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Vol.271 現場からの医療改革推進協議会第九回シンポジウム 抄録から(3)

医療ガバナンス学会 (2014年11月28日 06:00)


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(参加申込宛先:http://medg.jp/mt/?p=2885 )

 

2014年11月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2014年12月13日(土曜日)

【Session 03】13:15-14:30
医療イノベーション

●心理学的アプローチによるイノベーション創出
森 勇介
我国においては、医療分野等、異分野連携が不可欠な分野でのイノベーション創出や成果のビジネス展開がなかなか進まないということが問題視されています。米国との比較で原因とされていた政府の支援体制など政策的な問題が取り上げられたりしていますが、実際に異分野連携やベンチャー起業に携わってきた経験から、日本の文化、教育システムにも大きな原因があるのではないかと思うに至りました。そのきっかけとなったのは、2001年に心理学者(サンフランシスコ州立大学・田中万里子名誉教授)に出会い、「トラウマ(Trauma:心的外傷)」が日本の問題の多くに関係しているということや、トラウマは心理学的に解消できるというお話を聞けたことです。一般的にトラウマは、いわゆる非日常的、特殊な場面で受けるものと一般的には考えられていますが、日常の生活の中での「怒られた」や「嘲笑された」など、一見軽い出来事でもトラウマになることがあるそうです。特に幼少期には、叱責や嘲笑により、「自分は駄目な人間だ」、「好きなことをしたら怒られる」などの思い込みが形成され易く、このようなトラウマが強く残っていると、イノベーション創出やベンチャー起業等に最も重要となる、創造性や自主性、挑戦心が抑制され、コミュニケーション能力も低下してしまいます。
私もトラウマの影響で自分自身に自信が持てず、コミュニケーションも苦手でしたが、トラウマを解消することで、行動パターンが大きく変わりました。その結果、異分野連携により自分の専門分野(エレクトロニクス)とは異なる創薬支援のためのタンパク質結晶化ベンチャー⑭創晶の起業や医工連携による人工関節の開発等、それまでの自分では想像できなかったことが実際に実現しています。やはり、イノベーション創出を実行するのは人間ですから、その人間の活性化が最も重要との思いに至り、2013年にはイノベーション創出を活性化するベンチャー⑭創晶應心を設立いたしました。

 

●遺伝子検査ビジネスは「疫学」か「易学」か
大江紀洋
DeNA、ヤフーがサービスを始め、今後ソニーなどの参入も噂される個人向け遺伝子検査サービス(DTC)。健康志向の高所得ビジネスパーソンを中心に着実に広がりを見せつつある。
利用者の多くは共通して、女優アンジェリーナ・ジョリーの乳房切除のニュースをきっかけとし、「人間ドックで受けるような検査項目に加えて、病院ではみてくれない体質もわかって3万円は安い」という印象を抱いて検査キットを購入している。医療機関で提供される遺伝子検査とDTCの違いを理解できている人は少ない。
米23andMeに対する米食品医薬局(FDA)の販売停止命令もあって、日本の事業者は、遺伝要因の影響が強い疾患項目を外すという自己規制を行っており、現状のDTCはいずれも「治療方針に影響を与えない検査」に過ぎない。これまでも多くのDTCサービスが存在したが、DeNAは東京大学医科学研究所と組むことによって、「科学的に信頼できそう」というイメージを形成し、頭ひとつ抜きん出ることに成功した。
「フルゲノム解析のビッグデータでオーダーメイド医療を行い医療費削減」そんな未来がよく語られるが、現実に起きているのは、医療手前の「ヘルスケア」の分野で、いかに〝遺伝子〟というワードを使って消費者に訴求するかという、あれやこれやのマーケティング戦略である。一方でシークエンス技術はますます発達し、エピジェネティックスなどの新領域の研究も盛んに進められている。遺伝子検査が医療に与える影響は大きくなることはあっても小さくなることはない。科学技術の急速な進化とその成果を手早くマネタイズするビジネスの勃興に、リテラシーや社会的受容が追いつかないのは、他のさまざまなサイエンス分野と共通している。
取材時の裏話なども交えながら、遺伝子検査の現状について報告したい。遺伝子検査と医療の未来について活発な議論ができればと考えている。
●医療イノベーションの多面性
菅野純夫
次世代シークエンサーの発展により、ヒトゲノム解析のコストダウンが進むと同時に、様々な研究成果が上がり始めている。特に、遺伝病の原因変異と対象遺伝子の同定や、がんの体細胞変異のカタログ化などは著しい進展を示している。一方、このような次世代シークエンサーの技術とそれがもたらす基礎医学研究の成果は続々と臨床の現場で使われ始めている。日本でも1年前に導入され大きな話題となった新型出生前診断が、次世代シークエンサーを使って行われていることはよく知られている。さらに、臨床診断ではなく遺伝子診断により遺伝病の診断を網羅的につけようといった研究も米国で始まっている。多種類の分子標的医薬の使用を治験中のものも含めて、がんのゲノム解析を行って決定し、治療を行っていこうという試みも行われている。
一方、日本では大手インターネットサービス運営会社DeNAが、本年、直接消費者向け遺伝子検査サービス「マイコード」を立ち上げると発表し注目を浴びた。同様のDTC遺伝子検査サービスはyahooやgoogle等が出資する23andMeも行なっており、日本のネット企業もそれにいよいよ参入か、と関連業界では大いに話題になった。小規模なDTC遺伝子検査は化粧品や健康食品分野でその会社の製品に付加価値をもたらすアイテムとしての利用も広まっている。ただ、日本では最新の科学の成果を応用に移す動きは米国に比べおそく、ゲノム分野では米国に対し2年程度の遅れがあるように感じられる。昨今の日本のDTCブームについても、米国では数年前にブームが進行し、現在は規制当局との話し合いを行っている状況である。この話し合いが一応の結論を得れば、現在とは若干異なった形でのDTCが始まるのではないかと考えられる。ともかくも、今、ゲノム解析が世界の医学研究分野で熱いと同様に、DTC遺伝子検査が日本のビジネス分野で熱いのである。
個人のゲノム情報が個別化医療をもたらすと長い間言われてきたが、その医療の枠を飛び越えて、個人のゲノム情報が、直接消費者に伝えられる時代になりつつあるといえる。このことは、ゲノム情報の管理・利用に関する従来の医療中心の枠組みを、DTC遺伝子検査などを取り込んだ枠組みに変化させていかなくてはならないことを意味している。本講演では、主として技術面から考察を行い、枠組みを構築していく上で考慮されなければならない点を明らかにしたいと考えている。

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