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臨時 vol 39 「福島県立大野病院事件第七回公判傍聴記③」

医療ガバナンス学会 (2007年9月5日 14:41)


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~ これのどこが謙抑的なのか ~

ロハス・メディカル発行人 川口恭


加藤克彦医師に対する被告人質問公判傍聴記の最終回である。前回の傍聴記で検察は何がしたいのかと訝った方も多かったと思うが、今回でだいぶ分かると思う。そして私が何を恐ろしいと思ったのかも伝わるだろう。

検察官 では、子宮の収縮不良があった、その時には癒着胎盤を疑わなかったのですか。

加藤医師 何か話が飛んでいる気がするのですが、もう一度お願いします。

検察官 さい帯を引っ張ると通常なら胎盤はどうなるのですか。

加藤医師 剥離します。

検察官 とすると、引っ張ってもとれずに用手剥離に移った時点で癒着を疑いませんでしたか。

加藤医師 用手剥離を開始した時には全く頭にありませんでした。

検察官 子宮収縮剤を注射すると通常は収縮が起きるものですか。

加藤医師 起こる方も起こらない方もいて、人それぞれです。

検察官 人それぞれとは、たとえば注射後30秒、1分で収縮が起きるのか、どの程度の時間がかかるものですか。

加藤医師 収縮剤を打たなくてもいく人もいるし、収縮剤打って収縮する方も、マッサージして収縮する方もいます。

検察官 本件では収縮剤は効果がありましたか。

加藤医師 効果はあまりありませんでした。遅かったと思います。

検察官 どの時点から効果が出てきましたか。

加藤医師 収縮剤を打ってマッサージを始めたら収縮してきました。

検察官 用手剥離を始めたのは、どの時点ですか。

加藤医師 マッサージをして収縮してきた後にさい帯を引っ張っても剥離して来なかったので用手剥離に移りました。

検察官 その時点では癒着しているとは思いませんでしたか。

加藤医師 思いませんでした。

検察官 通常の娩出後に児の処置に要する時間はどの程度ですか。

加藤医師 4〜5分です。

検察官 何までの時間ですか。

加藤医師 胎盤剥離までの時間です。

検察官 検察での取調べで、再現実験をしましたね。

加藤医師 しました。

検察官 それは正確なものでしたか。

加藤医師 行為がいくつか抜けていました。

検察官 実際には何分だったのですか。

加藤医師 分からないという問答があって、実際にやらされましたが、冷静さを欠いていたので、時間が早くなってしまいました。

検察官 なぜ手技が抜けたのですか。

加藤医師 理由になるか分かりませんが、動揺して、ゆっくりやるべき所で早くなってしまいました。

検察官 検察官から早くやれとか手技を抜けとか言われたわけではないでしょう。

加藤医師 はい。

検察官 具体的に何が抜けたのですか。

加藤医師 ゆっくり時間をかけるべきところを早くやってしまいました。

時刻は既に午後5時。もうそろそろ終わりになる時間のはずなのに何だかよく分からないやりとりをしているなあと思っていたら、弁護人が「あのー」と手を挙げた。

弁護人 いや、異議じゃないんですけどね、この反対尋問いつまでやるつもりなんですか。帰りの新幹線もありますんでね。この後、東京で仕事があるので、私午後6時には出なきゃいけないのですが、再主尋問の時間があるか心配になってしまいまして。

検察官 あと1時間半はかかります。

ザワザワザワと、どよめく法廷。

弁護人 期日前整理では弁護側2時間、検察側3時間となっていませんでしたか。既に3時間を超えていますよ。

検察官 とりあえず3時間だが、主尋問の内容が分からないので、4時間になるか5時間になるか流動的と言ったはずです。

裁判長 期日前整理の調書には3時間と書いてありますが。

検察官 流動的と申し上げたはずです。

裁判長 再主尋問は何分くらいかかりますか。

弁護人 30分くらいは必要だと思います。既に20問はありますから。

裁判長 検察も5時半までに終わらせることはできませんか。

検察官 無理です。

裁判長 どこかでいったん切って期日を改めますか。

弁護人 ならば、せめて反対尋問は終わらせてもらえませんか。

裁判長 被告人質問ですからね。。。では、検察は5時50分で終わらせてください。

我が意を得たように検察官は裁判長に一礼したが、こういうのを昔の人は「無理が通れば道理が引っ込む」と言ったのではなかったか。密度濃く質問して時間が足りないならともかく、因縁としか思えない質問で時間を浪費した挙げ句である。

検察がゴネると通っちゃうんだな、と思った。因縁はつけるわ、ゴネるわ、真っ当な市民のやることではない。

しかも後で分かるのだが、ここから突然追及が直線的で厳しくなる。となると、ここまで延々時間を浪費してきたのは加藤医師を疲労させ混乱させる目的があったと考えざるを得ない。法律家の感覚は、市民の正義感とはかけ離れたところにあることをまざまざと見せつけられ、また背筋が寒くなった。

検察官 続けます。再現実験の結果、かかったのは35秒程度ではありませんでいたか。

加藤医師 はい。

検察官 その違いは何ですか。

加藤医師 通常ではあり得ないことですし、頭を整理してからやってみると4〜5分かかりました。

検察官 手術当時、癒着胎盤の場合、自然に娩出されないという知識を持っていましたか。

加藤医師 それは知っていました。

検察官 今回は疑わなかったのですか。

加藤医師 それより収縮不良の方に目がいっていました。

検察官 癒着胎盤の可能性を排除したのですか。

加藤医師 最初は全く考えていませんでした。

検察官 産科の教科書には、注意事項として通常の用手剥離の際「静かに」行うよう書いてありますが、「静かに」とはどういうことですか。

加藤医師 静かにということではないでしょうか。

検察官 具体的にどういうことですか。

加藤医師 ボンヤリとは分かりますけれど、具体的には・・・

検察官 丁寧に力を込めないこと、ではありませんか。

加藤医師 そういう意味だと思います。時と場合、場所にもよると思いますけれど。

検察官 「静かに」というのに理由はあるのでしょうか。

加藤医師 無理をしないでという意味だと思います。

検察官 なぜ無理をしないでなのですか。

加藤医師 無理をすれば、胎盤は剥がれないか、子宮筋層を傷つけたり、胎盤が残ってしまったりするからだと思います。

検察官 収縮が進んでいない子宮は薄いですか。

加藤医師 収縮が進めば厚くなるという意味では薄いです。

検察官 薄い時に無理にやったら壁を突き抜けてしまうことはありませんか。

加藤医師 いやちょっと分かりませんけれど。

検察官 先ほどの話だと用手剥離に移るまで4〜5分でしたね。

加藤医師 はい。

検察官 胎盤剥離をしづらくなったことはありますか。

加藤医師 はい。クーパー併用になる前には少しありました。

検察官 それまでは通常の用手剥離でしたか。

加藤医師 はい。

検察官 剥離できなくなったのとは違うのですか。

加藤医師 スピードは遅くなってきましたけれど剥離できないというわけではありません。

検察官 それは手にかかる感触とか圧力、引っかかりで判断したわけですか。
(接続が変なのでメモが漏れているかもしれません)

加藤医師 所々というか場所によってそういう所がありました。

検察官 取れない場所だったのではありませんか。

加藤医師 いやそうではありません。

検察官 検察官に指が3本、2本、1本という調書を取られたけれど、そういう状況ではなかったのですね。

加藤医師 はい。

検察官 それならば用手剥離で最後まで行けるでしょう。

加藤医師 それもできるんですが、そのころには癒着胎盤も頭に入ってきたので指先の感覚だけでは危険かなと思いました。

検察官 どういう所から癒着胎盤を疑うようになったのですか。

加藤医師 気持ち剥離しづらくなったことからです。

検察官 癒着と判断するのは、どういう場合ですか。

加藤医師 胎盤剥離した時に強い出血がある場合です。

検察官 他にはありませんか。

加藤医師 剥離が終わった後に胎盤が残ってしまう場合です。

検察官 用手剥離を続けられない時に癒着とは判断しないのですか。

加藤医師 それは用手剥離が全くできないなら臨床的に癒着胎盤と判断することはできると思います。

検察官 最初から剥離できないということですか。途中からできなくなった場合はどうですか。

加藤医師 剥離して出血があるかないかが関係してくると思います。

検察官 出血量が大きいという判断ですか。

加藤医師 それが特徴の第一だと思います。

検察官 何が大量の出血の原因ですか。

加藤医師 癒着を剥がした際の出血です。胎盤を剥がせば出血はするので、それがとても多いことになります。

検察官 剥離してみないと分からないのですか。

加藤医師 そういうことになります。

検察官 クーパーを使おうと判断したのはなぜですか。

加藤医師 胎盤の3分の2以上剥がれてて、もうすぐ剥がし終えると考えたこと、目で見えていたのでクーパーの方が剥離する部分に力を込めやすいのでピンポイントで狙えると思いました。

検察官 終わりに近づいていたという認識ですか。

加藤医師 はい。

検察官 用手剥離でも剥がせたなら、指先には触感がありませんか。

加藤医師 ある程度はあります。

検察官 クーパーは指に比べて判断しやすいのですか。

加藤医師 クーパーを使うと感触は判断しづらいのですが、使えるところは指を使ったので。

検察官 クーパーを持ち替えたのは何回ですか。

加藤医師 詳しくは覚えていません。

検察官 どういうところで持ち替えましたか。

加藤医師 指先では剥がれにくいと感じたところです。

検察官 どちらが多かったですか。

加藤医師 併用し始めたころは用手の方が多かったです。

検察官 用手剥離しづらい所とは、どこでしたか。

加藤医師 場所は特定できませんが、索状物があったような場所です。

検察官 他にはどういう所ですか。

加藤医師 具体的には言えません。

検察官 場所ではなく状態で言うとどういう場所ですか。

加藤医師 状態で言うと、用手剥離しづらい場所です。

検察官 索状物に切れ目を入れたというのは、どの辺のことですか。

加藤医師 何カ所かありますが、子宮後壁のどちらかというと下の方です。

検察官 胎盤が残存していたのは、どの辺りですか。

加藤医師 場所的には用手剥離した所です。

検察官 (メモ漏れ)

加藤医師 普段と変わらなかったので病理の結果を見て驚きました。

検察官 粗っぽく剥がしたとか急いで剥がしたことはありませんか。

加藤医師 そういうことはありません。

検察官 索状物から出血はありませんでしたか。

加藤医師 今回はなかったので血管が入ってなかったと思います。

検察官 それは切る前に分かるものですか。

加藤医師 事前には分かりませんが、チョコチョコ切れ目を入れるので、もし血管が入っていれば分かります。今回はありませんでした。

検察官 癒着胎盤(メモ読めず)出血する危険性があるのではありませんか。

加藤医師 それはなかったです。特段、異常な出血もなかったので。

検察官 用手剥離の方が速く進むのですか。

加藤医師 はい、面積的には速く進みます。クーパーもなでるように使うなら速いのですが、削ぐようにやると遅いです。

検察官 なぜ遅くなるのですか。

加藤医師 慎重にやるためです。

検察官 慎重にやる理由は何ですか。

加藤医師 癒着の可能性があるからです。

検察官 用手剥離の際は指先が見えないのですか。

加藤医師 見えません。

検察官 クーパーを使うと先端が見えるのですか。

加藤医師 見えるように使っていました。

検察官 出血がある場合、クーパーの先端は見えますか。

加藤医師 見えません。

検察官 今回、出血があったのではありませんか。

加藤医師 僕の認識的には大量というか多い出血があったとは感じていませんでした。

検察官 子宮の下部に血が溜まって見えないのではありませんか。

加藤医師 今回は見えたので多くなかったと思います。刃先は見えました。

検察官 やろうとした時に血が見えて中断したことはありませんでしたか。

加藤医師 途中で中断したことはありませんでした。

検察官 出血は吸引していたのですね。

加藤医師 はい吸引していました。

検察官 M先生(第一助手)が吸引していたのですね。

加藤医師 はい。

検察官 剥離と吸引と同時にはできないのでないですか。

加藤医師 いやお腹の中に一緒に入ってます。

検察官 用手剥離単独の時とクーパー併用の時の時間の割合はどの程度ですか。

加藤医師 用手の時の方がスムーズだったのでクーパー併用の方が時間がかかったと思います。

検察官 捜査段階では3:7と証言していますが。

加藤医師 どの位の時間剥離していたのかハッキリ覚えていません。

検察官 クーパーを併用し始めたのはどこですか。

加藤医師 後壁の途中です。

検察官 剥離を続けたのは収縮を期待してですか。

加藤医師 はい。

検察官 子宮体部と下部とで収縮の違いはありますか。

加藤医師 割合的には頭の方、てっぺんの方が大きいです。

検察官 前置胎盤の出血が多いのはなぜですか。

加藤医師 子宮下部から出血するからです。

検察官 なぜ子宮下部だと出血が多くなるのですか。

加藤医師 子宮下部は○○膜が○○(メモ読めず)しているような場所が多いので癒着まではいかないのですが、収縮するのが弱いことが多いです。

検察官 付着する部位の収縮が悪いのですか。

加藤医師 症例によってはそうです。

検察官 剥離している時、本当に収縮を期待していましたか。

加藤医師 どの辺りを剥離しているかによって、ある程度変わりますが、分かりませんが収縮すると思うんですが。

検察官 前置胎盤だけでも出血するのですか。

加藤医師 はい。

検察官 前置胎盤で出血があるから急いで剥がしたのではないのですか。

加藤医師 それより剥がし終えるまでちょっとだったので、急いで剥がすというのも違うのですが。

検察官 胎盤剥離中はどこを剥離しているかは分からないものですか。

加藤医師 ええ、現場では子宮のどの辺りかは分かりません。

検察官 捜査段階で弁護士と相談した時も今日と同じ説明をしましたか。

加藤医師 はい。

検察官 今回あなたの罪状認否でクーパーを使った理由について、どう述べたか覚えていますか。

加藤医師 覚えてないですけど。

検察官 第一回の公判で「剥離しづらくなったので、できるだけ素早く子宮前壁から剥がす~」と述べませんでしたか。

加藤医師 いや、そういう趣旨ではありません。

検察官 なぜそういう趣旨ではないのに、公判で述べたのですか。

加藤医師 ・・・

検察官 弁護士が冒頭陳述したのは、あなたの述べてないことですか。覚えてませんか。

加藤医師 覚えてます。

検察官 やっぱりクーパーを使ったのは急ぐためじゃないの。

加藤医師 いえそうではありません。

検察官 急ぐためと説明したんじゃない。

加藤医師 もう一度お願いします。

検察官 素早くというのが理由でしょ。

加藤医師 用手剥離しづらくなると時間がかかるので。

検察官 クーパーを使ったデメリットは何ですか。

加藤医師 ・・・

検察官 帝王切開だと視野が確保されているからクーパーを使ったという説明でしたよね。

加藤医師 クーパーも色々な使い方をしていたので、使い方によってはスピードが遅くなりますから。

検察官 クーパーを使った根拠は何ですか。

加藤医師 文献です(メモ不完全)。

検察官 そんなに胎盤剥離にクーパーがいいなら、事前に(メモ欠落)

加藤医師 説明してますよ。

検察官 今のべたことは当時のあなたの考えですか。

加藤医師 はい。

検察官 事故後、いろいろな人と話をしたり文献を読んだりして、それでこう考えるようになったのではありませんか。

加藤医師 いえ違います。

検察官 胎盤剥離後の全身状態について伺いますが、血圧低下はありませんでしたか。

加藤医師 剥離中に下がり出しましたが、一時的なものでした。

検察官 出血量が多くなると血圧は下がりますか。

加藤医師 一般的にはそうです。

検察官 循環血液量を維持するためにポンピングが行われていたのは認識していますね。

加藤医師 はい。

検察官 H医師が2本のラインを通じて輸液を行っていたのですね。

加藤医師 はい。

検察官 輸液するのはよくあることですか。

加藤医師 たまにあります。血圧が下がった時なんかにやります。

検察官 出血量が増えて循環血液量が足りなくなった時にするのではありませんか。

加藤医師 それもあります。

(麻酔記録を示す)

検察官 2時50分にヘスパンダーを入れていますね。

加藤医師 はい。

検察官 このときにポンピングが始まったのですか。

加藤医師 いつからポンピングしていたかは分かりません。

検察官 出血をどの段階で確認しましたか。

加藤医師 胎盤を娩出した後です。

検察官 どの位後ですか。

加藤医師 そんなに時間経っていないと思います。

検察官 どこからですか。

加藤医師 子宮壁全体からジワジワ出てくる感じでした。

検察官 子宮後壁下部からではありませんか。

加藤医師 いや別に、体の傾きの関係で子宮下部に血液が溜まることはありますが、下部から出ていたということではありません。

検察官 2555という数字を当時聞きましたか。

加藤医師 覚えがあります。

検察官 5000は記録(メモ不完全)

加藤医師 5000ミリリットルぐらいか?と書きました。

検察官 場所は特定できませんか。

加藤医師 表に書いてあります。

検察官 間もなくそんなに出血があったわけですね。

加藤医師 間もないかどうかは(メモ不完全)

ここで約束の午後5時50分になった。依然として尋問の終わる気配がないなと訝っていると

裁判長 6時10分まで休憩します。まだ終わらないでしょう。

検察官 あと30分はかかるかと思います。

法廷中に大きな吐息が充満し、加藤医師の肩が小さく丸まった。

裁判長が何を言おうが、検察官が尋問を続けるつもりなら、実質的には終わらせることができないということではないか。相手が元気なうちは答えようのないことをネチネチ聞いて、制限時間を超えてから本論に入る。これが正義なのか? 法の番人は、ルール・モラルを守らないでもいいのか?

午後6時10分再開。先ほど東京で仕事があると言った弁護士は帰った。

検察官 手術が終わった後で経過を作成しましたね。

加藤医師 はい。

検察官 いつ付けたものですか。

加藤医師 手術当日か午後12時を回っていたかだと思います。

検察官 どういう内容を書いたか覚えていますか。

加藤医師 はい覚えています。

検察官 どのようなことを書きましたか。

加藤医師 詳しくは覚えていません。

検察官 見れば分かりますか。

加藤医師 はい。

(手術経過を示す)

検察官 これまでの説明と違うところがありませんか。

加藤医師 混乱した中で記録したものです。

検察官 あえて事実と違うことを書くことはありますか。

加藤医師 記憶がハッキリしない状況については

検察官 胎盤剥離後15分で5000ミリリットルという記述がありますね。

加藤医師 はい。

検察官 これは事実の経過ですか。

加藤医師

検察官 「ペアンで」剥がしたという記述がありますが。

加藤医師 「クーパー」の誤りだと思います。

検察官 なぜ誤ったのですか。

加藤医師 この時の心理状態が心の置きどころがないというか動揺しながら書いたためだと思います。

検察官 「索状物を子宮より切除して」というところでクーパーを使ったのが正しいのですね。

加藤医師 はい。

検察官 なぜ胎盤剥離した時にペアンを使ったと間違えたのですか。

加藤医師 はい。

検察官 「辛うじて剥離可能な状態」とは、どういう状態ですか。

加藤医師 用手剥離がしづらくなったことだと思います。

検察官 「時間を要し出血も多かった」と書いてあるのは。

加藤医師 剥離終了の時なのか、その後のことなのか。

検察官 剥離終了時ではないのですか。

加藤医師 カルテにはそう書きましたが、実際は違います。

検察官 事実があったのでそのように記載したのではないのですか。

加藤医師 そういうわけではありません。

検察官 なぜ、そのように記載したのですか。

加藤医師 麻酔記録をしっかり読んだわけじゃなかったので、5000ミリリットルが妙に頭に残っていて、そういう記載になったと思います。

検察官 胎盤剥離が終わった時、出血が5000ミリリットルだったのではありませんか。

加藤医師 この時はそうではないと思います。

検察官 先ほど2555が頭にあったと証言しましたね。

加藤医師 はい。

検察官 ならば、なぜ2555を書かなかったのですか。

加藤医師 スタッフの5000が頭に残っていて、そのように書きました。

検察官 あなた自身も見たのではありませんか。

加藤医師 5000を見ましたが、いつ見たのかハッキリしていません。

検察官 裏は続きですか。

加藤医師 はい。

検察官 bleeding5000mlくらいか、と書いてありますね。

加藤医師 はい。

検察官 これはあなたが体験したことそのままではないのですか。

加藤医師 そのままではありません。この時点かどうかは分かりません。

検察官 ご遺族に説明しましたね。

加藤医師 はい。

検察官 同じように説明しましたか。

加藤医師 詳しくは覚えていません。

検察官 ハサミを使って切ったら出血が多くなったという説明をしませんでしたか。

加藤医師 覚えはありません。

検察官 事実経過の中でクーパーと用手を併用したのですね。

加藤医師 はい。

検察官 クーパーを持ち替えたのを実演してもらえませんか。クーパーを用意しましたので。

(弁護側から「弁護側が同じことをやりたいと言ったら手続きを踏めと言われて写真提出になったのに、検察だったら認められるのか、などと異議が出て、持ち越しに)

検察官 冒頭陳述の際「信頼してくれた患者さんを亡くしてしまったことは医師として忸怩たる思いがある」と述べましたが、医師として患者が死亡してしまって残念だという以外に、結果的に落ち度があったと思う事はありますか。あの時、あれをやれば良かったと思うことがありますか。

加藤医師 落ち度は特にないと思っています。医師として精一杯のことをやりました。精一杯のことをやったからこそ、その結果にすごく悔しい思いをしています。

検察官 当時の知識や技術、経験が足りなかったとは考えていませんか。

加藤医師 医師として日々勉強していく身にあるわけですから、もっと勉強しようという意味ではあります。

検察官 MRIをやっておけばよかったとは思いませんか。

加藤医師 MRIをやっておけばよかったとは思いません。

検察官 癒着胎盤に対する知識・認識が不足していたとは思いませんか。

加藤医師 それも思いません。

検察官 医局から人に来てもらえば良かったとは思いませんか。

加藤医師 この時の状況から見れば、来てもらえばよかったとは思いません。

検察官 用手剥離にクーパーを併用したことは問題だったとは思いませんか。

加藤医師 それも思いません。

検察官 あなた自身の診断・手技にも落ち度はなかったと考えているのですか。

加藤医師 はい。特に落ち度はなかったと考えています。

こうしてS検事による長い長い反対尋問が終わり、初回の傍聴記で触れた取り調べ状況に関する補充尋問が別の検事によってなされた。こうして、証人尋問は午後7時に終わった。

文字起こしを経て今思うのは、S検事の尋問、特に最後の1時間は鋭かったということと、であればこそ、時間引き延ばしなど姑息なことをせず、なぜ正々堂々と尋問しなかったのかということである。

この事件、堀病院事件と続いた刑事司法の動きが、その後の大淀病院事件、先日の奈良死産事件の引き金となったことは間違いのないことであり、それでも加藤医師の起訴が正しかったと考えているのなら策を弄するのでなく正々堂々と立証すべきである。でなければ、検察はそういう所か、と世の中から見放される。

(この傍聴記はロハス・メディカルブログ<a href=”http://lohasmedical.jphttp://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a> にも掲載されています)

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