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臨時vol 14 「速報・福島県立大野病院事件第四回公判傍聴記 下」

医療ガバナンス学会 (2007年5月1日 16:06)


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~ 勝負あったか、綾は残ったか(下) ~

ロハス・メディカル発行人 川口恭

続いて午後の部。作山洋三院長(匿名にする必要はあるまい)に対する証人尋問である。午前の部に比べれば実体があったというか、弁護側のチョンボもあって、少しだけ白熱した。立証に関係しそうなやりとりだけ拾っていくことにする。

尋問を担当したのは新顔のかなり若そうに見える男性。ソフトだが淀みのない口ぶりは、やはりキレるんだろうなあという印象である。

院長の答えも非常によく整理されている。が、途中で滔々と専門分野である整形外科的な解説をしようとしたりして最高責任者としての責任をどこまで感じているのだろうかと、少々首をかしげたくなった。

検事  証人は、この帝王切開手術が行われることを事前に知っていましたか。

院長  知りませんでした。

検事  初めて情報を得たのはいつのことですか。

院長  12月17日午後3時半ごろです。

検事  どこで知りましたか。

院長  院長室の前です。

検事  誰から情報を得ましたか。

院長  事務シカン(注・字が分からない。次長にあたるという)のKさんからです。

検事  どのように情報を得ましたか。

院長  Kさんが、私に「先生ご存じですか。帝王切開で5000ミリリットルの出血をしている患者さんがいるそうですよ」と言いました。そこでどうなっているんだろうと心配になって手術室へ行きました。

検事  どうなっていましたか。

院長  手術室に入る前に採血室があるのですが、そこで職員がお互いに採血しあっていました。

検事  手術室に入ったときはどのような様子でしたか。

院長  患者さんは全身麻酔がかかっていて、麻酔医がパンピングで輸液していました。加藤医師は患者さんのお腹の中に両手を入れていました。後で聞いたら圧迫止血をしていたそうです。

検事  心電図モニターは見ませんでしたか。

院長  見ました。

検事  モニターを見た時、表示はどうなっていましたか。

院長  多少上下はありましたが、脈拍が140くらいで最高血圧が60くらいでした。

検事  どのように考えましたか。

院長  出血量が7000ミリリットルくらいだろうという認識でしたので、出血性ショックだろうと思いました。

検事  ショックの原因はどのように考えましたか。

院長  出血量が多いですから、循環血液量が足りないことによるのだろうと考えました。

検事  生命の危険があると感じましたか。

院長  この状態が長く続くとマズイという認識はありました。

検事  マズイとは具体的にどのようなことですか。

院長  循環血液量の足りない状態が長く続くと、心臓、腎臓といった重要な臓器の組織が死んでいってしまうので、長く続けば危ないと思いました。

検事  どのようにすれば生命の危機を脱せられると考えましたか。

院長  ショック状態を脱するには血圧を上げることが必要だと考えました。

検事  そのためには出血を止めることも大切ですか。

院長  そうだと思います。

検事  証人は具体的に何かしましたか。

院長  お腹の手術で出血が止まらないのですから、技術的に得意な先生を呼んで止めてもらったらどうだろうかと考え、外科部長のM先生に入ってもらったらどうか、と声をかけました。

検事  被告人はどう答えましたか。

院長  こちらの声が聞こえなかったのか間がありまして、加藤医師の後ろにいた看護師が「院長がこう言ってます」と伝えて、その時に気づいたようで「いや大丈夫です」と答えました。

検事  M医師(注・第二回公判で証言した外科医)も松本部長を呼んだらどうかと提案していたことを知っていますか。

院長  はい。手術室に入ったところで、左手にいた看護師から「先ほど、M先生からM部長を呼んだらと提案があり、またH医師(麻酔医)からは双葉厚生病院のK医師を呼んではという提案があったんですけれど、加藤先生が大丈夫ですとおっしゃって呼ばなかったんです」と説明されました。

検事  それを聞いて、被告人に再度応援を要請したらどうかという提案をしたことはありますか。

院長  ありません。

検事  なぜですか。

院長  それは手術の指揮系統の話をしないといけないと思うのですが、手術中の体制のことは執刀医の指揮系統のことです。もちろん全身管理は麻酔医の責任なので手術を止めることもできますが、執刀医が大丈夫です、というんだから、それ以上は言えません。応援を呼びませんかと言うこと自体が異例のことだと思います。

検事  そして証人はどうしましたか。

院長  途中で退出しました。

検事  どのようなタイミングで退出したのですか。

院長  頼んでいた血液が到着しまして、輸血を開始しますと、間もなく本当にすぐだったと記憶していますが、血圧がスッと120程度まで上がりましたので、血液が間に合ったんだなあとホっとして退出しました。

検事  退出してからどうしましたか。

院長  整形外科の外来へ行き書類書き、1週間分のですな、をしました。

検事  次にこの手術の情報をどのように得ましたか。

院長  書類書きを終わって院長室に戻ったところ、看護部長から「あの患者さんダメだったようですよ」と聞かされました。

検事  何時ごろのことですか。

院長  18時30分ごろだと記憶しています。

検事  どのように思いましたか。

院長  私は生命の危機は脱して大丈夫だと思っていたので大変驚きまして、どうして?と思いました。

検事  そしてどうしましたか。

院長  急いで手術室に行きました。

検事  手術室に被告人はいましたか。

院長  手術室にはおりませんでした。手術室の手前の更衣室の方へ入るところで会いました。

検事  会話はしましたか。

院長  しました。

検事  どのような会話ですか。

院長  どうだったの?と聞きました。

検事  被告の対応は。

院長  やっちゃった、というようなことを言いました。

検事  被告の様子はどうでしたか。

院長  非常に落胆してうなだれているというか、ボソっと「やっちゃった」と言いました。

検事  被告の心情を察するところはありましたか。

院長  大変なことになってしまったという認識だと思います。医師として最悪のことですから。

検事  何か声をかけましたか。

院長  大変だったね、だったか、ご苦労だったね、か労いの言葉をかけたと記憶しています。

検事  確認ですが、被告人と会ったのは手術室に入る前ですね。

院長  はい、そうです。

検事  手術室の中はどのような様子でしたか。

院長  H医師とM医師とが心臓マッサージをしておりました。

検事  心臓マッサージで救命できそうでしたか。

院長  私が見ていましたところ、心臓マッサージをした時だけは脈を打つのですが手を休めるとすぐに平坦になってしまう状態でしたので、救命不能だろうと判断しました。

検事  被告人から手術の説明を受けたことはありますか。

院長  あります。

検事  いつごろですか。

院長  その日の夜の10時半ごろからだったと思います。

検事  どこで受けましたか。

院長  院長室で受けました。

検事  他に医師はいましたか。

院長  加藤医師とH医師とから説明を受けました。

(中略)

検事  医師法21条は知っていますか。

院長  知っております。

検事  警察への届け出が必要なのは、どのようなときですか。

院長  医療事故が起こった時、私どもの病院にも安全管理マニュアルがありまして、医療過誤による死亡・傷害の疑いがあるときは病院長が届け出ることになっております。

検事  マニュアルでは病院長に届出義務があることは知っていましたか。

院長  もちろん知っておりました。

検事  医療過誤とはどのようなものですか。

院長  医療事故の一類型であって、その原因が医療的準則に反する行為であった場合です。

検事  医療過誤かどうかについて、当時はどのような認識でしたか。

院長  医療過誤があるとは思いませんでした。

検事  どのような根拠でそのように考えたのですか。

院長  医療過誤にあたるような実例を挙げて問いましたが、執刀医・麻酔医ともに、過誤にあたるようなことはなかったとの答えでした。極めて専門的な事柄について完全に理解しているとは言えませんが、普通に言われているような過誤の実例に対して、あったかなかったかと言えば全くなかったとの答えでしたので。

検事  癒着胎盤の知識はありましたか。

院長  まったくありません。

検事  警察に届け出る必要性は感じませんでしたか。

院長  医療過誤がないと考えましたので、それなら届ける必要はないと考えました。

検事  医療過誤がないとの認識が変わることはありませんでしたか。

院長  ありました。

検事  どのようなときですか。

院長  死亡原因を突き止め今後の再発防止につなげるために事故調査委員会を開いていただきました。その委員から、癒着胎盤で用手剥離をする際に器具等を使うのは教科書的にはマズイという発言を聞いてです。

検事  発言を聞いてどのように感じましたか。

院長  動揺しまして、もしかするとやってはいけないことをやってしまったのでないかと思いました。委員の先生方は3人とも、産婦人科の専門医で、きちんとした病院の部長とかですから。

検事  残る2人の委員から異論は出なかったのですか。

院長  異論・反論は全く出ていませんでした。

検事  事故調と同様な話は被告人から出ましたか。

院長  ありません。

検事  事故調の意見について被告人と話をしましたか。

院長  一度だけあります。

検事  どのような話ですか。

院長  だいぶ経ってから、日にちはちょっと分かりませんが、胎盤剥離をするのにクーパーを使ったらいけないんじゃないの?と言いました。

検事  被告はどう答えましたか。

院長  そんなことないよ。ケース・バイ・ケースだと思うよ。筋っぽい所をちょっと切っただけなんですけどね、と言っていました。

検事  どのような所を切ったと理解しましたか。

院長  はがれないところだと思いました。

検事  その発言を聞いてどのように感じましたか。

院長  事故調では器具を使った剥離はいけないと教科書に書いてあるということだったのに、知らないのかな、と思いました。

これまでの公判では全く触れられることのなかった医師法21条に関して尋問が行われている。今回の証言からムリクリ筋を立てると、院長に対して加藤医師が虚偽の説明をしたために院長が届出できなかったという風になるのだろうが、いかにも苦しい。

ただし、今回は検察お得意の「取り調べの際にはこう供述したではないか」攻撃がなかったので筋書きが苦しく見えるだけで、検面供述調書には加藤医師に不利な証言が記載されていると見るべきだろう。

さて弁護側の反対尋問である。この反対尋問で勇み足というか、しないでもいい尋問を行ってヤブヘビになるボーンヘッドがあった。

弁護人 手術時のスタッフの数(注・執刀医、助手、麻酔医、オペ室ナース、器械出しナース、外回りナース2、助産師2)は十分だと思いますか。

院長  事故があってから、さらに増えましたが、一般的には十分だと思います。

弁護人 途中から看護師が入って鉤引き(コーヒキ)をしていたのは見ましたか

院長  見ました。私が入った時には看護師がやっておりました。

弁護人 他にも応援の看護師が入っていませんでしたか。

院長  見たように思います。

弁護人 記憶喚起のためにこちらから申し上げますがH看護師は入っておりましたか。

院長  入っておりました。

弁護人 K看護師長は入っておりましたか。

院長  入っておりました。

弁護人 手術室に入ったとき、加藤医師が圧迫止血をしていたとのことでしたが、その方法を覚えていらっしゃいますか。

院長  両手をお腹の中に入れているのが見えただけです。

弁護人 帝王切開の際、子宮を切開する長さ、面積は分かりますか。

院長  ちょっと分かりません。

弁護人 では、執刀医が双手圧迫している時に、他の人が手を入れるだけの面積はありますか。

院長  そんなに入らないんじゃないですかねえ。

弁護人 全身管理の面で応援を必要だと思ったらH医師が呼ぶこともできるのでしょうか。

院長  もちろんです。彼が必要だと思えば呼ぶことができます。

弁護人 先ほど全身管理は麻酔医の管轄で手術を止めることもできるとおっしゃいましたが、ということは加藤医師の了解がなくても応援を呼ぶことは可能だったわけですよね。

院長  あっ、そういう意味か。その意味でしたらH医師の独断でやることはできないですね。執刀医とお互いの了解のもとで行うことですから。

応援を呼ぶべきだったという論拠を突き崩して、ここまでは快調である。

弁護人 手術当日、加藤医師、H医師から事情説明を受けた際、他に同席者はいましたか。

院長  いました。事務長と事務シカンが同席していました。

(中略)

弁護人 胎盤剥離の際にクーパーを使ったことへの違和感は感じましたか。

院長  まったく感じませんでした。

弁護人 整形外科では剥離の際にクーパーを使いますか。

院長  通常の手技です。ただしクーパーは太いので、整形外科ではクーパーより先が細いメイヨー型とかメッツェン型を使うのが一般的です。メイヨー型と申しますのは(整形外科関係の解説は省略)

ここからが、やぶへびになった尋問である。

弁護人 席上、胎盤を剥離することで出血が止まることの説明は加藤医師からありましたか。

院長  明確な記憶はありません。

弁護人 手書きのメモがあるのですが、これは22時半から説明を聞いた際に書いたものでしょうか。

院長  その通りでございます。

弁護人 そのメモには、胎盤を剥離すると子宮が収縮して止血されるということが書いてあるのですが。

院長  明確な記憶はないのですが、そう書いてあるんだとすれば、そのように聞いたのだと思います。私の記憶にありますのは、12月20日の院内の検討委員会の際に加藤医師がそのように説明したのは明確に記憶しているのですが。

どのようにやぶへびだったかは後ほど説明するとして、一連の尋問をもう少し記載する。

弁護人 警察への届出については、誰からどのようなタイミングで話が出ましたか。

院長  事務長さんが、何時ごろだったかはハッキリしませんが、警察への届けはどうしましょうか、と言ってきました。

弁護人 どう答えましたか。

院長  医療過誤があったかなかったか分からないので、加藤医師やH医師の話を聴いてみないと分からないじゃないか、と答えました。

弁護人 22時30分からの話し合いで話は出ましたか。

院長  事故がありますと県への届けもする必要があるのですが、ちょうどその話をしている時に事務長さんが県の病院グループ参事に電話をしまして、その電話で私も参事と話をしました。で、今いろいろとお聞きしましたが、医療過誤がないから、警察へ届け出る必要はないと思うよと言いました。

弁護人 それは院長室での話の終わった後でしょうか。

院長  お話の終わるころ、事務長が電話がつながっているからと言ってきました。

弁護人 安全管理マニュアルによると、警察へ届け出るかどうかは院長が判断し、判断に迷った際は県の病院課長と相談して決めることになっていますね。

院長  はい。

弁護人 病院課長と相談はされたのでしょうか。

院長  正確に申しますと、マニュアルを作ったときとは変わっておりまして、職名が病院課長から病院グループ参事に変わっております。

弁護人 マニュアル上、相談する相手だったということですね。

院長  はい。

弁護人 グループ参事はどのように言っていましたか。

院長  そうですか、ということでしたけれど、事故の内容と今後問題になりますよねという会話をしました。

弁護人 問題になりますよね、と話をしたのですか。

院長  いやニュアンスとして、そういう内容の話をしたというだけのことです。

弁護人 問題とは刑事事件になるということでしょうか。

院長  いえ、刑事事件を念頭に置いたことではなく、民事上で賠償の話が出てくるといったようなことです。

弁護人 県に電話したのは何時ごろでしょう。

院長  夜の12時近かったのではないでしょうか。

弁護人 その時間に電話がつながるのは不自然だとは思いませんか。

院長  事務長さんと前から連絡を取り合っていたのだと思います。

弁護人 県でも連絡を待っていたということでしょうか。

院長  だと思います。

弁護人 翌日以降、どんなことをしましたか。

院長  翌朝、保健所へ報告しまして、それから12月20日(注・17日が金曜日だったため週明けの月曜日に開催したとのこと)に院内の検討委員会を開きました。

弁護人 加藤医師、H医師以外の出席者は誰ですか。

院長  院長、副院長2名、外科部長、内科部長、事務部長、事務シカン、看護部長、手術室師長、病棟師長です。

(後略)

検察側の再尋問である。

検事  県の事故調査委員会設置の経緯について知っていますか。

院長  大野病院には産婦人科専門医が1人しかおらず、結果の重大性に鑑みてきちんと調査する必要があると私自身が考え、産婦人科専門医による調査委員会を県にぜひ作ってほしいとお願いしたものです。ただしメンバーなどは県が選んだので、私は関与していません。

検事  院内検討委員会の結論をそのまま受け入れる気はなかったのでしょうか。何か疑念があったということでしょうか。

院長  人が1人亡くなっているわけですから、もっと専門的な立場から調べてほしいと考えたまでです。

検事  先ほど弁護側の尋問で出てきた手術当日のメモに関してですが、胎盤を剥離することで止血されるとの説明を聞いたのですね。

院長  明確な記憶にはありませんが、メモにあったのなら出たのだろうと思います。

検事  メモを取ったのは1回だけでしょうか。

院長  何かあるたびに、その都度メモを取っておりました。

検事  メモに関して福島地検いわき支部での事情聴取の際に説明していますね。

院長  私が説明文をつけて提出しました。

検事  メモを見れば、当日どんな説明があったか思い出せますか。

院長  だと思います。

検事  供述調書に添付されたメモを示したいと思います。

弁護側 供述調書は不同意です。

検事  メモを示すだけです。

裁判長 メモを示すだけなら、よろしいですね。

検事  このメモに見覚えがありますか。

院長  これは私の字ですし、私が書いたものです。

検事  12月17日のメモには、先ほど弁護側が述べたような記載が見当たらないのですが、どこにそのような記述があるか示していただけないでしょうか。

弁護人たちが慌てて資料をひっくり返し始める。

院長 (しばらく指を添えながらメモを追ったあと)そのメモにはありません。

驚いた。記載があったのは別のメモとのことで、もちろん故意に誤ったのではないと思うが、虚偽の前提に基づいて証人から証言を引き出した「引っ掛け」尋問をしてしまったことになるではないか。裁判長が交代したばかりなのに心証が悪いこと、この上ない。

さらに、検察側の再尋問が終わったあと、この取り扱いを巡ってひと悶着あった。

裁判長 確認ですが、先ほどのメモは証拠として取り扱ってよろしいですね。

弁護側 供述調書を不同意にしておりますので、そこに添付されたメモも不同意です。

検事  弁護側はメモに基づいて質問したのですから、法廷供述への添付文書として扱うのが適当だと思います。

弁護側 やりとりは全て供述調書に残っているのですから、それで十分ではないですか。

検事  弁護側が、そもそもメモがあることを前提に質問をしておりますから、その信用性を裁判所に確かめていただくためにも添付が相当であると考えます。

裁判長 裁判所も証拠と一体のものとして添付する扱いを取りたいと思います。

弁護側 では、弁護側はこのメモに関連する質問を撤回いたします。

検事  既に再尋問まで行われております。

裁判長 撤回したいという意思は分かりました。で、メモを添付することは良いですね。

弁護側 添付することには異議を申し立てます。

裁判長 異議を棄却します。

弁護側 どういう理由で添付するのでしょうか。

裁判長 信用性を判断するためですね。

不同意にしていた検面調書が裁判所へ渡ることになってしまった。両陪席判事は代わっていないので裁判全体の行方を左右するほどのことではないと思うが、素人目には最後の悪あがきと併せて大変印象が悪い。対して検事はソフトにクールに随分とポイントを挙げたと思う。

なお、検察側再尋問の最後に、検察側が今後どうやってメンツを保とうと考えているのか、また院長が何を恐れているのか、示唆に富むなあと感じるやりとりがあったので、それをご紹介して本稿を終わりたい。

検事  証人は産婦人科専門医による事故調査委員会の設置を求めたとのことですが、麻酔科の専門医による専門委員会の設置は申し入れたでしょうか。

院長  申し入れておりません。

検事  なぜですか。そのような話は出なかったのですか。

院長  出ておりません。

検事  終わります。

院長  あの、そのことについて、少し申し上げてもよろしいでしょうか。

裁判長 どうしますか。

検事  どうぞ。

院長  事故調査委員会の際にも、麻酔チャートに基づいて専門家の意見を聴いておりますので、決して検討していないわけではないと思います。

検察は立件する対象を間違えたと考えているのでないか、そんな気がする。そして、その意図は院長にも伝わっており、院長はH医師や自分に飛び火しないようにするのに必死で加藤医師のことを思いやる余裕はないのかもしれない。供述が終わって、検事席には深々と何度も頭を下げたのに、加藤医師の方は一瞥もしない院長の挙動を見てボンヤリとそんなことを考えていた。
なお、この傍聴記は、「ロハス・メディカルブログ」<a href=”http://lohasmedical.jphttp://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a> にも掲載されています。

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