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臨時 vol 121 「後発医薬品使用促進の最大抵抗勢力は」

医療ガバナンス学会 (2008年9月8日 11:56)


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                帝京大学医学部附属溝口病院
                薬剤部 部長 河野博充


 国が断行している医療大改革の中に、医療費抑制策がある。その一番手として、後発医薬品(ジェネリック医薬品)使用促進が挙げられる。近年、処方せん様式を変更したばかりにも係わらず、今年度も処方せん様式の変更が行われた。このことから見ても、先発医薬品から後発医薬品へ変更することによる医薬品費の抑制効果を期待していることは明白である。
今から5年ほど前、厚生労働省より「国立病院・療養所に対する後発医薬品の採用要請」の通知が出たことで、国による後発医薬品使用促進が具体的に始まった。当時、後発医薬品(通称:ゾロ)に対する医療関係者多数の印象は「安かろう・悪かろう」であり、後発医薬品の信頼性に関しては極めて乏しかったと思われる。全ての後発医薬品が悪評なのではなく、一部の「安いが悪い」後発医薬品の為に、である。そこで国は、品質再評価結果の医薬品が収載されている「医療用医薬品品質情報集(通称:オレンジブック)」(監修:日本公定書協会)に加え、公的溶出試験規格を設定して承認された医薬品を収載した「オレンジブック総合版」(監修:日本公定書協会)等を通じて、後発医薬品に対するより一層の信頼性を深めようとしたのである。ところが、今まで使用してきた後発医薬品の印象・信頼性を払拭し、新たなる地位を確保するのは至難の業であるようだ。なぜならば、医療現場が最も欲している「後発医薬品の市販後調査」、「品質の確保」、「安定供給」に関する情報が乏しいのである。
昨秋、後発医薬品使用促進が計画通りに進まない見通しとなったため、厚生労働省は「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を打ち出した。このアクションプログラムを見ると、「先発医薬品と後発医薬品は同一成分だから効果も同じである」一辺倒であった5年ほど前と比べて、国はより現状に即した対策を考えているようである。後発医薬品への理解を考える参考資料として、医療関係者の方々には今一度このアクションプログラム(HTTP://WWW.MHLW.GO.JP/BUNYA/IRYOU/KOUHATU-IYAKU/DL/04.PDF)を一読して頂きたい。
さて、処方せん様式を変更したにもかかわらず先発医薬品から後発医薬品への変更率が伸びないのは、薬剤師が「最大の抵抗勢力」であるかの報道記事が業界紙を始めとして見受けられるようになり、薬剤師はますます困惑状態になった。その影響とは考えたくないが、今春、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」が改正され、第八条3「保険薬剤師は、処方せんに記載された医薬品に係る後発医薬品が次条に規定する厚生労働大臣の定める医薬品である場合であって、当該処方せんを発行した保険医等が後発医薬品への変更を認めているときは、患者に対して、後発医薬品に関する説明を適切に行わなければならない。この場合において、保険薬剤師は、後発医薬品を調剤するよう努めなければならない。」との記載が追加された。薬剤師がおかれている現状を考えると気の毒な気もする。というのも、先発医薬品から後発医薬品へ変更するにも情報が交錯し過ぎている気がするのである。最大の要因は、先発医薬品と複数ある後発医薬品について製剤間の品質研究などが行われているが、その研究発表の際に製剤名が匿名(A・B・C・・・)となっていることにある。すなわち製剤間に有意差がでた場合も、製剤名が判らないため、”良い”後発医薬品を選択しようがない。結局、現場の薬剤師は保全・安全策を考え、先発医薬品を選択せざるをえないというわけである。また、このような情報を得た他の医療関係者も、後発医薬品使用には二の足を踏むと考える。
以上より、後発医薬品使用促進の真の「最大抵抗勢力」は、製剤名を匿名にて研究発表する人々であると言えよう。研究発表するからには、その人々は自信を持って望み、製剤名を明確にしてほしいと思う。その結果、場合によっては製薬会社も製造責任として企業努力をするであろうし、医薬品に関する情報共有化が進むことで薬剤師等がより良い後発医薬品を選択することが可能になるからである。私も含めて、製剤名で発表する人は限られているのである。
私は、医師法第一条・薬剤師法第一条に共通の法的責務である「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」ために、一層努力したい。医療関係者は、患者背景を踏まえた上で「先発医薬品」および「使用できる後発医薬品」を、患者そして全国民に対して提供することが使命であると考える。そのためにも医療関係者へ啓蒙すべきは、医薬品費抑制や後発医薬品の使用の可否にとどまらないだろう。

 
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