vol 14 「第11回 ヘルスコミュニケーションに携わる人たち」
医療ガバナンス学会 (2008年7月23日 12:20)
Tweet
■ 関連タグ
コミュニケーション
林英恵
その1 アカウントと、プランナーと、クリエイティブ。
林 英恵(はやし はなえ)
前回と前々回の二回は、ヘルスケアコミュニケーションエージェンシーの歴史や現在、そしてこれから求められる役割について話しました。今回はエージェンシーの中にどのような職種と仕事があり、どのような仕事が各専門家に求められているのかということについて説明していきたいと思います。今回はその第1回。
主に、広告代理店(通常エージェンシーと呼ばれる)には、3つの仕事があります。
アカウントと呼ばれる営業職。プランニングと呼ばれる企画立案に関する専門職。そして、クリエイティブと呼ばれるアート・デザインに関する職種です。医療系広告代理店には、これらの専門職種に、メディカルエディターと呼ばれる医療系の文書の作成・編集など行う人たちが加わります。これらの人々は企業によって異なりますが、クリエイティブに配属されたり、編集職専門で部署があったりなどします。(これ以外にも様々な職種がありますが、大まかにこの三つが基本だということでこれらを明記しておきます)。このような専門集団によって、一つのキャンペーンが作られます。
次に、これらの職種について、具体的に、疾患啓蒙等のキャンペーンが催されるときにどのような手順でどのような役割が機能していくかについて例をあげながら説明していきたいと思います。
まず、依頼主(政府組織や企業等)からブリーフィングと呼ばれるキャンペーンについての概要の説明を受けます(こちらから提案していくこともあります)。この時点では、○○についての啓蒙をしたいという依頼主の意思表示のような形だけの場合から、予算やマーケティングプラン等(製品が関わってくる場合)、コンセプト(どのようなキャンペーンを行いたいかというイメージ)等が加わる場合もあります。
このような説明を受けて、最初に動き出すのが「アカウント」と呼ばれる職種です。日本語では「営業職」という言葉で訳されることが多いです。しかし、メーカー等の営業出身者によると、通常のメーカー等の営業(セールス)の職務内容と広告代理店の営業は異なるようです。広告代理店では、このアカウントには主に3つの役割があります。(1)依頼主との窓口(contact)、(2)社内チームの統制とスケジュール及び、予算/売り上げ等の金銭的な管理(management)、(3)提案されたキャンペーンの遂行(execution)です。
先ほどの概要説明を受けたアカウントが、社内に内容を持ち帰り、予算、キャンペーン規模、プランナーやクリエイティブ、エディター等の適正や専門性を踏まえ、どのようなチームでキャンペーンに臨むのかを話し合います。そこで決められた構成メンバーを集めて、社内で最初のミーティングが行われます。
次の出番は、プランナーです。プランナーの中にもストラテジックプランナー(企画の骨子を練る戦略プランナー)、アカウントプランナー(アカウントとプランニングの中間にあるような職種)、メディアプランナー(どのようなメディアを使ったら効果が一番出るのか等を調査し、最適な媒体の抽出やそれに基づく媒体との接触等を専門に行うプランナー)等、一口にプランナーといっても様々な役割があります。プランナーは、名前の通り、キャンペーン等の企画を「プランニング」(戦略を立て、練ること)を行います。
ヘルスケア分野では、コミュニケーションの対象が、一般と医療従事者である場合があります。この場合、内容はもちろんですが、接触するメディア媒体、キャンペーンの露出時期等の企画を変える必要があります。その一方で、キャンペーン自体の一貫性を持たせる必要があります。一般消費財とヘルスケア分野のコミュニケーションの大きな違いの一つは、ステークホルダーと呼ばれる利害関係者(団体含む)が多く存在することです。最終的に行動変容を起こしてほしい対象(一般)、対象に直接の医療行為を行う医療従事者、対象が所属する保険団体(健康保険組合等)、製品がある場合は製品を提供する企業(製薬企業その他)、患者及び患者団体、中央政府、健診などで直接住民(一般)と接触のある地方自治体等、様々です。これらの利害関係者の利益がどのように働き、どのように互いに影響を与え合っているのかという理解が不可欠です。また、特に一般が対象の場合は、キャンペーンのゴール設定となりうる行動変容において期待されるアクションに関しても、一般消費財が行動を起こしたことで一つのサイクルが終わる場合が多いことに対し、健康に関する行動変容においては、行動を起こした後、その行動を維持するための施策や、前の習慣に戻ることを防ぐ施策などが求められます。
最近のキャンペーンでは、この連載でも何度か出てきているソーシャルマーケティングや、イシューブランディングといった、元来製品の販売促進に使われてきたマーケティングの手法を生かすことが求められているので、マーケティングの知識も必要となっています。
そして、クリエイティブ。プランニングの部署でプランナーらが練った戦略・企画書をデザインとアートの力で形にしていくのがクリエイティブです。具体的にプランナーの”作品”がどのようにクリエイティブで活かされていくのかについては次回以降お話させていただきます。
林 英恵(はやし はなえ)
早稲田大学社会科学部卒業。ボストン大学教育大学教育工学科修了後、株式会社マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンにて、ジュニアストラテジックプランナーとして勤務。2008年秋より同社のサポートを得てハーバード大学公衆衛生大学院修士課程(ヘルスコミュニケーション専攻)進学。
≪ 前の記事を読む
|
次の記事を読む ≫
お知らせ
配信をご希望の方は
こちらのフォーム
に必要事項を記入して登録してください。
MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
投稿をご検討の方は「
お問い合わせ
」よりご連絡をお願いします。
関連タグ
pcr検査
Tansa
がん
アメリカ
ワクチン
ワクチン接種
ワセダクロニクル
上昌広
中川七海
井上清成
保険制度
内部被曝通信
医師不足
医療事故
医療崩壊
医療訴訟
医薬品
坂根みち子
坪倉正治
多田智裕
大西睦子
小松秀樹
山本佳奈
川口恭
感染症
放射能
政策
教育
新型コロナウイルス
東日本大震災
月別アーカイブ
2024年11月
2024年10月
2024年9月
2024年8月
2024年7月
2024年6月
2024年5月
2024年4月
2024年3月
2024年2月
2024年1月
2023年12月
2023年11月
2023年10月
2023年9月
2023年8月
2023年7月
2023年6月
2023年5月
2023年4月
2023年3月
2023年2月
2023年1月
2022年12月
2022年11月
2022年10月
2022年9月
2022年8月
2022年7月
2022年6月
2022年5月
2022年4月
2022年3月
2022年2月
2022年1月
2021年12月
2021年11月
2021年10月
2021年9月
2021年8月
2021年7月
2021年6月
2021年5月
2021年4月
2021年3月
2021年2月
2021年1月
2020年12月
2020年11月
2020年10月
2020年9月
2020年8月
2020年7月
2020年6月
2020年5月
2020年4月
2020年3月
2020年2月
2020年1月
2019年12月
2019年11月
2019年10月
2019年9月
2019年8月
2019年7月
2019年6月
2019年5月
2019年4月
2019年3月
2019年2月
2019年1月
2018年12月
2018年11月
2018年10月
2018年9月
2018年8月
2018年7月
2018年6月
2018年5月
2018年4月
2018年3月
2018年2月
2018年1月
2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
2011年2月
2011年1月
2010年12月
2010年11月
2010年10月
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
2009年5月
2009年4月
2009年3月
2009年2月
2009年1月
2008年12月
2008年11月
2008年10月
2008年9月
2008年8月
2008年7月
2008年6月
2008年5月
2008年4月
2008年3月
2008年2月
2008年1月
2007年12月
2007年11月
2007年10月
2007年9月
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2007年2月
2007年1月
2006年12月
2006年11月
2006年10月
2006年9月
2006年8月
2006年7月
2006年6月
2006年5月
2006年4月
2006年3月
2006年2月
2006年1月
2004年7月
2004年6月
2004年5月
2004年4月
2004年3月
2004年1月
▲ページトップへ