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臨時 vol 49 ロハス川口インタビュー 「足立信也参院議員インタビュー」

医療ガバナンス学会 (2008年4月22日 13:16)


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~ 診療側も患者側も第三次試案に騙されている ~
聞き手:ロハス・メディカル発行人 川口恭
 

――診療関連死の死因調査機関を設立するという厚生労働省のいわゆる第三次試案をどのように見ますか。
第三者機関の設立というのは、横浜市立大学病院の取り違えとか都立広尾病院事件とか、特に福島県立大野病院事件がエポックだったけれど、そうした具体的事案に基づいて動き出したにもかかわらず、第三次試案では現在と何も変わらない。大野病院事件のように医療機関が届出の必要がないと判断した事故でも、後に医師個人が届け出義務違反で逮捕されるという事案の発生を防げない。
もし大野病院事件が有罪だったら勤務医を辞めるというようなことを多くの人から聞いている。診療現場の願いは警察・検察による介入を制限することだが、第三者機関ができればそうなるかのように誤って伝えられている。今回、刑法や刑事訴訟法には全く変更が加えられない。現状は自然死以外、必ず警察が関与する仕組みになっている。その介入は止められない。だから、言葉は悪いが騙され
ていると思う。
逆に自然死であれば、警察・検察は介入しない。自然死か否かの判断をできるのは死亡診断書を書ける医師か歯科医師だけ。その死亡診断書に客観性を持たせるための制度であれば、患者・遺族の納得を得ることもできるだろう。今回は、そのように制度設計すべきだった。
刑事処分につながる道が残される以上、真相究明・再発防止との整合性もない。ちょうど11日に日航機どうしのニアミスで管制官に逆転有罪判決が出た。あれはヒヤリハット報告事例だ。刑事有罪になると、より大きな事故を防ぐためにあるヒヤリハット報告が全く機能しなくなる危険性もある。
第三者試案の不備を挙げるとキリがないけれど、たとえば死亡に至らない多くの有害事象があるのに、重い障害が残った場合でも調査対象にならないのでは、患者・遺族の不満は解消されないし、警察の介入も防げない。
もっと大事なのは、医療者と患者家族との間にある情報の非対称性を埋めないと双方の満足が得られないこと。日常的な診療の段階から双方が納得するには、情報開示と相互理解を助けてくれる仲介者が必要だ。そうした点への目配りもない。委員会に届け出た後は当事者である遺族には意見を述べる機会すらない。
第三者機関ができることによって、現場の労働環境がさらに悪化することも懸念される。モデル事業では集中的に検討を進めても報告まで7カ月かかっている。年に2000~3000件になったら、その調査にあたる人間をどこから出せばよいのか。ただでさえ医師不足なのに、実際問題として大変なことになる。
それから、これから在宅看取りが増えようとしている。突然の思いがけない死は当然ありうる。在宅の場合、自然死か否かの判断は医師個人の決定に委ねられるのでその解決策にもなっていない。結局は大きな病院・特定機能病院の勤務医の負担のみが重くなる。
患者や遺族、医療者にとってメリットはない。
――患者被害者からは、形はどうであれ早く第三者機関を作れという声も出ています。
民主党のプロジェクトチームでも患者遺族からヒアリングをした。彼らが怒っているのは、医療機関に嘘をつかれたことや事実を隠されたこと。しかし大きな病院では既に、広尾病院事件などの教訓を生かし自助努力を重ねてきて、逃げない・隠さない・ごまかさないが、ほぼ共通認識になっている。その過去の話を掘り返している感じがある。自然死か否かで嘘をついたら罰せられるような仕組みを作れば解決する。診断書を書く前にインフォームドコンセントするようにしても構わないのかもしれない。
ひるがえって第三次試案が患者遺族の願いに即しているかといえば、遺族側の意見を聞くというのも入口だけに過ぎず、医療側との軋轢の解消には何も役に立たない。彼らの問題意識は何も解決されないはず。彼らもまた医療者たちと逆の方向に拡大解釈しているか、騙されている。できてしまってから、こんなはずではなかったと思うのだろう。
結局、第三者機関ができた後に残るのは、既に健康保険法や医療法等で存在する厚労省の調査権と処分権の両方の権限強化・肥大化だけだ。
 

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