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臨時vol 17 「鈴木寛・現場からの医療改革推進協議会事務総長インタビュー」

医療ガバナンス学会 (2007年5月20日 16:05)


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~ 対話型医療ADRを作らないと、日本の医療文化は破壊されます ~

(ロハス・メディカル発行人 川口恭)


――前回のお話で、医師不足対策の中に「対話型医療ADRを作る」という一見異質なものが混ざっていたので引っかかりました。なぜ、対話型医療ADRが医師不足解消に役立つと考えるのですか。

昨年の福島県立大野病院事件以来、医療現場の皆様を厚生労働大臣のところへお連れするなど、医療者の皆さんと国会との架け橋として、いろいろなお手伝いさせていただくことが度々ありました。そこで、改めて現場のご苦労と、一生懸命やっても結果が悪かったら刑事訴追のリスクまで負わなければならないという不条理さと、医療現場の皆さんのご心労を痛感いたしました。こうした理不尽な刑事訴追を放置したならば、萎縮医療、保身医療を招くことは間違いありません。また高度な医療に携わる優秀な志ある医療者もいなくなってしまうとの危機感のもと、この危機を回避するために、私自身もありとあらゆることをやろうと考えました。

私にできることとして、党内あるいは超党派の議員たちと現場の医療者とを何度もお引き合わせしました。1年前までは医療バッシングの報道に引きずられるだけだった永田町の空気も随分変わったと思います。またマスメディア自体も、産婦人科の悲惨な実態が報じられるようになるなど、一定の改善は見られたと思います。1年前の世論に比べると、幾分か正常化したのではないでしょうか。

そういった活動を通して、医療訴訟に関する相談を受け、アドバイスをするようなことも多々あり、それでよく分かったことは、そもそも、医療と裁判制度とは相性が悪いということです。つまり、医療現場をよりよくするには、医師と患者とが協力・協働として二人三脚で病と向き合い乗り切る、これが望ましい姿だと思います。しかし、生身の人間ですから、最善を尽くしても思わぬことが起きてしまうことはあります。しかし、そうしたときに、医療過誤事件として、裁判に持ち込まれた瞬間に、プロの法律家が双方に介入してきて、それまで基本的には協力しあう間柄が、完全に引き裂かれ、敵と見方に峻別されて、裁判に勝つため原告・被告とも自分の正当性を過剰に主張するよう指導され、そして、そのことに違和感を感じながらも、だんだん、対立型の行動様式に追い込まれていくのです。欧米のように弁証法的解決に慣れている人々ならまだしも、日本文化の中では、反省の弁なく、ただ、自らの正当性のみを主張しあうなかで、お互いに傷つきショックを受けることになります。

しかも、患者側がたとえ勝訴したり、医師が逮捕されたとしても、経済的補償を受けられても、心は癒されません。真実の解明や再発防止にはつながりません。医療事故など、ないに越したことはありませんが、万一、事故に巻き込まれてしまった場合、患者、家族は、二度と同じような事故がないように、再発防止策が講じられ、次なる犠牲者が救われた、世の中にとってなんらかの意味のあったと感じることができれば、少しは癒やされることもありますが、そうしたことがなければ、まったく報われない死や後遺症になってしまいます。まさに、患者・家族のせめてもの癒やし、慰めすら、裁判では得ることはむずかしいのです。

そこで対話型医療ADRに着目したわけです。これは紛争解決のステージにありながら、医療者と患者の対話を持続させてコミュニケーションをキープしつつ、紛争の解決を図ろうとするアプローチですね。
――医療と裁判の相性が悪いことと、ADRが医師不足解消につながることとの関係を、さらに説明していただけますか。

昨今、診療段階からレコーダーを持ち込んでいるような患者が散見されます。医療者を信じていないわけで、そのような現場で医療者がその能力を最大限に発揮して、患者さんを治してあげようとは、到底、思えません。医師も人の子ですから、法的に必要最小限の医療行為を行って、なるべく患者とは、かかわらないようにするのが人情というものです。こうしたことの結果、どんどん望ましい医療現場が壊れています。実際、福島県立大野病院事件以後、医療者たちのモチベーションはかなり損なわれ、萎縮医療・保身医療の流れが日本中に蔓延し始めようとしています。ここで食い止めておかないと、日本の良き医療が制度としてのみならず文化としても崩壊してしまいます。

食い止めるには、壊れつつある医師と患者の間の信頼関係を取り戻し、再構築することが必要です。最大の打開策が対話型ADRだと考えています。
――具体的にどうやって推進するのですか。

これまでは、医療ADRを具体的に普及に努めておられる医療者や法律家の方々に協力してきましたし、これからもお手伝いしたいと思っています。ただ、実際にこれが定着・普及するかどうかは、現場の医療者や患者が、どこまで切実にほしがっているかにかかっています。欲しがっていることを世の中に示すには、ぜひとも本当の生の声を挙げていただきたいと思います。そうしないと、現在の厚生労働省の検討会の議論などを見ていると、裁判下請け型ADRでお茶を濁されてしまいますよ。

裁判下請け型ADRができてしまうと、医療のあらゆる場面に裁判の構造や文化が持ち込まれてしまいます。これは医療訴訟よりさらにタチが悪い。医師・患者間の信頼関係が破壊されるかどうかの重要な岐路に立っていることは間違いありません。本当に現場の望む声を霞ヶ関・永田町まで届けてください。

というのも、医療者は声を挙げるのが大抵遅すぎます。政策を決めている途中は無関心で、決まってから悲鳴をあげるという印象が少しあります。政策というのは、一事不再理ですから、決まる前に声を挙げておかないと、必ず後悔することになります。まさに検討会が開かれているこのタイミングで、皆さんのイマジネーション力を最大限に発揮して、どんどん積極的に声を発して欲しいと重ねて申し上げます。

このインタビューは、『ロハス・メディカル』ブログ(<a href=”http://lohasmedical.jphttp://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a>)にも掲載されています。

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