島根県では以前から離島・中山間地域において医師不足に悩まされていましたが、近年では都市部の中核的な病院でも深刻化しています。また、産科や外科などの特定の診療科での医師不足も起こっております。
そういった医師不足に対して、島根県は全国的にも早い時期から医師を「呼ぶ」「育てる」「助ける」を3本柱に取組んでまいりました。
その中で今回、島根県における医師を「育てる」対策、地域医療を担う医師の育成などについて紹介します。

島根大学医学部においては平成18年に、県内の過疎地域で生まれ育ち、将来その地域の医療に貢献する強い意志のある者への「地域枠」推薦入試が開始され、同時に学士入試制度の中にも「島根県枠」が置かれました。以後推薦入試制度の中に「緊急医師確保対策枠」が、一般選抜入試制度の中に「県内定着枠」が設置されました。現在ではこれらの入学枠（以下「しまね枠」）で一学年25人の新たな学生が誕生します。

島根県では医学生に対する奨学金制度を平成14年に創設し、その後島根大学「地域枠」推薦入学者などを対象とした奨学金制度を設けました。これは一定期間、県内の医療機関で勤務すると奨学金が返還免除となるものです。現在までに、264人の医学生に貸与しています。このうち69人がすでに医師となっており、来年度以降についても毎年度20～30人前後の者が新たに医師となる見込みです。

「しまね枠」入学者や奨学金の貸与を受けた医学生など地域医療を志す人材の育成などを目的として、平成22年に島根県の寄附による「地域医療支援学講座」を島根大学医学部に開設しました。「しまね枠」の医学生等に対して、定期的な面談や出身地域関係者との意見交換等を通じて継続的にコミュニケーションを図っています。また、地域医療機関に勤務する医師を招いて体験談等を聴く等の「地域医療セミナー」を定期的に開催するなど、地域医療への関心を高める取組みを実施しています。さらに、春季・夏季には自治医科大学の医学生等と合同での地域医療実習を実施し、医学生同士が交流できる機会を提供し、地域医療に対する目的意識の醸成やモチベーションの維持を図っています。

島根県では前述の医学生を対象とした奨学金制度に加えて、平成22年から将来県内医療機関で勤務する意欲のある研修医等を対象とした研修支援資金制度も創設しました。「しまね枠」入学者や奨学金、研修支援資金の貸与を受けた医師の累計は、現在114人、平成30年度には約240人となる見込みです。

今後増加する若手医師の県内定着に向けた取組みを強化する必要があり、平成23年8月に「しまね地域医療支援センター」を設置しました。さらに、“オールしまね”で取組むため、島根大学、県内医療機関、医師会、市町村、島根県を会員として平成25年3月に一般社団法人化し、同年８月中には、島根大学医学部内に「しまね地域医療支援センター」や島根大学の関係部門などが入る建物が整備されました。本センターでは、若手医師が島根県に軸足を置きながら認定医や専門医等の資格が取得できるよう、キャリア形成を支援します。具体的には、本人の目標や希望について気軽に相談できる体制を構築し、県内医療機関の状況等を情報提供し、医師一人ひとりが10年程度のキャリアプログラムを作成します。また、地域医療機関での研修体制の充実支援や研修機会の提供も行っており、今年４月には県内の臨床研修病院で研修を始めたほぼ全員の研修医が参加した「しまね初期臨床研修医合同研修会」を開催し、医師としての自覚を高めるとともに同期としての連帯感の醸成を図りました。そのほか、大学・医療機関の情報発信による研修医の確保、ワークライフバランスの推進などの事業を行っています。

http://www.allshimane.jp/

こういった取組みを通して関係者の連携体制をさらに強化し、若手医師がキャリアアップ・スキルアップできる体制を整備し、島根県の地域医療が充実していくよう一層努める所存です。

連絡先
〒690-8501 島根県松江市殿町１番地
島根県健康福祉部　医療統括監　木村清志
TEL（0852）22-6683　FAX（0852）22-6040
E-mail kimura-kiyoshi@pref.shimane.lg.jp
木村清志
昭和56年自治医科大学卒業後、離島や中山間地域等で地域医療に従事。平成９年県立中央病院総合診療科部長、現在同病院副院長を兼務。平成１５年からは、県健康福祉部において医師の招聘や育成等に取り組むほか、（一社）しまね地域医療支援センター副理事長も務める。