医療ガバナンス学会 (2015年3月6日 06:00)
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その中核となるのが常磐(じょうばん)病院で、人工透析と泌尿器診療を中心として、内科、外科、整形外科、婦人科、小児科の診療を行っている。最大240床の規模であるが、看護師不足のため現在40床を休床している。ときわ会の震災後の地域医療の取り組みとして、1)最先端の医療の提供、2)被ばく医療への取り組み、3)各大学機関との業務連携、共同研究の3つに力を入れ、いわき市民はもちろんのこと、浜通りといわれる原発事故被災者のみなさまへより良い医療が提供できるように心がけている。これらの取り組みを通して、泌尿器、人工透析では着実に最良の医療を提供できる環境を整え、また昨年5月より乳幼児にも使用できるベビースキャンを導入し、放射線被ばくの不安を少しでも解消できるように努力してきた。
◆福島県いわき市の医療状況(人口の増加と勤務医師不足)
いわき市の人口は、震災後大きく増加した。いわき市に住民登録をされたいわゆるいわき市の人口は、平成26年4月現在32万5000人である。これに加え、震災後は原発事故の影響で、福島第一原発周辺自治体より少なくとも約2万4000人の人々がいわき市に避難され居住しているとされている。また原発作業や除染作業にかかわる作業員や建築関係者など一時的な滞在にせよ、数千名規模でいわき市に滞在していると考えられる。
またいわき市では医師不足が顕著である。厚生労働省の平成22年の医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、いわき市の人口10万人あたりの勤務医数は、160.4人であり、全国平均219.0人、県平均182.6人を大きく下回っている。
このように人口の増加と勤務医師数の不足により、いわき市では救急医療が崩壊寸前となっており、救急医療の立て直しが喫緊の課題となっている。
◆常磐病院の新たな取り組み
いわき市の崩壊寸前の救急医療に少しでもお役にたてるように、常磐病院では遅ればせながら救急医療の充実を目指し様々な取り組みを開始した。救急部門の立ち上げや救急棟の新設、訪問診療の充実を通して、少しでも多くの救急患者受け入れを目指していく考えである。
◆救急部門立ち上げ
平成27年4月より、常磐病院に救急専門医1名、救急を専門にしている看護師1名配属となる。これまでの常磐病院では、泌尿器、人工透析を中心とした診療を行っており、救急疾患もこれらの診療科を得意としていた。しかし、いわき市の人口増や高齢化による救急症例増加に対応するため、幅広い疾患に対応できるように救急専門医と救急を専門にしている看護師が中心となり、救急部門を立ち上げることとした。
現在の医師不足のいわき市では、泌尿器科医といえども広く一般診療も行う必要がある。さらに救急診療のスキルを身に着けるため、私を含め常磐病院より2名の医師が、いわき市立磐城共立総合病院の救急部門に週一回、研修に行くこととなった。同院の救急部門では救急専門医3名たらずでいわき市の3次救急を一手に担っている。研修といえども慢性的に人材不足の救急をお手伝いすることにも大変な意義がある。
平成28年1月を目標に常磐病院に救急棟を新設する準備をしている。現在の救急外来は、1人の救急患者を受け入れるのがやっとのスペースしかない。これでは複数の救急患者を受け入れることはできないため、新たに救急棟を新設する計画である。この新救急棟には今までなかった、小手術設備や診断機器を設置し、救急診療のレベル向上を図る予定である。
◆訪問診療の拡充
救急診療に力を入れると必然的に入院ベッドの不足が発生する。入院ベッドの空きがないために、救急外来に余裕があっても、入院を必要とする患者をお断りしなければいけないことが予想される。特に常磐病院では、看護師不足のため240床あるベッドのうち40床を休床させている。看護師は簡単に雇用できない現状、ベッドを空けるための一つの方策として、訪問診療を充実することにより、これまで入院加療が必要とされていたが軽症で在宅で診療できる患者に対して退院を促すことができる。常磐病院では訪問診療専門に行っていただく医師を4月より1名配属する。これまでも、常勤医が月に1回のペースで訪問診療を行ってきたが、これからは訪問診療専門医師によってより濃度の高い診療を在宅で行っていく予定である。
このように、ときわ会グループでは最先端の医療から救急医療まで幅広く診療を行うことによって、地域医療に少しでも貢献する所存である。しかし、医師不足や看護師不足はいかんともしがたく、これを読んで我こそはいわきの医療を救いたいと考える方がいらっしゃれば、是非ご連絡いただきたい。常勤とはいわず週1回、月1回だけでも大歓迎である。いわきのおいしい食事とあたたかい温泉で最高のおもてなしをするので、どうぞご一報をください。