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臨時 vol 13 「輸血による悲劇を繰り返さないために (3)」

医療ガバナンス学会 (2008年2月14日 14:20)


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病原体不活化技術の早期導入への提言
信州大学医学部附属病院 先端細胞治療センター
下平滋隆
 

 2007年は国民の血液製剤の安全性に対する意識が大きく変わった年として、後世に記憶されるでしょう。安全な血液製剤の安定供給が急務の課題となると同時に、私たちは、5年先10年先の血液の供給について、安全面と資源の確保という観点から対策を講じる必要に迫られています。  今日、国内献血者のHIV感染者が増加し、また一方で、これまで感染症の伝播に対しては諸外国と比較して安全な国と言われていた日本も、地球規模での病原体の拡大という急激な外部環境の変化にさらされています。このような脅威は、鳥インフルエンザなど、すでに目に見え始めています。輸血血液の供給について大前提から見直さねばならない(パラダイム転換)時期に来ていると考えます。このような状況を打破するための、有力な対策として病原体不活化という方法が注目されています(<a href=”http://mric.tanaka.md/2008/01/28/_vol_6_2.html#more”>http://mric.tanaka.md/2008/01/28/_vol_6_2.html#more</a>)。  日本での輸血血液の病原体不活化技術導入については、2004年には政府の検討項目としてあげられました。欧州および近隣アジア諸国では、血小板や血漿製剤に不活化技術が既に適応され、赤血球については臨床試験を続けていますが、2004年以降、我が国での具体的な動きはありませんでした。それがここへ来て、先月の米国での不活化技術導入に関する動き、および田中康夫議員の参議院予算委員での質問に対する福田総理、舛添厚労大臣の答弁など、急展開を見せています。  我が国で病原体不活化技術導入に関して検討が進まない理由に関しては、幾つかの問題点が指摘されています。最大の問題点は、不活化技術の人体への影響への懸念でしょう。エイズ問題など輸血行政の不幸な歴史から、輸血行政関係者、輸血専門家は、世間やメディアからのパッシングを強く恐れているようです。これは十分に理解できます。しかしながら、この状況を放置しておいていいのでしょうか。病原体不活化技術導入の安全性に関しては、欧州の当局が既に承認しているのです。我が国がすぐにやるべきことは、すでに諸外国で導入されている不活化技術の技術評価、特に安全性に関する試験のデータ評価を中心に、各国の行政に申請されている資料を適切にレビューし、国民・医療従事者に開示することです。そのためには毒性試験などに対するエキスパートの関わりが重要になってきますし、必要に応じて不活化技術に関わる各企業の査察などが求められます。  ここでは、血小板製剤に不活化技術を導入すると仮定した場合、何をしなければならないかを考えてみます。輸血関係者の多くは、日本で不活化技術を導入する際には、全国一律導入になると考えているようです。しかしながら、血液製剤の安定供給の観点からは、全国一斉一律に変更するのではなく、安全基準を明確にして可能な部分から段階的に導入するという柔軟な対応も可能です。 以下は、私の提案です。 1.血小板製造方法の変更と新しい製造方法による製造所(血液センター等)での製造許可が必要です。 2.まずどこかの製造所で製造方法を確立し、その品質規格を設定し、品質規格を検証する分析方法を確立します。確立した製造方法により連続した3回以上の製造物をもとに分析を行い、設定した規格の中に入ることを証明します。 3.これにより再現性を持って新しい血小板の製造方法が確立するので、次に新しい製造方法で製造した血小板製剤の品質と安全性を評価します。安全性に関する諸外国の蓄積データのエキスパートにより、詳細な評価が重要です。試験は前臨床試験と臨床試験の両方が必要です。ただし欧州の方法と同じ範囲であるならば、日本での臨床試験は経験的なものだけでよいとする考え方は、ICH; International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(日米EU医薬品規制調和国際会議)のハーモナイゼーションの観点からも可能です。 4.ここまでの試験結果をもとに、血小板製造方法の変更として承認申請します。 5.承認が下りた段階で、その製造方法を使って他の血液センター等の製造所でのバリデーション(医薬品の製造や品質管理に必要な設備・手順・工程が、期待される結果を与えることを検証し、それを文書化すること)が必要となります。各々の製造所でのバリデーション終了後、製造所ごとに製造方法変更の許可が必要となります。  不活化技術導入には以上のステップが必要であり、急いだとしても長い期間を要します。新興感染症への対策を急ぎ、安全な輸血血液を供給するために、すでに欧州を中心にパラダイム転換がなされていますが、日本はまず、不活化技術導入の可否そのものについて結論を出さなければなりません。そうしている間にもさらに導入時期が遅れ、結果的に諸外国の長期のデータが出る頃にもまだ導入できていないという事態に陥りかねない現状を理解すべきです。世界的には、「不活化技術に関しての長期の安全性を含む評価は、各国が協力してデータの蓄積と情報交換を行なう。市販後調査が重要」という認識でほぼ一致しているのです。

 

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