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臨時 vol 26 「ワインと寿命の延長、アルツハイマーの防止にも?」

医療ガバナンス学会 (2007年7月1日 15:32)


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自治医科大学学長
高久 史麿


1日1杯以下のワインを毎日飲んでいる人は平均寿命が長いという長期間にわたる疫学研究の結果が最近発表された。行ったのはオランダの研究者で、1900~1920年の間に生まれた男性1,373名を対象にして1960年から2000年までの40年間の長期にわたる追跡調査を行っている。最終年が2000年であるから、当然その間、対象者の多くが死亡している。この間、対象者に対して行った調査の内容は常用している飲み物、食事の内容、喫煙の有無、体重、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がん等の疾患の有無である。この結果分かったことは1日に1杯以下のワインを飲んでいる人は心疾患を含めた上記のすべての疾患で、死亡する率が低い、すなわち長生きするということであった。同じアルコール類でもビールやウイスキーの類よりもワインの方が有効で、ワインを飲んでいる人は飲んでいない人に比べて平均3.8年、また他の類のアルコールを飲んでいる人に比べ、2年寿命が長かったと報告されている。この研究の結果から得られる結論は、もしもあなたがアルコール類を常用しているなら、1日1杯の適量のワインにとどめておくべきで、それなら病気にかかりにくく寿命も延びるということである。しかし、ワイン1杯と言っても具体的な量についての記載はなく、私自身も漠然とした考えしかなかった。たまたま最近ある論文でグラス1杯が5オンス、すなわち約150mlであることが述べられていた。150mlと言えば、かなりの量である。ワイン好きな人にとっては喜ばしいニュースであるが、ワインに関するこのような記事の内容のほとんどすべては欧米の研究者による仕事の紹介である。欧米人と日本人とでは体格も違うし、体内のアルコール代謝能力も日本人の方が低いので、この150mlという値を直ちに日本人のために適応してよいかどうかは問題である。あえて言えば、日本人の場合には1杯を100mlくらいにした方がいいのかもしれない。

ワイン、特に赤ワインは動脈壁中への脂質の蓄積を抑制することによって心筋梗塞や脳梗塞に対して予防的に働くことが以前から知られているが、最近のマウスを使った動物実験で、赤ワインがアルツハイマーの進行を遅らせることがアメリカのマウントサイナイ大学の研究者によって報告されている1)。彼らはアルツハイマーモデルマウスを赤ワインを飲む群、他のアルコール類を飲む群、水だけを飲む群の3群に分け3カ月間にわたって観察している。各マウスが飲んだ赤ワインの量は人間の1日分に換算すると男性でグラス2杯、女性で1杯に相当する量としている。その結果、赤ワインを飲んだ群のマウスは記憶力を試す迷路試験の成績が最もよく、一方他のアルコール群と水だけの群との間では相違がなかったとのことである。その後マウスを解剖したところアルツハイマー脳の特徴であるβ―アミロイド蛋白の蓄積も赤ワイン群のマウスだけ減少していたと報告されている。しかしこれはあくまでもマウスを使った実験であり、必ずしも人間のアルツハイマーに当てはまらないことは言うまでもない。
参考文献
1) FASEB Journal. Nov.2006

 

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