最新記事一覧

臨時 vol 228 「インフルエンザ簡易検査キットが早くも足りない」

医療ガバナンス学会 (2009年9月5日 08:32)


■ 関連タグ

「わだ内科クリニック」(東京都練馬区)
院長
和田眞紀夫
東京都内の平均的な住宅街にある当院の今日の診療状況をまずご紹介して、今現場で実感されるインフルエンザ簡易検査キットに関する問題点を列挙してみたい。
【今日の診療状況】
今日(2009年9月3日)は午前中に小学生5人にインフルエンザの簡易検査をおこなって、3人が陽性、2人が陰性という結果だった。みんな38℃以上の高熱が出ている状態で来院して検査を受けた。陰性だったうちの1人は同じクラスで12人が発熱で休んでいて、そのうち9人が既にインフルエンザA型の診断を受けている状態とのこと。5月の神戸での事例でもそうだったが、発症初日にキットで陽性にでるのはたかだか半数ぐらいなのだ。
午後にも38℃以上の熱が出たといって来院する患者さんが後を絶たない。昼過ぎに熱がで始めたとか、学校から下校してから熱がでてきたとか、比較的感染の早期に来院してくるケースが非常に多い。早い時期ではインフルエンザであってもキットで陽性にでにくい状況を踏まえて、アセトアミノフェンを処方して明日高熱が続いていたら検査しに来るように指示して帰宅させる。
【インフルエンザ簡易検査キットが早くも足りない】
今一番頭を抱えていることが、検査キットが注文しても入荷待ちの状態ですぐに入手できないことだ。そういう状況でもなければどんどん検査できるのに、それがままならないのが現状だ。そんなわけで「確実に1回」と考えて検査のタイミングを見計らっているのだが、検査を1日遅らせれば、抗インフルエンザ薬投与のタイミングも1日遅れている。後で脳炎にでもなるようなことがあれば、あと1日早く診断して薬を始めていれば・・・などと後悔するようなことにもなりかねない。キットが足りないからなどというつまらない理由で診断が遅れている現実がここにあることは大きな問題だ。
今何よりも必要なことは十分量のキットを生産・供給してもらうことだ。実はインフルエンザの患者さんが増えるとそれと同じかその数倍ぐらい「心配受診」の患者さんが増加して外来を賑わわせるのが通例なのだ。平熱でも検査をして欲しいと懇願するひともいる。そうでなければ出勤してはいけないと会社の上司に言われたなどとその理由を説明する。インフルエンザが否定できない患者さんでも早期の検査を切望して譲らないことが多い。そんなわけだからキットの必要数は予想インフルエンザ罹患者数の2~3倍に上るのが実情なのだ。つまり新型インフルエンザに1000万人から2500万人のひとが罹患するとすれば、3000万人から7500万人分のキットが必要になる計算になる。
【行政に至急おねがいしたいこと】
このようなことはすでに5月の時点である程度予想できたわけで、それに対する対策がとられてきてしかるべきだ。しかし、何らかのビジョンが示されたという話は聞こえてこない。「患者さんが増えてきたら検査せずに抗インフルエンザ薬を処方する」というのならばそれはそれで一つの選択肢ではあるが、社会全体の感染状況の実態がますますつかめなくなるばかりか、抗インフルエンザ薬を処方しなくてもいいような患者さんにまで大切な薬が過剰に処方されて、備蓄を消費し続けるかもしれない。少なくとも現時点で検査キットがどのくらい生産・流通されているかの調査を行って、せめて医療関係者にはその情報を明らかにすべきではなかろうか。必要があれば早急に増産を指示することも可能なはずだが、残念ながら現在始まっている第2波の新型インフルエンザ流行にはもう間に合いそうもない。
MRIC Global

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらのフォームに必要事項を記入して登録してください。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ