医療ガバナンス学会 (2006年11月30日 16:22)
その結果、上記の生活情報の中で対象者の死亡と唯一関係があったのは、1日
に飲む緑茶の量であった。すなわち1日5杯以上緑茶を飲んでいる人は、緑茶を
1杯以下しか飲んでいない人に比べて有意に死亡率が低く、この死亡率の低下は
心血管障害による死亡でより明らかであった。また、その低下は女性で特に著し
いとのことである。
具体的なデータを紹介すると、5杯以上の女性は、1杯以下の女性に比べて心
血管障害で死亡する割合が31%低く、一方、男性では22%低かったと報告されて
いる。心血管障害の中でも緑茶の脳梗塞に対する予防効果が最も著しく、5杯以
上の女性は1杯以下の女性よりも62%も罹患率が低下し、一方、男性では42%で
あった。このように緑茶の心血管障害、特に脳梗塞に対する予防効果が男性より
も女性のほうにより強く現れる原因として、男性のほうがたばこの喫煙率が高い
ためではないかと推測されている。しかし、緑茶が予防効果を発揮したのは心血
管障害に対してだけで、胃がん、肺がん、大腸がん等のがんに対しては、有意な
予防効果が認められなかったとのことである。
なお各種飲料の中で心血管障害に対する予防効果があったのは、緑茶だけで、
ウーロン茶、紅茶にはこのような予防効果が認められていない。カロリーがほと
んどないことも緑茶の大きな利点であるといえよう。緑茶をよく飲む日本人にとっ
て朗報であることは間違いない。
※Kuriyama, S. et al. JAMA Vol.296 p.1255, 2006
■著者紹介
高久 史麿(たかく ふみまろ)
自治医科大学内科教授、東京大学医学部第三内科教授、国立病院医療センター院
長、国立国際医療センター総長を歴任後、平成7年5月東京大学名誉教授、平成
8年4月から現職(自治医科大学 学長、日本医学会 会長)