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臨時 vol 94 「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会 第4回会議 傍聴記」

医療ガバナンス学会 (2008年7月15日 12:27)


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         薬害は、厚労省の「打ち出の小槌」か?
               ロハス・メディカル発行人 川口恭


 厚労省が日本版FDAみたいなものを作ろうとしているらしい。いくつかの報道でそんな話を知り、興味をそそられたので、その話し合いをしているという検討会の第4回会議を傍聴してみた。
過去3回を見ずにこのようなことを言うのは心苦しいが、あえて率直な感想を言わせてもらいたい。なぜこの検討会で日本版FDAがどうのこうのという話になるのかサッパリ分からない。
表題を見てもらえば分かるように、この検討会は薬害肝炎の反省に立って、どうやったら再発を防止できるか考えようという趣旨のもののはずだ。ところが、この日はやりとりを追ってもらえば、概算要求しないといけないから、その根拠になる中間とりまとめをする、という、それだけに終始していることが分かる。しかもそのとりまとめの中身について、それがどのように薬害再発防止につながるのか、コンセンサスが得られているとは到底思えなかったのである。
この委員会には薬害被害者とその支援者が計5人委員になっているという。彼らを中心に、「自分たちがダシに使われているのでないか」と事務局の厚労省に対して警戒感の見える委員が多かった。まず冒頭に大熊由紀子委員(国際医療福祉大大学院教授=元朝日新聞記者)が『はじめに』の文言に「事実に即して」と、『事務局の提案』を論じたと、『事務局の提案』の6文字を挿入するよう主張した。事務局の土俵でやらされていると暗に言っている。
この後も『はじめに』の文言を、こう直せ、ああ直せという意見が様々に出され、たまりかねたか、まな板の上の鯉としておとなしく聴いてないといけないはずの高橋医薬食品局長が「この中間とりまとめは4回分の議論をまとめていただいたもの。全部の文言を入れようとすると膨大になり過ぎてとりまとめにふさわしくない」と述べた。これに対して、泉祐子委員(薬害肝炎原告団)が、すかさず噛みついた。「たしかに色々と入れると局長の言うとおり格調は高くないかもしれないが、この文章自体、事務局からいいただいたもの。委員会の意見として直せというのなら、反映されるべきでないのか」
おお、真剣勝負の火花が散っているなあ、と少し感動しながら眺めていたら、突然、座長の許しも得ずに演説をはじめた御仁がいた。森嶌昭夫座長代理(日本気候政策センター理事長)である。この後もずっと、まるで自分が座長であるかのように振舞っていた。私の経験では、代理というのは本職がいない時に代役を務めるもので、本職がいる時は単なる一委員に過ぎないはずなのだが、この検討会は違うらしい。座席も最初からひな壇にある。妙な検討会である。しかも、その演説の途中で舛添厚生労働大臣が遅れて入室してきたのだが、委細構わず演説を続けた。よほど大事な話だったようだ。
「この委員会が何のために開かれているかというと『はじめに』の冒頭3行に書かれている。今のところ、たった4回しか開いていない。我々はとりあえず当面予算を出すためのサポートをするのが仕事。たった4回でこの3行全部をすることはできない。これで終わりにしちゃうなら、こんなことで誤魔化されるのはおかしい。しかし今はまず予算編成に間に合うように中間とりまとめをすることが必要で、そのことが今後、再発防止のための1ステップとしての人員増につながり、厚生労働行政改革のための1プッシュになる。検証については秋以降にやる。再発防止のためのあり方を全面的に展開しているわけでない。行政全部の話は年度末までに仕上げることで、今のところは市販後の安全対策にしぼって、逆に言えばそれしかやっていない。そのことを今ハッキリ座長の意向として、『政府や厚生労働省でしっかり』と要望するのではなく、中間とりまとめではこれしかやらないのだから、これからどこまでやるつもりか、最終的に政府・行政に対して踏み込むのか、国民に対して責任を取るつもりか、大臣が抜本的にやると仰っているのだから、我々はこれだけの責任は負います、予算を出してお終いと言うな、それだけのことはやらせろと誓うことこそ、中間とりまとめの役割でないか。(中略)せっかくこれだけの人が集まって議論しているのだから、委員会が責任を持って宣言することこそ必要でないか。ここは300人か2000人か知らないが、まず人を増やすことを優先しよう」ちなみに冒頭の3行は、これ。
『本委員会は、薬害肝炎事件の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実施について、多方面から検証を行い、再発防止のための医薬品行政の見直し等について提言することを目的として設置された委員会である。』
この演説の力点が、委員会として中間とりまとめで厚労省改革に責任を持つと宣言することにあるなら、たしかに大事な話だ。大臣も、退席前に「自民党のプロジェクトチームから、この件に関しては提案されている。今後もいろいろな提言がなされるだろう。ただ、ここできちんと議論した結果は重い。政府にこうしなさいという指示でよろしいかと考える」と述べている。どうぞ宣言してくださいというところだろうか。
しかし、会議が進むにつれ、座長代理の話の力点が、概算要求させる方にあることが段々分かってきて、頭に血がのぼる。特に憤りを覚えたやりとりを再現する。
福田衣里子委員(薬害肝炎原告団)
「P9にファーマコゲノミクスが云々という表現があるけれど、今まで3回で全く議論していないのに、突然出てきて意味が分からない」
堀内龍也委員(日本病院薬剤師会会長)
「薬剤の作用を遺伝学的に検証するもので大切」
寺野彰座長(独協医大学長)
「議論していないのに出てきたのはおかしいということは分かる。ただ、今後の課題として書いておくということでご理解いただけないか」
福田
「中間とりまとめに入れなきゃいけない理由があるのか」
清水勝委員(西城病院理事)
「こういう項目があるから人が必要ということで項目が上がっているというのだろう」
水口真寿美委員(弁護士)
「安全対策にどれだけ活用できるかは、これからの検証が必要だろう。ここで無理して入れる必要があるのかと思う。あまりにも楽観的すぎる」
寺野座長
「実際に組織の質量について議論していないのは事実。その点が足りなかったことは反省している。しかし、ではファーマコゲノミクスが不要かというと、専門家は必要だと言っているので」
山口拓洋委員(東大特任准教授)
「細かい議論は確かにしていない。ただ専門的な立場で参加している者として言うならば、欧米では有効に活用されているもので、それについてウソを言っているわけではない」
高橋千代美委員(日本製薬団体連合会安全性委員会委員長)
「遺伝子解析は確かに進んでいる」
友池仁暢委員(国立循環器病センター病院長)
「このことに危惧の念が出たということを議事録にしっかり残しておくべきでないか。遺伝子情報は究極の個人情報とも言われており、何の議論もなしに欧米でやっているから右へ倣えで導入するというわけにはいかない」
寺野
「ここは予算確保のために必要なので」
間宮清委員(サリドマイド福祉センター事務局長)
「私にもファーマコゲノミクスは何のことだか分からない。委員として、ここに座っている以上、判断しなければいけないのだと思う。それが何なのか勉強会をするか説明を受けるかしないと判断できない。山口委員の言うように欧米で有効活用されているのなら、ぜひ、その辺を説明してほしい」
大熊
「8月に全く検討会を開かないというのは勿体ないから、勉強会を開いたり、機構の見学会を開いたりしては」
寺野
「夏休みもあるから、そんなに簡単ではないと思うが、いずれにしてもこういった一つひとつの項目を全部入れなくてよいとすると概算要求の根拠がなくなる」

「中間とりまとめに入れるかどうかについては福田委員と同じ意見。勉強会をした後に入れるということを決めるのならいいが、組織を作るにも膨大なお金が必要なはずで、もう少し勉強してからにしたい。私もゲノム検査に関しては欧米に文献なども読んでみたが、欧米でも完全に確立しているわけではなく、いろいろ議論はあるようだ。今回は外していただきたい」
寺野
「別の表現もあるのだろうか」
友池
「薬剤に対する感受性としてはどうか」
堀明子委員(帝京大学講師)
「学問分野の例示なんだと思う。未確立だから入れないという考え方になるのは誤解で、むしろ副作用の出やすい人が事前に分かるなど、患者さんを守れるから遺伝子的なことをやるのだ」

「それは十分分かるし、そういう論文もあった。しかし先生方が分かっていることを今この場にいる全員が分かっているわけではない。だから分かりたい。分かるまでの時間、勉強する時間がないのか。この委員会で今書きこまなければならないことが分からない。意味も分からないのに同意しなければいけないのか」
森嶌座長代理
「我々の中間とりまとめの段階の仕事は、いいか悪いかは別にして、再発防止のための行政を実現するのに必要な概算要求のために中間とりまとめをすることだ。泉委員の話は、概算要求をブロックすることになる。検討した結果やる必要がないというのなら、その段階で削除すれば良いので、とりあえず予算要求だけはしておこうという話だ。それをブロックしてまで仰るのか。書くな、書くなと言うと、その項目がなくても概算要求できるならいいが、また概算要求できなくても構わないというのなら結構だが、予算要求できないと困るというのなら出させてはどうか。(中略)ブロックする気がないのだったら、自分たちの言い分が通らない限り絶対に譲歩しないというようなどこかの政党のようなことを仰るのでなければ、今回は認めていただけないか」
立派な恫喝である。

「概算要求ができないのか。ブロックするつもりはない。自分で調べたけれど分からなかったから知りたいということなので、後者の方だ」
これぞ無理が通れば道理が引っ込む。とりまとめなんだから、過去に議論されてないことを入れるのは絶対におかしい。過去に3回もやっている。とりまとめに入れたいのなら、議論しておけばよいだけのことだし、それがないと予算要求できないのだとしたら、そもそも準備不足ということだ。座長代理は、まるで天から金が降ってくるかのように悪びれないが、これは税金の使い道に関する話だ。予算要求する根拠のないものを、恫喝までして体裁を整えさせたのは、ハッキリ言って犯罪的だ。
この検討会、当初の予定では中間とりまとめの文面を詰めるはずだった。しかし、2時間の予定が3時間半まで伸びても、まったくまとまらず、最終的に森嶌座長代理が「文章が事務局ではなく私がまとめる。それについて、ここはどうしてもという方は座長に連絡してほしい。それを容れるかどうかは座長に一任いただきたい。文章を座長でなく私がまとめるのは、自然科学者より人文科学者の方がまとめがうまいから。中間とりまとめに関しては、厚労省の立場からするととにかく概算要求のために必要なんであって、それ位のサービスはしてもよかろう、これから秋にかけて色々と要求するのだから」と強引に引き取った。
あそこまで演説したからには、きちんと『厚労省改革宣言』を書いていただこう。もし書いてなかったら、座長代理が委員を務める審議会とか検討会とか片っぱしから傍聴に行って、拙ブログにコーナーを作っちゃうからね。
この傍聴記は、ロハス・メディカルブログ(<a href=”http://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a>)にも掲載されています。

 
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