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臨時vol 37 「HCAP体験記 その4」

医療ガバナンス学会 (2006年12月15日 16:19)


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ハーバード大学数学・物理学科三年
北川 拓也

 

こんにちは、高校のころの友達と昨晩飲んできて、色々痛いところも指摘してもらい、一歩成長できたかな、と考えているハーバード大学数学・物理学科の北川です。前回は僕がいかに自分を海外の大学にアピールしたか、というところまで書きました。

化学オリンピックで自分の願書に箔をつけた僕は、プリンストン、イエール、ハーバード、MIT,シカゴ大学の五つの大学に願書を送ることにしました。これらの大学は非常に知名度も高く、世界的に競争率が激しいので、僕としても入る確信はありませんでした。(常日頃から持ち合わせている過信をでもって、入ることを信じてはいましたが。)ですから、もしものことを考え、一応受験勉強もしていました。半分、東大に受かってハーバードに受かったらかっこいいな、と考えていたところもあります。そうです、基本的に僕は合格することしか考えていなかったのです。

幸い、イエール以外の大学には奨学金付で合格することができました。一般的にIvy Leagueと呼ばれる大学(上の中ではプリンストン、イエール、ハーバード)では合格すれば自動的に、生徒の家庭が必要なだけの奨学金を得られます。つまりあまり収入の多くない家庭の生徒は無条件で大学に合格すると同時に、金銭的にその大学に四年間通うことを保証されるわけです。ハーバードの合格がわかったのが十二月の中旬、その他の大学は三月あたりでした。というのもアメリカの大学にはearly decisionと呼ばれる制度があり、一つの大学だけ合否を早めに知ることができるのです。十二月の時点で合格が分かった僕は、大変painfulだった日本の大学受験をせずにすみました。

この後、どの大学に入学するかということで悩んだわけですが、少し面白い話があります。もともと僕は村上春樹が昔教えていたというプリンストンにいくつもりでした。宇多田に惹かれてアメリカに行った僕は、村上春樹に惹かれてプリンストンにいこうと思ったのです。今振り返ってみれば、なんと自分が学ばない存在であるのかに愕然とします。当時はやっていたBeautiful mindという映画の舞台がプリンストンであったことも僕をひきつけた一つの理由です。アメリカでは多くの大学を併願できるので、各大学が良い生徒を集めるために、pre-froshweekendという、大学合格が決定したが、どの大学に入学するかが決まっていない生徒が大学を見学できる週末を用意しています。そこではたくさんの催し事が開催され、また大学の授業を聴講することもできます。僕は飛行機代が高い、ということでもともとpre-frosh weekendにはいくつもりがありませんでした。しかし、ある日、会社を経営していらっしゃる友達のお母さんとお話をしているうちに、お金は出してあげるから、是非ともいってきなさい、ということになりました。そのお母さんも昔、イギリスにいたときに、ある資産家の方から援助を頂いたようです。そして結局僕は、ハーバード、MIT,プリンストンへ行き、最終的に自分の肌に一番あっていたハーバードに行くことを決めたのです。この体験から、僕は人との出会いの大切さ、そして寛大に人間へ投資することの意味、というのを少しばかり理解することとなったのです。そしてこれが、「人間は努力することで物事を成し遂げるが、人間はその努力の方向性を正しい方向に導く価値観を、人と出会うことで形成するものなのだ」、と僕が考えるようになった、第一の体験でした。また後に詳しく書きますが、この「人との出会い」をもっとうみだそう!と形にしたのが今僕のやろうとしているHCAPというプログラムなのです。

何はともあれ、pre-frosh weekendを体験し、やはり僕にはHarvardがあってるのではないか、という結論にいたり、Harvard に大学を決めました。大学を決め、高校も卒業した僕は半年ほどの暇がありました。日本では四月卒業ですが、アメリカは9月が学期の開始なのです。高校が日本で大学がアメリカ、という人の多くはこの間、一時的に日本の大学に通う人が多いのですが、僕は受験をしなかったので、兎に角暇をもてあましていました。当初の予定では必死に数学と物理をやり、入学する際にはかなりハイレベルなクラスを取れるようにと頑張るつもりでした。しかし、予定は未定、一ヶ月ほど解析学と呼ばれる数学をやっていたのですが、何か疲れてしまい、どうしても手がつかなくなってしまいました。今振り返ってみれば、それは論理はおっていたものの、本当の意味で理解していなかったために疲れてしまったのです。ここから、あまり学問というのは急いで勉強しても身につかない、楽しくない、ということを学びました。今でも焦って勉強をすれば、あまり勉強が楽しくなくなり、やる気がなくなってしまいます。やはり数学、物理を学ぶ上で一番大切なのは、自分が楽しんでいる、ということなのです。

一ヶ月で数学と物理に疲れてしまった僕は、前から目をつけていた、模擬国連というインカレサークルに入ることにしました。模擬国連というのは、文字通り、国連を模擬するサークルです。国連では各国の代表が集まり、あるトピックについて議論することで決議案を作ります。この過程を、一人一人が各国の代表となり、自国にとって、例えば核軍縮というトピックについて、どういう方向性に国連の決議案が決まれば、利益になるのか、ということを考え、実際の国連をシミュレーションするのが、このサークルの活動です。この活動は大変勉強になります。まず取り扱ったトピックの国際問題について知識が深まります。その国際問題は国連の決議ではどのように取り扱われているのか、国際法ではどのような取り決めになっているのか、ということを知ることができます。また国連をシミュレートすることで、国連がどのようにして決議案を採決するのか、ということを熟知することができます。つまり国連の中での国際法の決まり方、というのを知ることができるわけです。確かに物理や数学を勉強することはできませんでしたが、国際政治を勉強できたことは大きな収穫の一つでした。時には二日ほど徹夜をして行うこの模擬国の会議では、一緒に決議案を練り上げた友達と非常に仲良くなることができ、それもこの活動の大きな魅力だと思い増す。この活動を通じて、科学に偏ってしまうMITよりも、教養というものを大切にするハーバードに入ったことを嬉しく思いました。

これがハーバードに入るまでの僕の体験記でした。こういった体験が今の僕を形成し、また僕の次の一歩を決定しているのだと思います。次は大学に入ってから、アルクの森田さんに出会うまでの僕の体験を書いてみたいと思います。この森田さんとの出会いこそが今HCAPをやることになったきっかけなのです。

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