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臨時vol 32 「HCAP体験記 その3」

医療ガバナンス学会 (2006年11月15日 16:25)


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ハーバード大学数学・物理学科三年
北川 拓也

 

こんにちは、プロジェクトを三つも抱え込んでるくせに9時間も寝て、甲斐性なしのハーバード大学物理・数学科、北川 拓也です。前回は僕が高校一年の時にテキサスへ留学した話を書きました。今回のテーマは「自分をアピールしよう!」です。
高2として母校である灘校に帰ってきた僕はまだハーバードに行こう、ということを考えていませんでした。高校一年のとき、ひたすら生物や物理を勉強していた僕は、今度は教養をつけるべく、片っ端から新潮文庫などの新書を読み始めました。他にやりたいことが見つからなかったからです。というのも、三年間馬鹿みたいにやっていたテニスもやめ、テニスをやめてから勉強していた英語も大体満足できるところまでやってしまい、次の目標というものが定まらなかったのです。交換留学も終わり、一安心、ということもあったのでしょう。ひたすら携帯をいじり、時々女の子とメールをしたりしてどきどきわくわくの青春を過ごしていた気もします。この目的の定まらない中、約半年ほど新書を読む生活を続けた後、読むだけでは学問というのは絶対にものにならないと悟りました。一日に二冊ほど本を読むことを目標としていたのですが、どうしても疲れてしまいますし、頭の中で消化されないんです。正直、一日二冊も本を読んだ日には、一冊目の本の内容を思い出すのが困難でした。ここで役に立つ知識というのはインプットとアウトプットのバランスがあって初めて自分のものになるのだと思い知りました。この経験から、アウトプットをおろそかにしている日本の教育というものに疑問を覚えたのです。
そんな生活をして、高三に差し掛かるころ、受験という影が僕の目の前をちらつき始めました。僕もそろそろ進路を決めないといけない、ということで、とりあえず受験勉強をはじめました。その時の僕にとって受験勉強というのは格好の目的であった気がします。身近で、他人に評価されやすく、周りのみんなもやっている。さらに自分が進学するために必要、となれば、とりあえずやってみよう、ということになったのもうなづけます。そうやって受験勉強しはじめたわけですが、MITにあこがれていた僕は海外の大学というのも視野にいれないともったいないのではないか、と考えました。当時すでにSAT(アメリカにおけるセンターのようなもの)を高1の時に受けており、悪くない点数を出していたので願書に必要なものを集めやすかった、という事情もありました。そんなことで、なんとなしにアメリカの受験、例えばハーバード、イエール、MITといった大学に願書を出すには何をすればいいか、そしてアメリカのどの大学が良いのか、ということをインターネットで検討し始めました。これは恐らく高三のはじめ、四月ごろだったと思います。こういうことを日ごろから考えておくと、無意識のうちに具体的な準備をするようになるものです。
アメリカの大学が生徒を選考する際、重視することの一つにエッセイというものがあります。エッセイを書く際には自分を最大限にアピールしなければなりません。そこで自分のアピールポイントが何か、と考え、それらをどうアピールしたらいいのだろう、と考えたところ、僕は圧倒的に物理・化学が得意であるのに、それを示す業績がないことに気づきました。数学オリンピックという数学の大会があるのは分かっていましたが、僕はそんなに数学は得意ではありません。物理オリンピックというものがアメリカであることも聞いていたのでネットで検索したのですが、あら不思議、日本は物理オリンピックにエントリーしていないそうでした!この事実に僕は愕然としましたが、同時に日本の教育というものの見直しが必要であることを再び切に感じました。次に短絡的な考えで化学オリンピックというものを検索したところ、どうやら昨年度から日本でも開催しているようでしたので、勢いでエントリーすることにしました。なんと驚き、その勢いエントリーによって日本国内で優秀賞というTOP5の賞を得ることができ、一つ僕の願書に泊がつくことになったのです。
他にも自分をアピールするために色々なことをしました。周りの人が驚くのが、僕が野依教授(ノーベル化学賞受賞者)の推薦状をもらった、ということです。実は野依教授は僕の母校、灘高校の卒業生です。また、野依教授は化学オリンピックの理事長といった役も担われていらっしゃったので、もしかしたら書いていただけるのでは、と考えたわけです。もちろん、僕が個人的な推薦状を書いていただいたわけではありません。野依教授には「灘高校の推薦状」を書いていただきました。というのも、灘高校にはできる生徒がたくさん集まっているので、灘で20番になるのと、地元の公立高校で20番になるのとではだいぶ意味が違ってきます。ですので、灘での自分の成績がどういう意味を持つのか、ということを、野依教授に書いていただくことで、自分の能力を正当に評価してもらおう、というのが僕の魂胆だったのです。当時名古屋大学にいらっしゃった野依教授にあつかましくもメールを送ってみたところ、親切にご返事を頂き、推薦状を書いていただくことができました。また他にも、僕は全国模試だとか、東大模試だとかの成績を大学に送ることで日本の中での自分の学力、というものもアピールしました。
こうやって自分のアピールポイントというのを探し、具体的に用意していく中で、目標を実行に移せる意思と実力を日ごろから養ってることの大切さを知りました。それらは日ごろから大きな理想を抱き、モチベーションをあげて生きていくことで得られるものです。ですから、高校生が「ビルゲイツを超える」といっていてもそれは決して夢物語でもなんでもなく、次世代のビルゲイツへの本当の第一歩なのだと思うのです。

今日もここまでよんでいただき、ありがとうございました!さっさとハーバードに入った時の話をしろよ、といわれそうですが、次は大学に入学するまでの僕のユニークな体験について書きたいと思います。

Keep it Real!
北川 拓也
灘中高卒、ハーバード大学数学・物理学科三年。患者学や医療コンビニのプロジェ
クトに興味を持ち、それらのお手伝いもさせていただいています。

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