、1973年、ロー対ウェイド判決で、米国最高裁判所により、中絶が合法化されましたが、各州は、独自の規則や規制を定めています。ミシシッピー州では、中絶クリニックが減少し、州に一つしかありません。
さらに、医療技術や科学研究の進歩は著しく、その医療への応用も進化し続けます。例えば、最近の話題は、新型出生時診断や遺伝子スクリーニングです。倫理、政策、将来の有用性などの問題が、さかんに議論されています。今後、これらのデータを蓄積し、研究者が、将来の病気の診断、治療や予防、薬の開発に使用できる可能性があります。
●小児の在宅医療の充実を目指した地域医療連携の整備
康井制洋
医療の高度化によって超低出生体重児や小児がんをはじめとする難治性疾患の救命率が向上し、小児医療の現場に著しい変革がみられている。なかでも医療機器の使用や医療処置をしながら自宅で療育する在宅医療患者や外来化学療法を継続しながら地域で生活する小児患者の増加は、新たな小児医療の展開を象徴している。当センターにおいても、人工呼吸療法や在宅酸素療法、胃ろうや経管栄養、自己注射などの在宅医療を行いながら通院加療を続ける小児が著しく増加した。
長寿社会の到来による高齢者の在宅医療環境の整備が進むなか、成長・発達期にある小児では、年齢や発達段階に則したライフスタイルを確保しながら療養を継続することが必須である。急変しやすい小児期患者の診療に応需可能な在宅診療訪問医の絶対的不足、小児看護の経験のある訪問看護ステーションや利用できる介護保険サービスの未整備、成人期の在宅医療にはみられない教育環境の確保、病児や兄弟保育施設の利用、家族支援のためのレスパイトサービスなど、地域資源の有効な活用には新たなノウハウの開発とシステム構築が必要である。安全で安心な小児の在宅医療の確保のためには、終末期医療を見据えた高齢者医療の在宅医療とは本質的に次元の異なるさまざまな解決されなければならない課題がある。
現在、われわれは神奈川県小児在宅医療拠点事業を展開中である。住み慣れた自宅で家族とともに暮らす完結型の医療・福祉・介護・地域社会の連携の推進には、高度医療を担う小児拠点病院や地域におけるサービス機関がともに課題解決型の意識改革が必要である。地域と医療機関との間の情報共有システムの導入にともなう課題、高齢者医療におけるケアマネージャに相当する地域コミュニティや教育現場と福祉と介護を繋ぐ社会横断的なガバナンスの整備など、課題解決と担当部署の負担軽減に必要な事項について考察し、整備すべき連携体制について提言する。