医療ガバナンス学会 (2007年10月11日 14:38)
保険証を取り上げる側の言い分としては、保険料を払えないくらいなら生活保護を受けなさいということになります。しかし、実際には生活保護が認められるハードルは意外と高いので、挟間で苦しんでいる人は大勢いると思います。また、自立して生きていこうと生活保護を避ける方々の意思を尊重することも大切です。
この問題は、医療とは何か、福祉とは何か、政治に対して重大な問いを突き付けていると思います。政治家として重く受け止め、改善の道を探りたいと考えています。
ただし、国や公共団体の制度として新しく何かしようとすると、予算や手続きの制約から、どうしてもある程度の時間がかかります。現在困っている方々に対しての手立ても別に考える必要があると思います。
そんな中、友人で『いのち輝かそう大賞』の主催者でもある亀井眞樹医師が、緊急避難的に、無料で受診できる医療機関を作ったらどうかと提案されました。
役所のお金をあてにしない民間のしなやかなスピード感に期待すると同時に、道のりの困難さを思いました。一銭の得にもならないうえに、法令上の様々な障害が立ちはだかると予測されます。誰が火中のクリを拾うのだろうと思ったのです。
しかし心配には及びませんでした。東大医学部の須田万勢氏をはじめとする医学生、看護学生が趣旨に賛同して「ともどく」という団体を作り、動き始めてくれたそうです。
考えてみれば、私のゼミの学生たちが中心になって新宿に診療所(コラボクリニック新宿)を開いてから、もう10カ月になります。彼らも、しがらみのない身であっても「やればできる」ことを示してくれました。
「ともどく」メンバーのエネルギーや善意を信頼し、「できる」と信じて支援していきたいと考えています。皆様も、どうかご自分のできる範囲でご協力していただけないでしょうか。
この記事はロハス・メディカル10月号に掲載されています。
著者紹介
鈴木寛(通称すずかん)
現場からの医療改革推進協議会事務総長、
中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員
1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。
教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。