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臨時vol 2 高久通信 「赤ワインをめぐる新しい話題」

医療ガバナンス学会 (2007年1月31日 16:15)


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適量の赤ワインが心疾患の予防に有用なことは周知のとおりである。最近、赤ワインの健康への有用性に関して注目を集めている論文が発表されたので、ご紹介したい。

その論文は、赤ワインの中に多く含まれているresveratrol (レスベラトロール)に関してである。レスベラトロールが線虫等の下等動物や魚の寿命を延長させることは知られていたが、アメリカのハーバード大学並びに国立長寿医療センター研究所の研究者たちは、このレスベラトロールがより高等な動物、すなわちマウスに対しても※寿命の延長をもたらすことを見いだし報告している。すなわち両施設の研究者たちは、1歳のマウスを正常食群と高カロリー食群(総カロリーの60%は脂質から)に分け、高カロリー群のマウスの半数にレスベラトロール5.2mg/kg/日あるいは22.4mg/kg/日を投与している。この量のレスベラトロールを、人が赤ワインを飲むことによって補給するとなると、1日25本から100本近く飲まなければならず、到底不可能である。

しかし、アメリカではレスベラトロールが既にサプリメントとして市販されており、より高濃度のサプリメントを作製するならば、人でも十分服用可能とのことである。高カロリー食を取ったマウスは、当然正常食マウスよりも体重が増加し、寿命の短縮、運動能力の低下、インスリン抵抗性の増加(糖尿病になりやすい)、脂肪肝、肥満に伴う各種検査値の異常が認められるようになる。
一方、高カロリー食と一緒にレスベラトロールを取ったマウス群は、同じように、体重の増加は見られるが、そのほかの点は正常食群のマウスと全く同じで、高カロリー食群に見られた寿命の短縮、運動能力の低下、インスリン抵抗性の増大、脂肪肝、各検査の異常等は全く見られなかったと報告されている。すなわちレスベラトロールの摂取によって体重の増加は防げなかったにもかかわらず、肥満に伴う様々な異常が妨げられたという研究の結果である。また、この予防効果はレスベラトロールをより多く取った群のほうが著明であった。

この研究者たちはこの結果があまりにも明白であったため、Nature誌に急いで投稿し、レスベラトロール投与高カロリー群のその後の経過を追うとともに、正常食のマウスにレスベラトロールを投与したら、どのような効果が見られるかを今後追究するとのことである。
マウスの実験結果を人への応用にまで持ってくるためには、なお数多くの段階を経なければならないことはいうまでもないが、メタボリックシンドローム、特にインスリン抵抗性の増加による糖尿病が現在大きな問題になっていることを考えると、レスベラトロールの将来の臨床への応用の夢が広がるのも当然であろう。

※Baur, J.A., et al. Nature doi:10.1038/nature 05354, 2006

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