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Vol.055 多様性尊重の先進県に

医療ガバナンス学会 (2015年3月23日 06:00)


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※この文章は『福島民報』2015年3月7日「民報サロン」欄に掲載された寄稿エッセイを、許可を得て転載したものです。

一般社団法人ふくしま学びのネットワーク事務局長
前川直哉

2015年3月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


東京都渋谷区が全国で初めて、同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行するという条例案を今月の議会に提出すると表明しました。ようやく日本もここまで来たという、うれしい気持ちと、先を越されてしまったという悔しい気持ちが、相半ばしています。

日本は国際比較において、女性が社会で活躍しにくい国だとされています。昨秋に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」は百四十二カ国中、百四位。先進国と呼ばれる国の中で最低レベルなのはもちろん、調査対象となった全ての国の中でもかなり下のほうに位置しています。人々の意識のみでなく、社会制度や慣行の中に、女性の社会での活躍を妨げる要素が山積しているのです。

そしてまた、セクシュアル・マイノリティーの権利についても、近年ようやく議論が始まったばかりです。例えば冒頭に記した同性同士の結婚(同性結婚)や、結婚に準じる関係(パートナーシップ)は、すでに多くの国で認められています。「先進国クラブ」と呼ばれる経済協力開発機構(OECD)加盟の三十四カ国のうち、同性結婚またはパートナーシップを認めている国は二十四カ国、七割強に上ります。「日本は同性愛など、セクシュアル・マイノリティーに寛容な国だ」と言われることがありますが、残念ながら制度を世界的に比較したとき、決して寛容ではなく、むしろかなり「遅れている」のが実情です(このテーマについて関心のある方は、拙著「男の絆:明治の学生からボーイズ・ラブまで」=筑摩書房=をご覧ください)。

渋谷区の条例案が可決されれば、日本の戦後史に記録される大きな転換点になることは間違いありません。もちろん、同性愛などセクシュアル・マイノリティーに対する偏見・差別や、当事者の抱える生きづらさの問題など、まだまだ解決に向けて努力せねばならないことはたくさんあります。しかし、同性間のカップルも異性間のそれと同様であると行政が認め、その生き方を公的に肯定することは、これまでほとんど顧みられていなかったセクシュアル・マイノリティーの権利に大きな一歩が記されることになります。

渋谷区の発表には、すでにたくさんの当事者が歓迎の声を上げています。今後、多くの地域が後追いすることになるでしょう。ダイバーシティ(多様性)の尊重は近年ビジネスの世界でも重視されており、セクシュアル・マイノリティーの権利をいち早く打ち出した地域は、この問題に以前から積極的に取り組む外資系企業の進出など、多くのメリットも想定されます。

経済の問題を別にしても、多様性を尊重する街は、誰にとっても生きやすい街となります。東京電力福島第一原発事故による偏見や差別、住民間の分断などつらい経験を共有する福島こそ、お互いの違いを認め合い、さまざまな生き方を尊重する先進地域になってほしいと願います。渋谷区に続き、東北初、いや東京以外で初の同性カップル条例を福島で。一人の県民として、実現を強く願っています。

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