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vol 10 「医療/公衆衛生×メディア×コミュニケーション」

医療ガバナンス学会 (2008年5月20日 13:00)


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第9回 ヘルスコミュニケーションの専門性
その1コミュニケーションはどこにあって、代理店は何をしているのか
林英恵

前回は、公衆衛生や医療分野でのコミュニケーションの脆弱性について書きました。国連児童基金(UNICEF)レベルの大規模な疾病予防のキャンペーンを行っている組織ですら、コミュニケーションの専門性への認識が他領域よりも低く、専門職員たちが苦労しながらその確立に向けて日々活動している旨、また、一方で、学術領域では日米問わずその確立が行われつつあるという内容でした。
これからの二回は、医療/公衆衛生の領域でどこにコミュニケーションが発生しているのかについて着目していきます。また、最近寄せられたコメントの中から、多く聞かれます「医療系の広告代理店」がコミュニケーション領域でどのような活動を行っているのかについて書いていきます。
【コミュニケーションはどこで発生しているのか】
二つのデータをご紹介しましょう。
■健康に関する情報源と信頼度
☆あなたは、健康に関する情報を、どのようなところで入手していますか?特に入手することの多い情報源を5つまでお選び下さい。
第一位:テレビの健康情報番組・コーナー
第二位:新聞記事
第三位:家族・友人などの口コミ
第四位:その他のテレビ番組
第五位:健康情報サイト
☆入手した健康に関する情報を、あなたは実際の生活でどの程度参考にしていますか?
情報源:参考にすると答えた割合
病院・薬局:55%
その他:40%強
健康情報雑誌:30%強
新聞記事:30%弱
家族・友人などの口コミ:25%強
健康意識に関する調査
対象者:20歳以上のインターネットユーザー
サンプル数:1500名
調査方法:インターネットリサーチ
実施機関:ヤフーバリューインサイト株式会社
※健康関連 マーケティングデータ白書2008 株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク
昨今行われている健康や、保健医療の情報入手先として代表的なものを二つ取り出してみたものですが、情報の入手先はテレビをはじめとするマスメディアから、情報源として参考にするものは病院・薬局等の専門家(=医療従事者)からという二つの事実が浮かび上がります。
【そもそも広告代理店とは】
「医療系の広告代理店に勤務している」というと、「?」という反応が返ってくることが多くあります。勤務している自分にとっても”広告代理店”という言葉は、今の時代の私たち(=代理店)の業務にそぐわないと感じているのですが、ここでも、それに代わる日本語がないために、この言葉を使い続けているということも一理あると思います。
一番しっくり来るのは、「コミュニケーションエージェンシー Communication Agency」という言葉でしょうか。しかし、これまたカタカナがたくさん並んでしまい、まだ、日本で多くの方が共通の理解を持って使うことができる言葉ではないと感じています。というわけで、医療/公衆衛生分野の広告代理店について説明する前に、一般的に日本の広告代理店についての簡単なバックグラウンドを共有させて頂こうと思います。
歴史は、明治時代にさかのぼります。
広告が始まったとされるこの時代、新聞や雑誌などのメディア(媒体)に、広告主が広告を出したいスペースを彼らに代わって確保することというのが、広告代理店の仕事でした。スペースを広告主の代理に購入すること。これが「広告代理店」の由来です。それから現在に至るまで、広告主(広告を載せたい企業・団体)とメディア(テレビ局や新聞社)など、広告を掲載するためのスペースを持った企業(媒体者)の間で、両者の仲介及び代理として広告に関する仕事を行うことを生業としてきました。
※参考:よくわかる広告業界 日本実業出版社
昔は、「代理」の仲介業を主な仕事としてきたのですが、時代とともに求められることが代わってきます。現在では、広告のプランニング(企画立案)、広告の企画の前段階にあたるマーケティング戦略作り、媒体戦略(どのような媒体を使うのが一番そのメッセージを伝えるのに効果的かを考える)、クリエイティブ(キャッチコピーやデザイン)などの開発などの企画をし、実行をします。また、提供したコミュニケーションのアイディアの効果測定なども行います。
また、その業界や、目的にあったステークホルダー(利害関係者)たちが、協力しながらお互いの目的を満たし、金銭的・社会的利益を上げられるような社会の枠組みを作ったりすることも重要な仕事の一つです。
私が最初に、「広告代理店」というよりも、「コミュニケーションエージェンシー」という方がしっくりくるという理由には、「コミュニケーション」に関わる本当にさまざまな業務を行っており、その仕事の範囲は、アイディアの数だけ、広がっているように感じているからです。無限の可能性を秘めているという意味からも、後者の方がより適切ではないかと思っているのです。
【それでは医療/公衆衛生分野のコミュニケーションエージェンシーは何をするのか】
冒頭のアンケートに戻ります。
健康情報の入手先はテレビをはじめとするマスメディアから、情報源として参考にするものは病院・薬局等の専門家(=医療従事者)から というのが特徴としてあげられる地域が舞台です。
コミュニケーションエージェンシーというのは、この舞台で、どのようにしたら人々に健康に関する情報(例えば、がん検診の重要性や、禁煙推進、うつ病予防に関する情報)等を届けたらより効果的に、人々が健康的な行動をとってくれるのか というのを常に考え、それを実行していくというのが仕事です。
これには、冒頭のアンケートにも書かれていた、人々がどこで情報を得て、どこの情報をきっかけに健康になるためのアクションを取るのかを理解することが重要になってきます。
次回は、具体的にどのような仕組みでコミュニケーション活動が行われているかについて触れていきたいと思います。
※こちらのメール配信を、夏以降も続けさせていただくことになりました。当初の予定と若干変更になりますが、みなさんから頂いたメッセージや、旬の話題等盛り込み、秋以降も引き続き書かせていただきます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
林 英恵(はやし はなえ)
早稲田大学社会科学部卒業。ボストン大学教育大学教育工学科修了後、株式会社マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンにて、ジュニアストラテジックプランナーとして勤務。2008年より同社のサポートを得てハーバード大学公衆衛生大学院修士課程(ヘルスコミュニケーション専攻)進学。「臨床+α」広報・渉外担当。
 
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