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vol 10 「コーチングに対する疑問や質問」

医療ガバナンス学会 (2007年5月20日 16:04)


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インテグラス株式会社
取締役/エグゼクティブコーチ
渡部一男(わたべかずお)

こんにちは。私はインテグラス株式会社エグゼクティブコーチの渡部と申します。今回も前回と同様に、私が今日までに企業研修で出会ってきた数千人の受講者、そして1コーチとして出会った数百人のクライアントの皆さんから尋ねられた疑問、質問を思い出しながら、その時のやり取りや、私なりの答えを通じて、「コーチングって何?」から「コーチングって・・・かも?」「コーチングって・・・かな?」と皆さんに色々考えていただければと思います。
● 人への興味関心

前回の第1回では、コーチング的コミュニケーションは、日本ならでは、我々日本人だからこそ必要かつ開花する可能性がある文化?である。と私は思っています。というところまでお話しました。

実際に、もうコーチングはアメリカよりも日本で大きな拡がりをみせています。その大きな理由のひとつは、「素直な心で相手の話を聴き、お互いの価値観を認め合う」

実はこれは日本人のほうが優れているから。だと思います。

でも、日本人は総じて照れ屋さん、表現するのが苦手。対してアメリカ人はコミュニケーションをツールとして、スキルとして扱い、表現してみせるのが得意。そうすることで「私たちはお互いの生命、財産を犯さないよね」という契約を成立させることが重要と知っているから。そういう明確な契約の場での日本人のあの不思議な「微笑み」は彼らにとって「不気味」なんですね。

私たちは「素直な心で相手の話を聴き、お互いの価値観を認め合う」ことができるという、せっかく持った優れた才能を表現することで、コーチングを取ってつけたような手法とせずに、お互いの最大限の能力を引き出し、成果に結びつけるという本来の目的を手にすることができるのだと思っています。
Q1.「私はどうもおせっかいが過ぎてねぇ・・・マネジャーとしては失格?」

ある企業で、私のコーチングトレーニングに参加していた40代初めのマネジャーさん(仮にAさんとします)がこう言って、お昼休みに近寄ってきました。Aさんはトレーニングの最中にもよくしゃべり、あまり人の話を聞くのは得意ではない、でも憎めないタイプ。私はそんな印象を持っていました。

何故憎めないタイプか?それは彼が楽しそうにしているから。彼本人だけでなく、その周りの人たちも楽しそうにしているからでした。

そこで、

A1.「どうしてマネジャー失格だと思うのですか?」

そう、答えではなく、質問を返しました。

ちなみに、皆さんに質問です。「コーチに質問すると何が得られますか?」

さて、何でしょう?「人生を変えるような素晴らしい答え?」

時にはそんな奇跡もあるかもしれませんが、コーチに質問すると得られるのは「もうひとつの質問」です。

さて、話を戻します。Aさんは私の質問にこう答えました。

「私は5人の部下を預かっています。一人ひとり色々な才能を持っていて、非常に優秀でいい奴ばかりなんです。そんなメンバーと仕事をしているのに、私はこのチームの業績を今一つ高めることができないでいる。」と。私はこの答えにいくつもの興味関心を持ちました。そして訊いてみました。

「5人の部下一人ひとりの才能って?」「非常に優秀?」「いい奴?」そう、業績以外のメンバー一人ひとりのことですね。

Aさんは人として、5人の部下一人ひとりのことをほんとに良く知っていました。Aさんは部下であることの前に、縁あって仕事を一緒にすることになった人に心から関心を持っていました。だから、職場で、アフターファイブの場で、時には自宅に招いて、彼らのことを知っていったのです。

こうした部下のことを知るための行為そのものをAさんは「おせっかい」だと思っていました。なぜなら「業績に結びつかない行為」だったからです。

ここまでで、お昼休みの時間は過ぎてしまうわけですが、その後縁あって、私はAさんのコーチになりました。

コーチングを開始して、間もなくわかったことがありました。それはAさんはよくしゃべり、苦手なのは人の話を聴くこと。ではないということでした。実は、Aさんはよくしゃべり、人の話もよく聴いていました。苦手なのは自分のこと(思い)をしっかり表現し、伝えることでした。

Aさんの5人の部下たちは、彼の職場での、アフターファイブの場での、時には自宅に招いての行為を決して「おせっかい」なうるさいオヤジなどと思うことなく、面倒見が良く、人柄も優れた良いマネジャーだと感じ、時にはプライベートな相談を持ちかけてもいたのです。

そんなマネジャーのもとで、彼らはマネジャーに恥をかかせないような成果を挙げているつもりで仕事をしていました。そう、彼らは力を発揮しているつもりでした。でもそれは、Aさんが思う「優秀な部下たちの総力」とはほど遠いものでした。Aさんもまた、部下たちに関心を示し、面倒をみることで彼らへの思い
を表現したつもりになっていたんですね。伝えているつもり=伝えていない ということです。

あとは簡単、なにしろ双方とも相手のことを良く思っているわけです。言ってみれば「両思い」、久しぶりに使いました。今度は私が「おせっかい」を焼く番です。

Aさんに訊ねました。「メンバーの総力を結集した成果は今の何倍?」

Aさん「1.2倍・・・、」私「1.2倍ですか?」

Aさん「1.3いや1.5倍?」私「1.5倍ですか?」

Aさん「ぇえ~?1.8倍かなぁ~?」私「・・・」

・・・・・・・・しばらくの沈黙。Aさんは本気で考えています。・・・・・・

Aさん「・・・2倍です!」 私「2倍ですね!」Aさん「ハイッ!2倍です!」

これで決まりです。そして、Aさんはこの根拠ある期待をしっかり部下であるメンバーに伝えました。

そこでの詳細なやりとりは省きますが、ここまでで約3ヶ月、2倍の数値にたどり着くのに更に半年かかりました。

そこから半年経った今も、私はAさんのコーチを続けており、Aさんのチームの定期的なミーティングにも参加しています。Aさんのチームは今、新メンバー1人が加わり、業績は社内でトップを維持しています。

Aさんの「おせっかい」の才能は相変わらず、というより以前にもまして活き活きと発揮されています。何より大事なことはチームのメンバー一人ひとりが自分のできることをしっかりと実行し、それが自分の役割を果たし、期待に応えるということであり、自分自身の成長にも繋がることを知っている、ということです。

今や、このチームのテーマは「数値」ではなく、「チームの総力が発揮できているか?」ということになっており、自分のできることをしっかりやると同時にメンバーとの連携、チーム力というものを常に意識する強い集団になっています。

メンバー一人ひとりに関心を持ち、よく知り、その上で「根拠ある高い期待」を表現することのできるAさんには、今後も自信を持って活き活きと「おせっかい」という優れた才能を発揮し続けてほしい、と私は、そして誰よりもメンバーがそう思っています。

それでは、ごきげんよう。
【略歴】
1979年 中央大学経済学部卒業。
1979年 富士ゼロックス株式会社入社。
2004年 株式会社富士ゼロックス総合教育研究所入社。
2006年 インテグラス株式会社エグゼクティブディレクター就任。

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