医療ガバナンス学会 (2015年6月2日 06:00)
◇入ってからの印象、
慣れ親しんできたやり方を変えなければならないのですぐには出来ないと思いましたが、スタッフ全員が震災を乗り越え復興立て直しを目指している様に思いました。
患者さんのためにやらなくてはならないという思いは感じられましたが、若手の薬剤師が多く教育体制、経験も少ない状況で、業務分担が出来ておらず残業が多く、職員がとても疲れているように感じられました。薬剤部内は投薬窓口シャッターが閉まったままで暗い感じがしました。
そして調剤に必要な自動錠剤分包機も故障で動かず、分包機もかなり古いものを修理しながら使っていました。また手書きによる薬袋や処方箋入力業務を全員で行っている状況でした。
私が先ず行ったことは、薬剤師の意識改革、個人の目標設定、業務全般の見直しです。私も同じ調剤、注射業務を行いながら問題点を洗い出しました。そして業務の流れを変更し個々の目標設定を決めてもらいました。
◇院内処方、院外処方を患者さんがどちらでも選べる病院
常磐病院ならではの取り組みとしては院内処方も出来る病院です。
門前の調剤薬局が撤退し、病院から坂道を下った門前の薬局が1件しかなく、震災後、亀裂が入るなど歩道状況も悪化し調剤薬局に行くにも患者さんが不便をしていました。待ち時間もあり病院の駐車場を行ったり来たりしている状況でした。
私が来てから電子カルテや薬剤支援システムの導入により、患者さんが院内処方また院外処方どちらでも選べるようにしました。院内調剤は基本的に待ち時間ゼロを実現できています、そして院外処方とは違い、問い合わせ業務もスムーズにできるため患者さんをほとんど待たせることはなくなりました。高齢の患者さんや足の不自由な患者さんにとても喜んでもらいました、掛かりつけの薬局がある方はそのまま継続して院外処方を選べるように致しました。
患者様から、薬剤部や病院のスタッフに「とてもよかった」と感謝の言葉を頂きました。当院には調剤薬局経験者も勤務しており調剤薬局で行っているような服薬指導はもちろんお薬手帳のチェック、残薬確認を窓口で行っております。今後院内処方の薬歴の記入も行う予定です。
◇これからの活動などに関して
薬剤支援システムや最新の自動錠剤分包機、また県内ではほとんど導入されていない抗がん剤支援システムも新規導入、ピッキングサポートシステムの導入により調剤リスクや残業も激減しました。
近年、チーム医療の推進が叫ばれるようになり、薬剤師が医師、看護師、栄養士、理学療法士などと共にチーム医療の一員に位置づけられています。そうした動きに対応し当院でも電子カルテ化が完了し、患者さんの情報が共有できるようになり、チーム医療がさらに加速しています。今後、電子カルテを通して医薬品の併用禁忌の情報や副作用など薬剤師の立場から発言する機会が増え、患者さんとより密接に関わることになります。同時に薬剤師としても常に進化、成長が求められることになります。そのために必要な環境づくり、例えば専門知識の吸収については学会への参加など外部研修も含めてより一層充実を図る方針です。病院薬剤師はチーム医療の中で存在感を発揮するものだと思います。また最近多くなってきている薬剤に関する相談外来の「薬剤師外来」、を実現させたいと思います。
ときわ会の理念である「一山一家」に基づき、私たちときわ会の薬剤師が地域医療の充実のために貢献できることは、患者啓蒙活動を行ったり、勉強会を開催したりすることです。そして救急医療から在宅医療まですべてに薬剤師が対応できるよう教育活動に力を入れていきます。
◇いわき市の薬剤師不足
いわき市は震災後人口増加している地域ですが、医療従事者の人材確保が問題になっています。
当院でも外来患者の増加、病棟薬剤業務を充実させるため募集しましたが予定人数は集まりません。以前勤めていた首都圏の大きな病院には薬剤師は集まっている様です。福島県全体で慢性的な薬剤師不足が問題となっていますが、ときわ会としては積極的に大学を訪問し企業説明会を行っています。又いわき市内にある薬学部に講師を派遣したり病棟薬剤業務を指導して下さる先生を非常勤として来ていただいています。私が来てから長期実務実習を受け入れる様になり、当院の薬剤師には認定実務実習指導薬剤師の資格を取ってもらい指導の充実も行ってきました。
最近では最新の設備やときわ会の取り組みを見たいと見学者も増えてきました。見学も随時受け付けております。今後もいわき市の薬剤不足に対して、様々な活動を続けて行く予定です。