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臨時 vol 69 中島年博「シルクロードからの手紙」

医療ガバナンス学会 (2008年5月21日 13:00)


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― 「ハーティースマイル」 シルクロードプロジェクト ―
中央アジアの子供たちのリウマチ熱とその後遺症である心突然死の撲滅キャンペーン
キルギス共和国・国家顧問
「シルクロードの健康的な未来を考える会」
代表   中島  年博
 

●はじめに
シルクロードではごく簡単に治療できる細菌性の「風邪」であるリウマチ熱により多くの幼い命が失われ、さらにリウマチ熱は成人の死因の半数を占める心突然死の要因ともなっている。この事実は06年私たちがキルギス共和国の調査に訪れた際に偶然発見し、続く二次調査でこの問題がソ連崩壊後の社会・経済・文化の変革により生じていることを明らかにした。
その抜本的解決には政治・社会構造の変革とともに、保健に関するリテラシー向上の啓蒙活動が必要とされる。このプロジェクトのフラッグツールとして国内外で認知度の高いリボンマグネットを制作・販売する収益により、澄み切った空のした、子供と母親たちの健康で明るい笑顔を一つでも増やしたいという願いを込めた本プロジェクトによりシルクロードの明日を担う子供たちに必要な援助活動を展開する。
古くから文化・文明・経済の交流の場であったシルクロードでは、変化に富んだ自然環境のもとで各民族・国家が独自の豊かな文化・風習を育んできました。例えば高山地域に位置するキルギス共和国をはじめとした中央アジアでは、古くから遊牧が行われ、家畜の乳を加工して作る乳酸菌食品を多く摂取するという独特の食文化が形成されています。
本プロジェクトのコアメンバーの一人である宇田は、中央アジア諸国の独自な文化を伝承するため “自然の叡智”をテーマとした2005年開催の愛・地球博で中央アジア共同館をプロデュースしました。宇田はその過程で同地域の医療の惨状を耳にし、中島を団長としたボランティアの医師団を募りました。2回に亘る現地調査で医師団は、もはや先進国では見られなくなったリウマチ熱患児が中央アジア諸国では依然として存在し、さらに近年急増していることを見出したのです。
リウマチ熱とは、A群溶血性連鎖球菌(以下、溶連菌)感染(いわゆる青っ洟の風邪)より数週間後に発症する主に小児の炎症性疾患です。症状は主として関節・心臓・腎臓・中枢神経にあらわれますが、特に心臓では弁膜症・心膜炎・心筋炎を発症するため時に致死的となる場合もあります。またリウマチ熱罹患時の心臓合併症に気付かないまま成長し、成人後に突然死を起こす例も知られています。現在、先進国では、溶連菌感染症の迅速診断、抗生物質の普及、生活環境の改善などによりリウマチ熱の罹患率は著しく低下し、日本でもその患者はほとんど見られなくなっていることはご存知のことかと思います(10万人当たり0.1人程度)。これに対しキルギス共和国では、リウマチ熱の罹患率は1990年ごろまでは減少傾向を示していたにもかかわらず、1991年のソビエト連邦崩壊後に罹患率の再増加がみられ、20年に満たない短期間の内にその発症率が約3倍にも増加していることがわかりました(人口10万人当たり650人)。さらに中央アジアでは労働人口における心突然死がなんと死因の半数を占め、人道的・経済的にも深刻な問題となってきています。昨年行った2回目の調査で、これは小児期の顕在化しないごく軽症のリウマチ熱が心突然死の約3割に基礎疾患として関与している可能性が明らかとなりました。
これらの背景を踏まえ、多くの方々の支えの元、タイトルにある「ハーティースマイル」 シルクロードプロジェクトを開始したいと考えています。本プロジェクトでは現在、中央アジアで猛威を奮っている小児のリウマチ熱を撲滅することを一義的な課題とし、数十年後に「今」の子供たちが成人する際には死因の半数を占める心突然死の制御を介し社会基盤の安寧を図ることを第二の課題とします。さらに、後述するようにリウマチ熱の爆発的増加が、これら単に医療・経済社会的困窮の面だけではなく、中央アジア圏の有す独特の文化の尊厳の継承に対する反語的側面(警鐘かな?)もあることも示されたことにより、本プロジェクトでは医療・医学界のみならず、食文化・経済・政治・情報科学など学際的に多彩なメンバーの参画を求め、21世紀に生きる我々の新たなる指針を学び得ることを最終課題としたいと考えています。
 

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