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Vol.042 コーラ、黒ビール、ソースにも? カラメル色素の発がん性とは

医療ガバナンス学会 (2015年3月4日 06:00)


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この原稿は日経トレンディネットより転載です。
(イラスト画像を含むオリジナル記事はこちら↓)

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150226/1062887/?n_cid=nbptrn_top_2dan

内科医師
大西睦子

2015年3月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


◆がんの原因になるって本当? コーラなどのカラメル色素

「コーラは糖分を摂りすぎるから注意」という話はよく耳にすると思いますが、コーラなどに使われている「カラメル色素」が、がんの原因になるという噂を聞いたことはありませんか?
2015年2月18日、米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生学のキーヴ・ナックマン教授らのチームが、カラメル色素とがんのリスクに関する報告を、科学雑誌「PLOS ONE」で発表しました。

■参考文献
PLOS (Public Library of Science)「Caramel Color in Soft Drinks and Exposure to 4-Methylimidazole: A Quantitative Risk Assessment」

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0118138

発がん性は確かなのか、ナックマン教授らの報告を解説する前に、まずはカラメル色素について説明したいと思います。世界保健機関の外部組織である国際がん研究機関(INTERNATIONAL AGENCY FOR RESEARCH ON CANCER:IARC)の資料を参考に見ていきましょう。

■参考文献
IARC「4-METHYLIMIDAZOLE」

http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol101/mono101-015.pdf

◆しょう油やソースなどにも使用されてきたカラメル色素

カラメル色素と呼ばれているものには、「カラメルI」「カラメルII」「カラメルIII」「カラメルIV」の4種類があります。
ブドウ糖や砂糖などの糖類やデンプンの加水分解物、糖蜜などを加熱処理して得られるもので、製法の違いで4種類に分けられ、色はいずれも同じような褐色です。色素というだけに、その色が添加物として、例えばお菓子や清涼飲料水などに利用されています。また着色の他に風味付けの効果もあるので、昔からしょう油やソースなどにも使われてきました。
カラメル色素のうち、発がん性が問題になっているのは2種類です。もっと言えば、両者に共通している色素成分「4-メチルイミダゾ-ル(4-methylimidazole:4-MEI)」が発がん性の噂の張本人です。4-MEIは主に、コーラなどをカラメル色(こげ茶色)にするために使用されています。

◆自然色でも合成着色料でも「着色料(カラメル)」「カラメル色素」と表示される

IARCの資料によれば、食品への使用が許可されている色素添加物の約95%をカラメル色素が占めています(重量換算)。
FAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA)と、欧州食品安全機関(EFSA)による、食品添加物としてのカラメル色素I、II、III、IVの分類によれば、カラメルIは昔ながらの方法で糖類を加熱して作られるものを指します。これに対しカラメルII~IVは工場で、砂糖だけでなくアンモニアや亜硫酸塩等を加え、高圧・高温下で化学反応を起こさせて製造したものです。
さらに細かく見ていくと、カラメルIIは、糖類と亜硫酸化合物を加熱して作られますが、アンモニウム化合物は使用しません。カラメルIIIは、糖類とアンモニウム化合物を加熱して作られ、亜硫酸化合物は使いません。カラメルIVは、糖類に亜硫酸とアンモニウム化合物の両方を加え、加熱して作ります。
つまり一口にカラメル色素と言っても、このような違いがあるのです。しかしながら米国ではカラメルIのような自然色であっても、カラメルII~IVのような合成着色料であっても、「着色料(カラメル)」または「カラメル色素」と記載され、表示上の違いはありません。これは日本でも同じです。
区別しなくても問題がなければいいのですが、そうもいきません。砂糖とアンモニアの化学反応によって、4-MEIが生成されることが報告されているからです。

◆清涼飲料などに使われるカラメルIVの生産量はカラメル色素の約70%

糖類とアンモニアを高濃度、高温、かつ水分が多い状態で長時間反応させると、4-MEIの量が増加します。先述の通り、カラメルIIIとカラメルIVは製造過程で糖類にアンモニアを加えています。
ではカラメルIIIが何に使われているかというと、一般的にはパンなどのベーカリー製品、ソース類、スープ類、酢やビールなどで、米国ではカラメル色素総使用量のうち20~25%を、欧州では約60%を占めています。
カラメルIVは清涼飲料やペットフード、スープなどに使われていて、世界中で生産されるカラメル色素の約70%を占めているのです。
では、カラメルIIIとIVに含まれる4-MEIは、本当に発がん性があるのでしょうか?

◆4-MEIの発がん性…人間のデータはまだないが、マウスの場合は増加する?

今のところ、ヒトにおける発がん性を示すデータはありません。
ただしマウス(いわゆるハツカネズミ)による2年間の発がん性試験の結果は出されています。
この試験では、オス50匹とメス50匹に、4-MEI(純度は99%以上)を0ppm、312ppm、625ppm、1250ppm(Parts Per Million/100万分率の濃度)のいずれかを含む餌を、それぞれグループに分けて106週間与えました。その間、雄雌マウスが摂取した餌の量は、比較対照群すべて、ほぼ同じでした。
この結果、濃度を問わず4-MEIを投与(摂取)したメスのすべてのグループと、4-MEIを1250ppm投与(摂取)したオスのグループは、肺胞および細気管支腺腫の発生率が著しく増加しました。また、1250ppmを投与したオスのグループと、625ppmおよび1250ppmを投与したメスのグループは、肺胞や細気管支腺への腫瘍あるいはがんの発生も増加しました。
ただし、メスの肺胞/細気管支がんの発生率は、統計学的には意味のあるものとは言えませんでした。

◆マウスより体の大きなラットだと?

マウスだけでなく、雌雄各50匹のラット(マウスより一回り大きいネズミ)を使った2年間の発がん性試験も行われています。
マウス同様、4-MEI(純度99%以上)を含む餌を106週間与える試験でしたが、マウスとの体格差を加味してオスの餌の4-MEI含有量は0ppm、625ppm、1250ppm、2500ppmの4群とし、メスの餌の場合は0ppm、1250ppm、2500ppm、5000ppmの4群としました。
ラットの場合、メスの5000ppm投与群は、摂餌量自体はほかのグループに比べて比べて少なめでしたが、特定の白血病の発生率がほかのグループに比べて高くなりました。その白血病は、この試験で使用された種のラットでは一般的な疾患ですが、4-MEIにさらしたことで悪化した可能性があります。メスの5000ppm投与群は、この白血病の発症までの平均が256日で、ほかのグループのメスが平均624日だったのに対し、368日も早かったのです。
以上のことが、動物実験としてではあるものの、4-MEIの発がん性についての十分な証拠と見なされています。よって現在、人間に対する発がん性の報告がなくても、IARCは4-MEIを「人間にとって発がんの恐れがある物質」に分類しています。

◆実は高い!? 商業用カラメルIII、IV色素製品の4-MEI濃度

JECFAとEFSAによる基準では、カラメルIIIとカラメルIVに含まれる4-MEI濃度の最大レベルは250mg/kg以下に制限されるべきとされています。
ある調査では、商業用カラメルIII色素(着色料)のうち40製品の4-MEI濃度は5~184mg/kgで、JECFAのガイドラインを満たしていました。ところが他の研究ではより高い濃度も報告され、最高値は463mg/kgでした。また報告によれば商業用カラメルIV色素からは、概してより高い濃度の4-MEIが検出されており、90製品の4-MEI濃度が112~1276mg/kgの範囲で示されました。

◆カリフォルニア州では1缶当たりの0.029mg超えで“がん警告表示”義務

食事から摂取したカラメル色素が体外に排泄されるまでの期間、その人の体はカラメル色素にさらされている状態となります(「暴露」と言います)。ヨーロッパ11カ国での分析データによると、1~10歳の子どもが食事からカラメル色素を摂取した場合に推定される暴露の中央値は、カラメルIVが1日あたり4.3~41mg/kg、カラメルIIIは32~105mg/kgでした。
また日常的に摂取する可能性のある加工食品や飲料の4-MEI濃度を測定したところ、黒ビールが1.58~28.03mg/kg、コーヒーが0.3~1.45 mg/kg、炭酸飲料が0.30~0.36mg/Lでした。別の調査では、最大レベルがウスターソース(最大3.4mg/kg)および醤油で調理した食品(最大3.2mg/kg)という結果が報告されています。
米国では、コーラなどカラメル色素を使用した清涼飲料水が多く売られています。カリフォルニア州では清涼飲料水の4-MEIのレベルを1缶もしくは1ボトル当たり29μg(=0.029mg)までとし、それ以上の場合は、がん警告の表示を法律で義務付けました。それ以上の4-MEIを含んでいると、10万人に1人ががんを発症する可能性があるからです。
ところが、2014年に米国の消費者団体である公益科学センターが、売れ筋の清涼飲料水の4-MEIレベルを調査したところ、カリフォルニア州とニューヨークで購入した「Pepsi One」と「Malta Goya」という商品の4-MEIのレベルが29μgを超えていました。

■参考文献
Consumer Reports「Caramel color: The health risk that may be in your soda」

http://www.consumerreports.org/cro/news/2014/01/caramel-color-the-health-risk-that-may-be-in-your-soda/index.htm

そこで、公益科学センターの結果を踏まえ、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らが、公益科学センターと連携して調査を行ったのです。
研究者らは、カリフォルニア州やニューヨーク都市圏(コネチカット、ニュージャージー、ニューヨーク)の小売店から、110の清涼飲料水を購入し、4-MEI濃度を分析。さらに国民健康栄養調査から、米国人の清涼飲料水の消費量を調査し、4-MEIの暴露量を推定してがんのリスクを報告しました。

◆炭酸飲料の一日平均消費量:16歳~20歳で多い

この研究によれば、6歳から64歳までの米国人の半分以上が、毎日少なくとも1缶は、炭酸飲料を消費していました。特に若者および若年成人は、幼児や高齢者に比べて、多く(16歳から20歳:550~1070ml、45歳から64歳:457~864ml)を消費しています。

◆4-MEIの含有濃度:ブランドと購入した地域で違う

調査の結果、1缶当たりの4-MEIのレベルは9.5~963μg/L。ところがこれが、買った場所とブランドで大きな差があることが分かりました。
最も4-MEIの濃度が高かったのがMalta Goyaという商品で、平均945.5μg/L(最高1104μg/L)、最も低かったのは「Diet Coke」で平均9.8μg/L(最高10.4μg/L)でした。
またカルフォルニア州ではニューヨーク州に比べ、4-MEIの濃度がはるかに低い商品が多くなりました。例えば同じPepsi Oneでも、ニューヨークで流通する商品の4-MEI濃度は501.5μg/L、カルフォルニアの場合119.7μg/Lだったのです。

◆米国では4-MEIが原因で今後70年で76人から5000人ががんを発症する?

研究者らは、米国人の平均的な清涼飲料水の消費量から、米国では今後70年間に、4-MEIへの暴露のみで、76人から5000人ががんを発症するのではないかという結論を示しています。
キーヴ・ナックマン教授は、学内ニュースの中で、「清涼飲料水の消費者は、単に見た目を良くする目的で入れられた飲料の添加物を避けることができず、不要ながんのリスクにさらされているわけです。この不必要な暴露は公衆衛生を脅かすものです」と、清涼飲料水へのカラメル色素の継続的な使用に疑問を投げかけています。

■参考文献
Johns Hopkins University.「Popular Soda Ingredient Poses Cancer Risk to Consumers」

http://www.jhsph.edu/research/centers-and-institutes/johns-hopkins-center-for-a-livable-future/news-room/News-Releases/2015/Caramel-Color-in-Soft-Drinks-and-Exposure-to-4-Methylimidazole.html

◆日本でも使用量の制限、種類の表示が必要

すでにカルフォルニア州は、4-MEIの規制と、法律によるがん警告の表示義務付けにより、公衆衛生の向上のための重要な一歩を踏み出しています。この動きは今後、米国全体に広がり、カルフォルニア州以外の州や、さらに連邦政府による規制が始まる可能性もあります。
既出の通り、米国では安全な自然色でも、発がん性が懸念される人工着色料でも、飲食物に使用されるカラメル色の食品添加物はすべて同じように「カラメル色」と記載しています。実際は色素の種類だけでもI~IVがあるわけですから、その種類(クラス)の記載を求める声もすでに挙がっています。
そしてこの問題は米国だけでなく、日本でも同様に起きてくるでしょう。カラメル色素は、清涼飲料水だけではなく、ビールやベーカリー製品、しょう油、スープ類、酢などさまざまな調味料などに幅広く使用されています。今後は使用量の制限、含まれているカラメル色素のクラス表示が必要だと思います。

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