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臨時 vol 86 「舛添要一・厚生労働大臣 インタビュー」

医療ガバナンス学会 (2008年7月1日 12:34)


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    ~ ウソをつく官僚は、クビを切るしかない ~
              聞き手:ロハス・メディカル発行人 川口恭


――『安心と希望の医療確保ビジョン』のセールスポイントを教えてください。
一番、国民が心配しているお医者さんの不足、奈良で妊婦さんがたらい回しされて大阪へ連れて行かれて死産したとか、そういう話がいっぱいありますでしょ。小児科が足りないとかね。そういう問題に対して、基本的に厚生労働省担当相としてどう対応するか考えましたということです。
国民みんなが足りない足りないと思っているのに、平成9年の閣議決定以来、歴代の厚生労働大臣は役人にそそのかされたのか、医師は十分にいると答弁し続けてきた、偏在しているだけだ、と。そんなの普通の人から見たら違うんじゃないのということで、国会答弁から変えた。まず一つはお医者さん増やすよ、医学部定員削減の閣議決定を見直すよ、それが第一。それからもう一つは地域、現場中心主義だということ。霞が関に座っていて医療の現場が分かるわけないんで。現場中心で現場の地域のネットワークをいかに構築するかっていうことで。周産期医療センターなんてのやっているけれど、それがない宮崎の方がむしろうまくいっているというのは、ハコモノなんか作ったって人がいなければダメなのね。ハコモノなんかなくったってちゃんとやっている所はある。たとえば江戸川区の医師会とか、見に行ったけれどそうだった。で、26日に行った日野市立病院のように立派なNICUのハコモノなんか作ったって、お医者さんがいなかったら閉鎖されて生きてない、と。だからやっぱり、現場を見て地域のイニシアチブを大事にしてやりますよ、ということ。それから3番目の柱は、やっぱり国民も協力してくださいということ。兵庫の県立柏原病院に来週行きますけれど、あそこのお母さんたちの『小児科を守る会』があるでしょ、ああいう実質的な活動で1円もかからないで小児科の負担を減らすことができている。だから日野市に行った時に、市長と地元の国会議員に日野市で同じことしなさいよと言いました。何度も言っているんだけれど、現場が第一であって、霞が関で紙と鉛筆でやってる財務官僚も厚生労働官僚もダメだってことなんですね。
それからもう一つは、ただ予算を増やして人を増やせばいいのかといえばそうじゃない、と。改革はやっぱりやらなきゃいけないんで、ムダを排し効率的な医療体制を築く、と。じゃあどうやってムダを省くんですかっていう時に、自分たちの権限は縮小しない形で、天下り先は確保したまま、規制権限を強化したまま、そうじゃないだろう、と。私が言っているムダを省けというのは、官僚たちがやっている規制のせいで金がかかってるんじゃないのということ。だったら規制外せばいいじゃない。たとえば医療機器だって規制でがんじがらめにしているからアメリカの何倍の価格にもなる。それから、何枚も何枚もお医者さんが紙を出さなきゃいけないから、それだけでお医者さんの時間がなくなっちゃう。その書類作成の時間がなくなるだけでも、コスト的に相当のはず。要するに規制緩和をちゃんとやる。国民の安全にかかわるところを何だ、みたいな議論にすぐするけれど、そういうすり替えはダメですよ、とそういうことですね。だから改革はちゃんとやるんですよ。
それで例えば数字的に言うとですね、2500億円かかるとしたなら、それを全部国民にツケるんじゃなくて、今言ったような改革をやって半分の1250億円は改革でムダなやつを潰して産み出していく、と。俺なんかでもそうだけれど、薬なんかでも何種類ももらって残している薬があるじゃないかと。あんなものを効率よくするにはどうしたらよいか、そういうことを考えないといけない。レセプトの無料開示で良くなっている面もある。それで半分の1250億円を国民の税金でいく、と。2500億円というと、国民1人あたり2000円だから、千円札2枚は要求しませんから1枚は出してください、と。これが姿勢なんですね。ビジョンの最初に改革と言ったのはそういうことです。
――医師数をどこまで増やすか、具体的な数を挙げることは可能ですか。
『骨太の方針08』では過去最大限のところまで行くというのが注釈で書いてあります。それを上限とするニュアンスがないようにしましたから、とりあえずそこまで増やすと8360ですね。今から500ぐらい増えるのかな。色々なシミュレーションをやって、やっぱり年間400ぐらいずつ増やしていくってのは解消策として妥当なところだと思うけれど、それはまた多すぎるのか少なすぎるのか色々議論して。その議論の前提は、週に80時間、90時間働いているという人は本来1人じゃなくて2人いれば40時間から50時間で済むはずなんで。人として当たり前の働きをする前提です。生身の体で自分が病気になっちゃったら仕方ないんで。今、医者が足りているからいいじゃないかと言うんじゃなくて、違うんですよ、この人は80時間働いているんですよ、もし40時間にするんだったら倍いるでしょう。そういう論理できちんと計算していくということです。
もう一つは、介護士、看護師、助産師といったコメディカル、メディカルクラークも含めてですけれど、それをもっと活用する、スキルミックスをやっていくと、これをもっとやっていく。その時にも、お金がなくてスキルミックスができるわけがなくて、だから看護師の数をガっと増やす、質を上げる、こういうことをやらないといけないと思います。それも一つの大きな改革の目玉だと思います。
――患者・国民がビジョンに対して協力できることは何でしょう。
たとえば柏原病院の例のように、コンビニ診療をやめてください、ということですね。『柏原病院の小児科を守る会』のパンフレットを見て、ウチにも小さな子がいるから、いいなと思って家に置いているんです。この子の顔色がこうだったらすぐ救急車呼びなさい、こうだったら熱冷ましてから呼びなさい、こうだったらこの薬を飲ませなさいとフローチャートで書いてある。あれは、小児科を守る会が自らトリアージの仕方を住民に教えたんですね。それからもう一つは赤ちゃんが調子悪かったら昼間診せなさいと。昼間子供を放ったらかしておいて、夜中にパニくって救急車呼んで、そうするとそんなのが1人で当直しているお医者さんのところへどんどん来る。診ても大したことないのに、その間に本当に緊急の子供が来た時にもう診られない。だからトリアージを国民にもやってもらう。乱診乱療じゃないけど、コンビニ診療をやめる、こういうこと。
つまり、あなた命守りたいんでしょ、お医者さんいなかったら困るでしょ、看護師さんいなかったら困るでしょ、なのに逃げて行ってますよ。くだらない負担をかけるからですよ。無駄な負担をかけないようにしましょう、ということですね。
厚生労働大臣が頑張るとか、お医者が頑張るとか、看護師が頑張るだけで救われる問題ではなくて、あなたが頑張ってくれないとダメ、オールジャパンでやる話なんですよと。やはり患者側の協力がなければ。病気を治すんでもそうですよね。お医者さんの言うこと聴かないで勝手やってたらダメで、やっぱり養生しなさいと言った時にちゃんとやってくれるかどうか、非常に大きいと思いますね。
――予算を取るために患者・国民が協力できることはありませんか。
それは、いかに地域医療が疲弊しているか、最低の安心である、セーフティネットである医療がここまでヒドイ状況になっているとちゃんと訴えることが必要だと思います。最終的には選挙で判断すればいいんでね。いずれにしても、国民がきちんとやるかどうか。やはり大変な状況であることをきちんと知らしめる。それでこっちも協力するから、政府もやってください、と。道路も必要だけれど、目の前で失われかけている命を救うのかどうするのかというのは真剣に考える必要があると思うんですね。
――総理の「5つの安心プラン」の中で「厚生労働行政改革」だけ妙に異質と思うのですが。
それはまさに医療確保ビジョンも同じ発想で、今から介護ビジョンもやろうと思っているのだけれど、こういうことすらできなかったのが、医者が足りないのに足りてますと言い続けたってのが、厚生労働省の体質。自分で言うのもおかしいけれど普通の大臣なら、医者が足りませんって言うところまで持ってこれないですよ。
私だからできている面があって、みんな批判するんだけれど、言ってしまうんですね国会で。はい足りませんよ、と。世論に対してもテレビなんかでも足りませんと言う。ウソをつくな、と。その闘い、それは肝炎なんかでもみな同じですよ。ウソをついて大臣が言おうが何をしようが勝手気まま。それはもう許さないよ、と。だからこれはもう改革ですよ。言うことをきかないヤツは首を切ると。だから例えば、医学部を出て免許を持っているか知らないけど、インターンぐらいやったかもしらんけど、臨床も何もやらないでずっとやってて、それで、あんた日本のお医者のトップに立つのかね、と。おかしいだろう、と。だから臨床やるかどうかは別にして、とにかく現場2年ぐらい、腕に自信がないなら病院の事務長としても入ってもいいから、とにかく病院の実態を見てくださいよ、と。そして帰ってくれば、いい政策ができる。
だから、まあ徹底的にやろうとしているのは技官ね。医系、薬系含め技官人事、誰も手をつけないで聖域になっている。私は東大法学部だから、事務官の局長かなんかは全部分かる。ところが局長でも医政とか健康局長なんかはGHQの指令で医師免許がないといけないことになっている、と。そんなバカなことはないんで。医師免許なんかなくたって、事務能力のある局長がいて、下の課長の何人かに優秀な医者がいればいい。その医者も臨床やったことない外に出たことないなんてのじゃなくて、ちゃんとやって患者の面倒を見たことある人。看護師でもいい。外の血も入れて交流していかないとダメなんで、まさに厚生労働省改革というのは、これまでの失敗とウソで塗り固めた状況を変えるということ。組織を変えてこういう組織にしますよというやり方もあるけれど、『医療ビジョン』もまさに改革そのもので、出ないですよ普通はこんなもの。まさに闘いなんで、医者の数が不足してますと書かないでくださいから始まるだろ、不足してますと書くまでにどれだけの闘いをやっているかね。国会も与野党を動員して、国権の最高機関である国会で大臣が足りないと言っているのに、役人が足りていると言うのなら、それはもう役人の首を切るしかないですよ。そういう現実に動かしていきながら改革します。組織変えして何局を何局に移す、何局を廃止する、そしたら改革かってそうじゃないんですよ。結局、改廃したところで言葉は悪いけれど人が変わらない以上変わらないんで。ボンと医療確保ビジョン。で、何とか審議会とか色んなものがいっぱいあったって、結局御用学者連れて来て役人の隠れ蓑。そんなもの役に立つわけないだろう。だからそれはもうやめるということであってね、審議会も中医協も含めてあらゆる関連のところを見直すと、そういうことなんです。国民のための仕事がどうしたらできるのかと、その観点だけに尽きると思いますよ。
そりゃ面白いよ。今回の医療ビジョンを俺がやるって言ったことがまずショックなんだけど、それがこうした形で実を結び、今日骨太の方針で確定するけれど医師不足がうたわれ、閣議決定が引っくり返され、社会保障や医師不足には財源を確保するということが書かれたこと自体が奇跡的なんですよね。顛末を小説にでも書いたら面白いものができるんで。だから、その方針をやるしかない、と。幸いそういうことができるのは国民が基本的に支持してくれているからですよ。役人が何と言おうと。国民の支持がなくなったらダメだから。だから国民がちゃんと支持してくれて、問責決議だって85%が俺に対してやるのは反対だから出せないんですね。85%の国民が支持しているヤツに問責出したら、出した方が怒られちゃう。それはちゃんと国民が仕事をしていることを評価してくれていると思うので、この姿勢を失わずにやるということですね。
――日本医師会が、相談を受けてないからビジョンには関心がないと会見で言ったらしいんですが。
聴かれてないから知らんじゃなくて、自分たちの職業にかかわる重大な決定が担当大臣によって行われた時に関心を持たないというのは犯罪的ですよ。
だから選挙に代表出したって落ちるんで、反省しないといけないですよ。あれだけの組織であれだけの金を使って。歯医者は通せましたよ、薬局は通せませんでしたね。私が160万票取って初めて当選した時に、武見君は27万票しか取ってない。親父さんの時には100万票なんて豪語していたのに。武見君が悪いわけじゃなくて、一般論で言ってるんですけど。やっぱり病院の待合室に写真を1年間貼り続けて、なんで俺より票が少ないんだってことですよ。
つまりね、もう組織でもって云々する時代じゃない。組織があるのはいいです。しかし、それが国民に支持されない組織だったら1人の代表も選挙に通せないと見事に示されたわけです。医師不足も含めて国民の関心あること、それが書いてあるビジョンですから、それに無関心だからといって日医の価値が上がるわけではないので、そこは謙虚さが必要だと思いますね。
こっちは国民を代表してやっているわけですから。それに対して、医師会はこう思う、ここはこういう風に使いたい、というのがあって然るべきですよ。柏原病院の小児科を守る会にしても、周辺のお医者さんが協力しているからできる話なんで、地域のネットワークという大きな2本目の柱は、各地の医師会が賛成してくれないとできないですから。せめて、私たちも一所懸命改革して医師に対する批判に応えよう、くらい言わないとダメだと思いますけどね。
(このインタビューを抄録したものが、『ロハス・メディカル』08年8月号に掲載されます)

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