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臨時 vol 23 高久通信「昼寝は心臓疾患による死亡を減らす」

医療ガバナンス学会 (2008年2月28日 14:13)


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自治医科大学 学長 高久史麿
 

シエスタはスペイン語で昼寝を意味しているが、昼寝の習慣は元々ポルトガルから始まり、スペイン、スペイン語圏の南米やフィリピンに伝わったとされている。また、昼寝の習慣は、中国、インド等の熱帯、亜熱帯地域や地中海沿岸のギリシャ、イタリア、中東、北アフリカでも一般的に見られる。日本でも土木建築、造園等の現場では昼食後に1時間近い昼寝をとる習慣が従来あり、最近では企業でも仮眠室を用意したり、使っていない会議室や談話室を仮眠休憩所として開放するところが増えてきている。
一般的には短時間でも昼寝をすると気分がすっきりして午後の仕事の能率が上がることが昼寝の利点とされているが、最近になって昼寝の健康に対する具体的な利点が報告されるようになっている。例えば、23,681人という多数の人を対象とした6年以上に及ぶギリシャとアメリカの研究者の共同研究では、時々昼寝をする人はしない人に比べて心臓の冠動脈疾患による死亡が12%少なく、毎日昼寝をしている人では、その差が37%にも達するということが報告されている1)。その機序についても、イギリスとイランの研究者の共同研究において昼寝が血圧を下げ、かつ血流を促進するという結果が報告されている。この研究の対象となったのは35歳前後の健康な男女9人で、前の晩の睡眠時間を4時間に制限した上で、午後の2時から1時間昼寝をとらせ、その睡眠の状態を睡眠ポリグラフ計で調べている。また、睡眠中の皮下の血流量をレーザードップラー法という対象者に負担のかからない方法で測定している。その結果、明かりを消して眠り始めた9.7±13.8分間の間に収縮期血圧が4.7±4.5・Hg、拡張期血圧が3.6±2.8・Hg低下、一方、皮下の血流量は9.5±4.3%上昇したと報告されている。なお、それ以上の睡眠をとっても血圧や皮下血流量の変化はわずかで有意差はなかった。また、実際に寝入ることが重要で、目を覚まして横になっている状態を1時間続けても血圧等に変動はなかったとのことである2)。このデータからは30分くらいぐっすり昼寝をすれば血圧が下がり、心臓の冠動脈の血流が増加するということで、私自身、午後、大学から東京に行く時に電車の中でとる昼寝等は私の心臓にとって最適なのではないかと勝手に解釈している。
シエスタと密接に関係しているのは地中海料理である。オリーブオイルをふんだんに使い魚介類や野菜を多く摂る地中海料理は、従来、心血管障害、特に心臓の冠動脈硬化症の予防になるといわれてきたが、この地域の人たちにはシエスタの習慣もある。したがって地中海料理の心血管障害に対する予防効果にシエスタの習慣も関係しているのかもしれない。地中海料理を食べ毎日昼寝をしているのが心臓にとって非常に良いのであろう。
1)Naska, A. et al. Arch.Int.Med. Vol.167:296, 2007
2)Zaregarizi, M.et al. J.Appl.Physiol. Vol. 103:1332, 2007
●プロフィール・たかく ふみまろ
1954年東京大学医学部卒。72年自治医科大学教授、82年東京大学医学部教授、88年同医学部長、95年東京大学名誉教授、96年自治医科大学学長、04年日本医学会会長。医療の質・安全学会理事長。
 

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