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vol 7 すずかん通信「問われているのは、経済危機下における医薬品供給の安全保障」

医療ガバナンス学会 (2009年4月10日 09:45)


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鈴木寛(通称すずかん)


昨年12月、突然届いた一枚のFAXにより、医療現場は騒然となりました。骨
髄移植に不可欠な医療器具である骨髄フィルターの供給停止の知らせでした。送
り主は、器具を日本で唯一扱うバクスター・ジャパン社です。

発端は米国の経済危機でした。シカゴのバクスター本社が骨髄フィルター事業
から撤退。引き継いだ投資会社が新会社を設立し、経費節減のため工場をドミニ
カ共和国に移転したため、審査当局の承認を新たに取得するまでの1年弱の間、
供給停止となってしまったのです。

翌々日には読売新聞でも報道され、移植を予定あるいは希望する患者・家族の
方々にも大きな衝撃を与えました。

骨髄フィルターは骨髄提供者からの骨髄採取時に使用されますが、準備期間を
含め予定日の1ヶ月前には確保されていなければなりません。毎月平均150人、
年間では2千人もの方が骨髄移植により命を救われている事実を考えると、一刻
も早く対策を講じなければ、現場が大混乱に陥ることは必至でした。

いち早く動いたのは、市民団体でした。NPO法人全国骨髄バンク推進協議会
の大谷貴子会長は、厚労省に対し、在庫不足に関する迅速な情報公開と、未承認
の代替品(バイオアクセス社)使用許可、そして患者負担増加の回避を求め、署
名活動を開始。会長ご自身も、骨髄移植により白血病が治癒し、後にわが国の骨
髄バンク設立に奔走された方です。

私が幹事長を務める医療再建議連も相談を受け、1月28日には尾辻議員、仙谷
議員とともに、舛添厚労大臣に陳情を行いました。署名数も瞬く間に6万5千を
超え、厚労省や骨髄移植推進財団も重い腰を上げて、代替品の緊急輸入と保険承
認に乗り出しました。


今回のケースは、経済危機が医療現場に飛び火したひとつの例、氷山の一角に
過ぎません。実際、抗がん剤チオテパも製造中止に陥り、代替薬によって事なき
を得ています。

これは医薬品・医療機器に関する危機管理の問題です。となれば、その道のプ
ロ集団たるPMDAが、代替品情報をあらかじめ平時から把握し、非常時には供
給確保を主導する体制を整備すべきです。法改正に向け、我々も努力を惜しみま
せん。

著者紹介
鈴木寛(通称すずかん)
現場からの医療改革推進協議会事務総長、
中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員
1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。
教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。

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