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vol 18 「ハーバード公衆衛生大学院より」

医療ガバナンス学会 (2008年9月20日 11:49)


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林 英恵(はやし はなえ)


 コミュニケーションと公衆衛生、そして医学。この3つのつながりを見つけ、そして掘り下げるために、ボストンにあるハーバード公衆衛生大学院での勉強を決意した。受験を決意してから2年の月日が経過していた。
今回は、ボストンから、大学院に関してレポートしていきたいと思う。まず、このMRICでも、先に石川善樹さんが以下の通り大学院の入学式に関してレポートしている。

http://mric.tanaka.md/2007/03/22/vol_5_1.html

来年から、学長にメキシコの厚生労働大臣をつとめ、また世界保健機構(WHO)などでの国際保健に関する経験が豊富なJulio Frenk氏が就任する。今回は、現在の学長でもあるBarry Bloom氏が担当する最後の入学式ということで、彼が大学で行ってきたことの総括や、今回の新入生に期待することについて、彼を含む大学院の教授ら何人かが”Identify personal passions and priorities(自分の情熱と優先順位を心得ておこう)”と題し、スピーチを行った。
【21世紀に達成したい公衆衛生分野の目標】
今年の新入生535名(学位取得者のみ。研究者除く。)が一堂に会した講堂で、まず、学生に投げかけられたのは、「20世紀に公衆衛生が果たした最大の貢献は何か」ということだった。周りの人と話し合って答えを述べるように言われる。ワクチンの普及や安全な水の提供、等などがあげられた。
そして、次の質問が冒頭にもある”21世紀に達成したい公衆衛生分野の目標”とは何かということについて。周りの人との話し合い終了後、何人かが手を挙げて発表をする。
- HIV/AIDSの撲滅
- 慢性疾患患者の減少
- 食による健康増進
- コミュニケーションによる予防活動の発展
- 健康格差の減少
- アルコール、たばこ問題の解決
等が発表される。
そして、その後待ち受けていたのは、教授の重みのある一言であった。
「そういうわけで、今君たちが挙げてくれた問題は、君たちの手で解決するんだ。我々は、君たちのリーダーシップを期待しているよ」
深く考えずに「こんなことできたらいいな!」とか、「これが解決されたらいいな」という気持ちであれこれあげていた学生たち(私も含む)は、入学式で改めて自覚することとなる。私たちは、今、私たちが直面している公衆衛生の問題を解決するために来たんだと。
【公衆衛生とは何か】
その後、教授陣のユニークなスピーチが続く。
「君たちが、大学院に合格して、親戚一同喜んでいることだろう。きっと、次のサンクスギビングの連休などに実家に帰って、”公衆衛生を学んでいるんだ”と言ったら、ほぼこんな反応が返ってくるだろう。
親戚の人”公衆衛生やってるんだって?”
学生”うん!”
親戚の人”すごいねえ~”
学生”ありがとうございます”
親戚”ところで、公衆衛生って何だね???”
学生”!”
こんな時、君ならなんて回答するかい?専門家に説明するのではないんだ。公衆衛生や医学など何もしらない人たちに、一言で公衆衛生は何かと聞かれたらどう説明する?
ここでまたディスカッションとなる。何人かの学生の発表の後、その教授は昨年のものを引用して興味深い内容を発表してくれた。中でも私が素晴らしいと思ったものは二つ。
What is Public Health?
- Science and Art of preventing disease (病気を予防するための科学とアート)
- Saying your health is our concern (あなたの健康は私の関心事です ということ)
正解はない。それぞれがそれぞれに回答を持ってよい。石川さんのレポートにあるように、医学との違いを含め、公衆衛生とは何なのか。自分の書いた回答と、卒業するころの回答を比べてみたいと思っている。
(すべて引用は2008年ハーバード公衆衛生大学院入学式でのスピーチより)
【学生のバックグラウンド】
最後に、今年入学した学生のバックグラウンドについて紹介したい。
2008年の入学者は全部で535名(研究者除く。博士課程と修士課程の両方を含む)。
そのうち、アメリカ合衆国出身者が336名、残りの199名が留学生である。国別内訳は、43カ国中、カナダ40名、中国23名、インド20名、ナイジェリア20名というのが多い国のトップ4。日本からは10名が入学した。日本からの入学者は、今年はすべて修士課程に在籍する。
(文章中の引用はすべて2008年8月25日に行われたHarvard School of PublicHealth Orientation中のプレゼンテーション)
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私が在籍するのは、The Department of Society, Human Development and Healthという学部で、こちらで4学期(通常2年間)かけてヘルスコミュニケーションを専攻することとなります。私が冒頭の21世紀の公衆衛生の役割としてあげたのは、コミュニケーション活動による慢性疾患と感染症の大幅な予防。日々の学びを今後もボストンからレポートさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。
林 英恵(はやし はなえ)
早稲田大学社会科学部卒業。ボストン大学教育大学教育工学科修了後、株式会社マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンにて、アソシエイトプランナーとして勤務。2008年秋より同社のサポートを得てハーバード大学公衆衛生大学院修士課程(ヘルスコミュニケーション専攻)進学。

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