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臨時 vol 47 「神の手」と呼ばないで

医療ガバナンス学会 (2007年10月30日 14:34)


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亀田総合病院主任外科部長
加納宣康

 
「神の手を持つ医者」という言葉があります。私も、そういう触れ込みでテレビ番組に取り上げられたことがあります。でも私は「神の手」と呼んでもらいたくありません。

謙虚さを忘れたらいけないという自戒の意味もありますが、それ以上にマスコミが作り上げた「神の手」という言葉と医療の現実とがかけ離れているからです。

臨床試験のような特殊なものでない限り、皆さんが受ける手術は、ちゃんとした指導者の下でトレーニングを積んだ平均的医師なら皆できます。腕の良い医師を求めるのは人情として分かりますけれど、マスコミに取り上げられる人でなければダメと思うのは大きな間違いです。多くのメディアは正しい報道をしていると思いますが、中には事実を報じているかすら怪しいこともあります。

「神の手」が独り歩きするのは、目の前の医師よりもっと良い医師、超人がいるはず、と皆さん無意識に考えているからだと思います。それは要するに人間不信のひとつの表現といえます。

医療というのは人間のすることです。人間としての医療者を信じることなしに、良い医療などあり得ません。

またこれも当たり前ですが、医師も人間です。寝る間もなく働けば病気になって当然です。私も心筋梗塞で一命を取り留めたり、脳腫瘍で右耳の聴力を失ったりしています。

しかし現在の日本社会は、医師が超人的に働くことを要求します。世界的に見て人口あたりの医師数や看護師数がとても少なく、責任感を持って患者さんに当たろうとすると超人的にならざるを得ません。

医療従事者数が少なくなる大きな原因は医療費削減です。世界的に見れば日本の医療は安く、しかも医療者の責任感に支えられて質を保ってきました。でも、数年にわたる医療費削減政策によって、破たんし始めています。

私が医師になった当時のように、1人の医師が子供も含めて何科の患者でも診る態勢で良いなら、それで悪い結果が出てもその場に応じて最善を尽くした医療者を訴えないなら、今の医療者数でも、代わる代わる休めるはずです。しかし、人間不信社会ですから、それでは済まないのです。

専門医でなければダメ、ベテランでなければダメというなら、医療費削減政策をただちにやめて、医療者の数も増やす必要があります。

医療費を負担しているのも、元をたどれば皆様です。どちらを選ぶのか、よくお考えください。

(かのう・のぶやす)
1949年岐阜県生まれ。岐阜大学医学部卒業。92年マハドマ・ガンジー・メモリアル医科大学常任客員教授。93年米国外科学会の『International Guest Scholar』(世界で7人)に選ばれる。97年から現職。06年帝京大学医学部客員教授。

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