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臨時 vol 44 「ハーバード公衆衛生大学院留学体験記 その3」

医療ガバナンス学会 (2007年10月15日 14:37)


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–学生生活の実際–■□

石川 善樹

今回は、学生生活の典型的な一日を紹介したい。
①医療経済学の授業

朝10時半より、マーク・ロバーツ教授の医療経済学(Health Economics for Public Health)の講義。みなコーヒーや菓子パン、ヨーグルトを頂きながら、授業を受けている。アメリカならではの光景だ。この授業では、「実践での応用」を標榜しているだけに、教授が過去に関わった、あるいは現在進行形で関わっている、各国の医療制度改革の例を挙げながら授業を進めていく。教授は、各国政府首脳や世界銀行やWHOなどの国際機関、あるいはマッキンゼーなどの戦略コンサルティングファームのスタッフとのやりとりを紹介しながら、授業を進めていく。その様子はまるで、教室と世界がつながっているかのような錯覚さえ覚える。自分は確かに、「生きた学問」を学んでいるのだと、生徒達の目も一段と輝く。ジョークを交えながらの約2時間の授業は、あっという間に過ぎていく。
②お昼のリーダーシップセミナー(無料ランチ付き)

大量のリーディングや宿題、レポートに追われ、どうしても狭く、浅くなりがちな自分の視点を戒めるためにも、学校が主催する「Leadership Seminar」に参加する。無料のランチに釣られたのか、あるいは高邁な思想を抱く生徒が多いためか、その真相は定かではないが、200人近くを収容する階段教室は、セミナーの開始前には、ほとんど満席となる。

このセミナーは、Association of School of Public Healthが現在進めている、「パブリックヘルス分野における教育改革」に即した形で行われている。従来のパブリックヘルスのコア領域である、健康/医療行政、疫学、生物統計、行動科学/健康学習、環境保健に加えて、パブリックヘルスの専門家として身に付けるべきリーダーシップとは何か、みなで考えようという趣旨である。リーダーシップとは何か、とは非常に難しく、複雑な問いであり、そもそも学んで身に付くものなのか、という考えもあるが、これについては回を改めて紹介したい。

“There are two great days in a person’s life–The day we are born and the day we discover why.”
「人生には、素晴らしい日が2つある。一つは、私達が生まれた日。もう一つは、その理由を発見した日だ。」

そんなWilliam Barclayの名言の引用から始まったリーダーシップセミナー。素晴らしい内容に、終わる頃には自然とスタンディングオベーションがおこる。この「ノリのよさ」も、中々日本では見られない光景だ。
③日本の医療制度を考える会

長い一日を終え、夕方6時から日本の医療制度を考える会に参加する。ボストン近郊の日本人有志によって立ち上げられたこの会は、日本語での議論ができるとあって、みな思わず饒舌になる。あっという間に、3時間が過ぎていく。
④日本を出て、世界と出会い、Diversityに触れる。

夜は、ハーバードの各スクールから集まった学生達との飲み会。お互い年齢も、国籍も、生きてきた軌跡も、似ても似つかぬ仲間達。お互いの専門分野も、ビジネス、政治、法律、物理、経済、等々と、大きく異なる。みな、華麗な経歴に一度けりをつけて、「もう一度自分と世界との関係を考えたい」と、真剣にハーバードに学びの場を求めに来ている猛者ばかりである。

不思議な事に、これだけ経歴や興味の異なる仲間が集まっているのだが、顔をあわせれば話題はいつも同じである。

「よりよい社会/世界を築き上げるために、自分たちに何が出来るのか?」

よくある学生の戯言と言えばそれまでだが、語るその目は、真剣そのもの。進む酒の杯とともに、ボストンの夜は暮れゆく。

・・・次回は、「パブリックヘルスのすすめ」、について書かせて頂きます。

1981年2月27日 広島県生まれ
東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、
同大学院医学系研究科修士課程修了
2007年現在、ハーバード大学公衆衛生大学院留学中

著書:「健康学習のすすめ」日本ヘルスサイエンスセンター

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